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私は私のここがすき 第1120話・2.28

「もうその話飽きた!」私はことあるたびにある事実を語たる友達がいい加減うざくなる。
 だからもう今日は友達と別れることにした。「いつも同じ話ばっかり!話すほうは飽きないのかしらね」私はそう思いながら家に向かって帰る。

「あれ?」ところが、おかしなことが起こった。いつも通りの帰り道、飽きるほど知っている道のはずだが、どうもいつもと雰囲気が違う。
「おかしいなあ」首をかしげながら私は交差点で立ち止った。それで風景を見る。見るがやはりいつもと同じ道だ。この交差点から見える建物はいつも見慣れているものばかり。「だよね」私はそう思うと、再び歩き出す。ところがだ歩き出すと違う。何かが違うのだ。

「なんで?でもこの道をまっすぐに歩けば家がある。うん」私は気にせず歩いた。歩いていくがだんだん違うところに向かっているような気がしてならない。「気のせい、気のせい」私はあえて風景を気にせずに歩く。「帰ってから何をしよう」とかそんなことを考えながら歩いて行った。

「あれ、あれれ?」だが気づいたとき私はやはりいつもと違う風景に戸惑う。「先ほどのように立ち止まれば」と、立ち止まった。立ち止まったが、その瞬間、鳥肌が全身を覆う。
 前の時はいつもの交差点なのに、今立ち止まったところは、見慣れない風景なのだ。「え、え、ええええ!」私は思わず大声が出そうなところをぎりぎりのところで抑える。

「今どこ、ねえ、どこ来ちゃったの」私は慌ててスマホを取り出した。位置確認だ。途中で違う道を歩いた可能性がある。「今はこれがあるから便利ね」こうして地図を見た。「うーん、おかしい、なんで」地図で見る限り確実に家に向かっている道だ。とはいえ普段歩いている道だからわざわざスマホで確認などしていない。だから筋を無意識で間違えた可能性もあった。
「さっき、わざと別のことばかり考えていたからかなあ」私は不思議な感覚のまま悩んだが、筋を間違えている気がしない。少なくとも家に向かっている方向から離れてはいないし、最短距離を歩いている。私は首をかしげながらそのまま家を目指せばよいと思った。

「やっぱり、この道をまっすぐ、うーん」私は再び歩き始めたが、どうしても納得できない。これまで同じ道を飽きるように歩いている。その道なのになんで今は雰囲気が違うのか?季節は関係がない。なぜならば昨日も一昨日も歩いている。それにここにはそんな季節を感じるような山も公園もない。

「あるのは無機質な集合住宅群、それはあるし。別に塗装も同じなのに...…でもなんで違うの?」私は首をかしげたが、考えても仕方がなかった。
 家には向かっているんだし、私があまり普段から景色のことなんか気にしていなかったからかもしれないのだ。

「逆にこの不思議に感じる風景を楽しんじゃえ」私の頭は基本的にプラス思考に動く。当初戸惑うようなこともしばらくすると順応する。こうして私は、普段気にしているこの風景を楽しみながら家に向かった。

「あと、5分かな」私はスマホをチェックしながら進んだ。不思議なものだいつもなら何も気にせずに家に向かっているのに今日は不安が頭をよぎる。それだけ違う風景にしか見えない。いったい何があったというのだ。「まさかこれって、並行世界とかパラレルワールドとかそういうのじゃないよね」
 私はついつい不安になったから自分自身に言い聞かせるように不思議なキーワードを口に出した。これは周りには誰もいないからできたこと。誰かに聞かれたら間違いなく「変人」とのレッテルが張られていたのやもしれない。

そんなことを言った後、またスマホを見た。「やっぱり間違っていない。次の筋を曲がれば、家に帰られる。もう余計なことを考えずに行こう」
 私は気持ちを切り替えて歩く。とにかく回りがどんな風景でも関係がない。歩いて次の角を曲がれば家があるはずだ。
「もし、もしも、家がなかったら」だけど今日の私はやけに臆病なのか、最悪のことが頭によぎりだした。それほどまでにいつもと違う風景なぜそう感じているのか私にはわからない。
「ただ前進あるのみ」いよいよ角を曲がる時が来た。いつもなら何気なく角を曲がりすぐに見える家について、そのまま家に入るだけ。そんな当たり前の毎日だったのに今日は違う。本当にそこに家があるのか不安で仕方がない。
「大丈夫、気にするな。曲がろう」そう言って私は思わず深呼吸すると交差点になっている角を曲がった。

「あ!」瞬時に私は再び全身から鳥肌のようなものが立つ。そこにあったのは自分の家である。それから周りの風景はここにきて全く違和感がない。いつも見る風景なのだ。
「まあ、家に帰られてよかった」いつものように家の玄関を開けて中に入る。もうこの時には先ほど感じたような妙な雰囲気の違いはなく、いつもと何ら変わらない。

 あれから一週間が経過した。何も変わっていない道を歩く。あの日だけ感じた違和感はいったい何だったのか?不思議な風景はあの時だけ感じたが、あれ以降全くなかった。「いったいなぜ?」結局わからないまま。ただ私は誰かにこの事実を話したい気がしたがやめることにする。多分誰も信じてもらえないだろうから。
 でもそれでいいと思う。そういう武勇伝のような自慢話をあえてしないところ。それが私にとっての私が好きなところだから。

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