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Space illumination 第695話・12.18

「おい、これなかなかレアな画像じゃないか」「だろう。これオークションに出したら高く売れるかなあ」男Aは、友達の男Bに得意げな表情でひとつの画像を見せる。
「これはいけるよ。今じゃ考えられない世界だ。何で地面とイルミの光がついているんだ?」驚くBにAは得意げな表情。
「これ我が家に代々のこる宝物蔵にあったんだ。当時の媒体だからどうかなと思ったけど、いやあどうにか再現できたよ。それですぐにコピーした」

「そうか、Aの家は古くからの名家だからな」「まあご先祖はともかく俺はごく普通さ」「ねえ、ふたりで仲良く何見ているの?」と間に入ってきたのは、ふたりの共通の友達女C。「おう、Cかお前じゃあこの価値わからんだろ」ぶっきらぼうに言うBの横で、AはCに画像を見せる。
「うゎ!これって、マジ、すごーい」CもAの画像を見て驚きの声を上げる。「先生から聞いたことはあったけど、本当にあったのね。地面とくっついているイルネーションなんて」
「これってどのくらい前だろう」「多分、相当古いと思うわ。遥か昔まだ私たちの先祖が、母なる聖地・地球という小さな星にしか住んでいなかった頃かな」
「C、お前やけに詳しいな」「Bそうよ。こう見えても私、今歴史の勉強しているから。私の見立てでは、AD21世紀だと思うな」「AD21世紀か、よくこんな原始的な画像残っていたものだ」最初に持ってきたAは得意げな表情。

「ねえ、これから今のイルミ見に行かない?」「おう、そうだな。C行こうか」「うん、俺も行くぞ」Bに続いてAも同意。「えっ、Aもついてくるの?珍しい」
「B、あたりまえだよ。今まで大昔のイルミ見たんだ。そりゃ今のと見比べたくなったよ」


 人類が地球にしか住んでいなかった時代から遥か未来。宇宙空間を完全に掌握した未来の人類は、1千万光年の移動も、たった数時間もあれば移動が可能な時代になっていた。
 そして地球型の惑星を多数開拓したにとどまらず、宇宙空間に自由に人工惑星を建築。それぞれのところに人が住むようになり、自由に往来できた。個人所有の宇宙船ですら時速100万光年は出るほどである。

A、B、Cは、そんな宇宙空間の小さな人工惑星。ひとつの惑星に200人程度が生活している集合住宅型惑星の幼馴染。隣の人工惑星の集合住宅までも個人所有の乗り物で簡単に行ける。
 ただ外の宇宙空間に出るときは、この時代といえども生身では出られない。宇宙服は必須だ。それでも軽くて便利。いったん着用すれば、1か月間宇宙空間で過ごせる優れものだ。そして服についているあるスイッチをオフにしない限り、無重力であることを意識する必要はない。

「でもどこのイルミネーションに行こうか?センターイルミは大きいけど、あそこ有料だからなあ」Bはそういいながら腕時計型をしているものをチェック。ここで現在所有しているお金の残高を確認した。
「センターじゃなくて、実は、37区に新しくできた無料のとこにいこうよ」「そうか、37区にできたんだね。便利になったなあ」Aは得意げに見せていた大昔のイルミネーションの画像を自分の宇宙服の懐に閉まった。

「よし、行こうか。ここから100光年先か、すぐだな」こうして3人は各々が所有しているミニ宇宙船に乗り、集合住宅の人工惑星から37区と名付けられた場所に向かう。

 100光年と言ってもこの時代では隣町のようなもの。37区という集合住宅の人工惑星が密集している地区である。
「おう、あそこだ」先頭を進むBがいち早く到着。
「人工惑星に囲まれた広場に新しく誕生したのか」「見てあの宇宙船の量、今日は一杯ね」

 こうして3人はひときわ大きく見える人工惑星の駐船場に、宇宙船を止めた。バルーンのような人工惑星の中を100メートルほど進むと、突然開けた球体の空間。先までの直径が100キロくらいはあろうかという空間には、無重力を利用して、大商様々なイルミネーションが光り輝くように浮かんでいた。基本的にバルーンは透明の強化ガラスを使用しており、外の宇宙空間が見える。そして枠のようなものが蜂の巣のような形に張り巡らされていた。実はそれは建物で、3人が入ってきた出入り口や管理センターなどがそれぞれ内部のエレベータで結ばれているのだ。

「さて見に行きましょ」女のCがさっそく宇宙服のあるスイッチをオフにする。そうすると途端に無重力。自由に体を動かすことが楽しめる。そして別のスイッチで、ミニジェットが噴き出すので、遠距離への移動はいたって簡単なのだ。
「俺も行こう!」「B待てよ」こうして男ふたりもCに続いてスイッチをオフにした。
 こうして3人はしばらくスペースイルミネーションを宇宙遊泳をしながら楽しんだ。


「おい、Bよ!」しばらくしてAが、見つけたBに話しかける。「どうしたA? お前Cには手を出すなよ」「そうじゃない。さっきの話。空間イルミはともかく、なんであの画像のイルミネーションは、冬の時期しかなかったのかなって」

「そりゃあお前、エネルギーが足りなかったんじゃないか。当時のエネルギーは太陽くらいしかなかったんだろう」「でも、CはAD21世紀って言っていた。その時代なら電気はもちろん、LED技術もあったはずなんだが」
「もう知らねえよ、そんな原始時代のことなんか」呆れたBはAを置いて遠くに向かってしまう。

 残されたAは、昔のイルミネーションが冬の特定の時期しかなかった疑問に、しばらく頭を悩ませるのだった。

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