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この経験に学べ 第1093話・1.30

「寒いなあ」もう一度のベッドの中にうずくまる。だけど心の中では起きないといけないというプレッシャーがあった。「起きよう!起きるんだ!」と心の中で気合を入れてようやく起き上がれる。だがそこでさらに葛藤に襲われてしまい、多くは断念してしまう。冬の寒さは本当に苦手なのだ。確実に夏の方が起きやすいだろう。

だが、これは朝の話ではない夜中の話...…。

「我慢できるかな」この日も夜中に突然トイレに行きたくなって目が覚めた。夏場であれば汗で流れるのに対して冬は汗をかかない。その分トイレで用を足す機会がどうしても増える。
夏なら一度も起きないのに冬なら最低1回は目が覚める。だけど起きるたびに躊躇してしまう。それは寒いからだ。

 眠るときは暖房をすべて切っているのも大きいかもしれない。だが昨年は冬暖房をつけたまま眠った。確かに起きやすいが、その結果と電気料金が跳ね上がってニッチモサッチモいかなかった。
「今年は極力暖房をつけるのを抑止しよう」そんな気持ちもあり、今年は暖房を極力抑えている。夜であれば布団が自らの体温で温まるのだから、暖房の力など必要はないと考えた。

 当初は布団の冷たさが体を刺激する。特に足の先を布団の先につける時がつらい。冷たいので一度には伸ばせず。ゆっくりと体温で布団が暖められてから少しずつ先を伸ばす。最も先端にまで足を延ばせたときにはそれなりに達成感があるが、直後に襲う冷たさはつらい。それでも耐えれば体温が自然と布団の温度を上げてくれるのだ。

 だが、トイレに行くときはそういうわけにはいかない。よほど我慢が出来ないほどの状況ならそんなことは言ってられないのだろう。だが少ししたい感じ的なときで目覚めると迷ってしまう。このような要因には、今住んでいる家にも問題があるのかもしれない。戸建て住宅に住んでいるため、寝室とトイレのフロアが違う。つまりトイレに行くためには、階段を降りる必要があるのだ。

「無理だ」そう思って布団から出られない。そういえばこの日の夜中の気温は氷点下まで下がるようなことを予報で言っていた。この時間ならもう氷点下なのだろう。雨風がしのげる建物の中にいるとはいえ、暖房がついていない部屋はとにかく寒い。

 気が付いたら眠っていたようだ。何か夢を見ているがあいまいな夢で、そのほとんどが記憶に残らない。残らないがやはりというか用を足していないから、このような苦しむような夢を見る。どんな夢が多いかと言えば、風呂に入っている夢あるいは、トイレに行く夢だ。特にトイレの場合は用を足しているがいくら足しても終わらない。子供ならおねしょをする設定だろう。
勿論大人だからそれはない。だけどとにかく夢にイラついたら目が覚めた。
「だめだ、行こう」

 さすがに我慢が出来ないレベルにまで来たようである。布団をあけて外に出た。寒さもあるが、それ以上に膀胱のあたりに多いなる違和感がある。そのために体がぎこちない。先ほどの「少ししたい」レベルなら、体に襲う寒気を極端に嫌って避けていた。だがすでに限界にきているから、そのことが気にならない。むしろこの体の中にたまっているものを排出せんとばかりにトイレに急いだ。

 どうにか布団から出て立ち上がる。ゆっくりと歩く。すでに膀胱付近が臨界点に達しており、脚を動かすとその部分が大いに反応している。「我慢しすぎたよ」と思いながらトイレに向かう。このとき階段を降りるときがとくに慎重になる。

 足を階段の下に向けて伸ばすと、足の動かし方ひとつで膀胱付近が激しく反応。するとどうしても足の動きがぎこちない。かえって余計な時間をかけてしまう。容赦なく寒さが襲ってくるが体が震える。震えるがその状況になると、もう今にも出そうな状況。「待ってくれ!」それを耐えながらトイレに向かう。もはや寒さは全く感じていない。目の前の危機に対応するので精一杯。などとやりながらようやくトイレに駆け込んだ。

「ふう、すっきりした」誰もいないから頭の中でのつぶやき。用を足し終えると先ほどの焦りは完全になくなった。だが直後に襲ってきたのは寒さだ。体を震わせながら、先ほど降りた階段を寝室に向かって上がっていく。

無事に布団に戻り再び冷たくなっているからそれを耐えながら体温で温める。こうして無事に布団に入ると常に「こんなこと繰り返したら、そのうち膀胱が」と思ってしまう。とはいえ、現時点ではこれが原因で病気にはなっていない。だけどトイレに駆け込む際に必死になる我慢。それから夢の中にまで出てくる苦しみ。最初の段階で用を足せばこれらの事に頭を煩わせることは無いだろう。

そんな経験を学んでいるはずなのにできない。これが春以降なら絶対に起こりえない寒い時期の経験。果たしていつになったら学べるのだろう。布団に入って眠るともう忘れてしまうのだから。


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