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宇宙SF 第1152話・4.21

「さっきの声って、まさか?」私は古い街並みを歩いている。ここには私以外には誰もいない。建物だけがあって人の反応がないのだ。その理由は知っている。この星に住んでいた人たちは先月のちょうど今頃突然滅亡したからだ。

 私は宇宙調査員である。この宇宙域での星間同士の往来ができて数百年。W宇宙域と名付けられた宇宙域の中心に主星がある。主星を中心とした半径300光年がW宇宙域でひとつの連邦国家になっていた。主星が連邦政府で、W宇宙域にある1000近くの有人星を管理し、ある程度の自治を有しながら、さらに外宇宙との外交や防衛に関しては主星政府が担当する。

 私は主星政府が組織している宇宙調査員だ。本来の担当はW宇宙域の外宇宙での活動が主であった。外宇宙とのコンタクトや調査が目的である。だが2年ほど前からW宇宙域で怒っている数々の異変に対応するため、最近ではW宇宙域で異変があった星の調査を行っていた。

「本当に、この星は...…」異変の多くは天変地異のようなもので、急激に温度が上昇するとか、星の火山活動が活発化するといった事象である。もちろんその異変が起こった星では急速に人口が減少し、我が宇宙調査員はその原因を追究するために星に派遣され調査するのだ。
 異変が初めて確認してからのそれぞれの星の原因はまだはっきりはわからない。ただW宇宙域の主星から見て特定の方向で起こっていることがわかった。
 その方向の外宇宙域で何かが起こっているのか...…。現在はそのことについて調査している最中だ。どうも外宇宙域で最近確認された天体が影響しているような気がしている。だがまだ結論に至っていない。

 そんなさなかα星で何の前触れに起こったこの事件は、今までとはけた違いの状況として、W宇宙域全体の脅威となったのだ。

 1か月前まで普通に文明があり生活があった。このα星が昨年突然音信が途絶えてしまう。α星はW宇宙域で問題となっているエリアで、かつ主星からは半径で最も遠い位置にある星であった。この星の先は宇宙域境となっており、主星の所属する防衛艦隊が巡回しながら警戒に当たっている場所だ。

 直前まではだれも疑わなかった。確かにα星の近くで最近起こっている異変のことはα星は知っていたし、それなりに注視しながら警戒を続けている。常に主星と連絡を取りながら少しでも異変があれば報告するようになっていたし、常にいるわけではないが、W宇宙域の防衛艦隊は頻繁にα星の周りを巡回しており、少しでも異変があれば主星政府が把握できるようになっていた。

 この日も、直前までは普通に交信をしている。その時までは他の星と比べて異変らしいこともなく、α星は平和に暮らしていた。直前まで映像とともにテレビ会議のようなスタイルで世間話をしてるくらいだ。

 ところが突然、音信が途絶え、映像が消える。主星の担当は当初通信異常を疑った。だが実際に防衛艦隊を派遣して応答を確認しても応答が全くない。それだけではなかった。見た目は町に電気がついていて、人がいるように見える。乗り物も停車はしていたが普通に街にあったし、建物が破壊された形跡もない。だが誰もいない、いないのだ。

「こうして派遣された宇宙調査員が私なんだけど、不気味すぎる一体!」
 私は他の調査員と手分けして1か月前に何があったのかを調査する。ただ街には人もいないが、別に死体があるわけではない。まるで蒸発したかのように何もないのだ。

「突然異空間に転送されたのかなあ」私はそう思いながら上を見ると、巨大な月のような天体が見える。「あれはいったい!」私は鳥肌が立った。
 事前調査ではα星の近くにあのような天体が確認されていない。なのに見える天体はいったい何だ!「謎の天体を発見しました」
 この報告のあとだ、私は不思議な声を聞いた。嫌な音の性質ではないが、どうも上のほうから聞こえる謎の声、未確認だが上に浮いた謎の天体から発信されているような気がする。

 宇宙調査員の隊長から連絡が来た。「いったんこの星から離脱する」

ーーーーーー
 私たち宇宙調査員は全員、いったんα星から離脱。調査船に乗った私たちは謎の天体が見える方向を意図的に避けて反対側から脱出した。
「主星から連絡があり、α星の生命反応が消えた少し前の通信では、不思議な声が聞こえたようなやり取りがあることがわかりました」
 隊員のひとりがそう伝えてくる。「そういえば」私は先ほど調査中に聞こえた音のことを思い出した。因果関係はわからないがその謎の天体がα星の生命消滅の関係があるような気がしてならない。

「とりあえず、主星に戻る。ワープの準備を開始」
 こうして私たちは、ワープして主星に戻った。その直前、α星の後ろから巨大な天体が見える。「あれは私が見た天体」そしてそこから、乗船している調査船にも同じような声が聞こえた。不気味でも不快でもない音だが事が事だけに怖い。直後にワープして私たちは事なきを得たが、あのままあの音を聞き続けていただどうなっていたのだろう。私は考えただけでも鳥肌が立つのだった。


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