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眠れない夜に 第1128話・3.12

「あ、もう、こんな時間だ」私は時計を見た。まもなく日付を超えようとしている。明日は朝早くからの予定があったので、早朝5時に起きなければならない。だけどそれを強く意識しているからだろう。いつもより早く床に入ったのに、こういう日に限って眠れないのだ。

「だめだ、寝ようと思うと眠れない!」私は目を開けて部屋を眺める。特に何も変化がない。もう一度目をつぶる。最初も同じように目をつぶって眠ろうと努力したが、かえって力んでしまい眠れない。脳裏には明日早起きしてからの予定が頭をよぎるが、それ以前に早朝に起きられるかどうかが不安というのもある。「かといって、朝まで起きているわけにも」そう思ったが、どうしても眠れない。眠れないのだ。

 私は心の中で呟いてみた。「羊が」と羊の数を数えるの。
「羊なんて嘘だ!」私は伝統的な眠れる方法とやらをとりあえず試してみたが、そのの2,3分で挫折した。羊の数を数えたところで眠れるような単調なものではない。途中からやはり明日のことが頭に入り込んでしまう。忘れようとしても忘れられない。意識して忘れようとしたら、かえって明日のことが頭の中に入ってきてしまうのだ。

「全く違うことをしたほうがよさそうだ」ここで私はあきらめて目を開けた。そしてベッドからゆっくりと起き上がる。
「困ったなあ。とりあえず空でも見ようかな」私は空を見るために立ち上がった。ベッドのある部屋にはテラスがついている。私は窓を開けてテラスに出た。

 テラスに出たとほぼ同時に風が私の体にぶつかってくる。昼間はずいぶんと温かくなったが、今は深夜だ。寒い風が私の体を刺激しているためか、全身が震える。「寒い!」思わず口ずさんだ。

「あ、キレイ」私はそのあと視線に入り込んだ夜空を見た。ちょうど雲がほとんどない夜の空、月は少し地上近くに見える。近くのビルに隠れるようになっていた。もっと夜空の高いほうを見るとわずかながら星が見える。すぐにでもわかる大きく手はっきりと光る星が浮かんでいた。そんな星の中の暗闇をじっくりと眺めていると、小さな星が視線に入り込む。それを目に焼き付けようと、さらに追いかけるとまるで夜空に吸い込まれるような錯覚に陥った。そうなるとさらに小さな星から小さな何か、たぶん星だと思うけどそれがうっすらと見えるから不思議だ。

「さむい、上着ないかな」私はもうしばらく星を見たいと思ったので、いったん部屋に戻り上着を羽織った。もう一度テラスに入り星を見る。「これって新鮮、いつも起きていない時間だし」私は深夜の夜空が新鮮に感じた。空の星空のにぎやかさとは対照的に、地上ではほとんどの建物が照明を消している。ごく一部電気がついているところはあったが、それは外灯なのかもしれない。

 車も走らない夜の道路は静かであった。いつも見ている目の前の道なのに本当に別世界のよう。もちろん人も歩いていないし何もない。本当にゴーストタウンだ。
 そんな新鮮な風景をしばらく見ている。新鮮だから飽きない。いったいどのくらい見ていたのだろうか、突然私に睡魔が襲った。「ファアアアア!」眠くなったようだ。「よし眠れるかも」そう思った私はテラスを後にした。そうしてベッドに戻る。目を閉じてみた。しばらくは意識があるが、先ほどと違いリラックスできている。こうして気が付いたら眠っていたのか記憶がなくなっていた。


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