休日のすごし方 第1132話・3.18
「次の休み動物園に行こう」そう考えていたから、この休日は動物園に向かっている。動物園にせよ水族館にせよ、動くものを見るのが好きだ。
水族館でなくて動物園を選んだのは特に理由はないが、今日はどうしても動物園に行きたかったようで、気持ちの上ではもうそういうモードになっている。
だけど植物園はあまり興味がわかない。それは動かないから。
こうして動物園に向かって移動している。今は電車の中だ。ところが電車のつり革広告を何気なく見ていると突然気が変わった。
「こっちに行こうかな」それは植物園の案内だが、どうも魅力的な内容に映ったのだ。
「どうしようかな？」迷いだした。行こうとしている動物園とつり革広告の植物園は乗っている電車と同じ方向にある。降りる駅も同じであった。そこからバスで移動するときの行き先が違うのだ。
「こういう時は、駅についてからの直感だ」そう思った。いっそのこと両方行けばという気もするが、それはあまりにも無謀だ。もし、もっと早くそのことに気づいていたら早朝に起きて、開園時間と同時に行けば可能だったかもしれない。だがまもなくお昼の12時を迎えようとしていて、おそらく到着すれば午後になる。それからであれば、どちらか片方しか回れないことはほぼ確実だ。
椅子の先に見える車窓を見ながら呆然と過ごす。考えても無駄だから駅に到着してから迷うことにした。
こうして電車は降りる駅の前の駅に到着したようだ。乗っている電車は急行電車で、この駅から降りる駅までは10分くらいだろう。途中いくつかの駅を通過する。
「降りてから迷うと時間の無駄かな」と、思ったのでここからどちらかにするか考えてみた。もう一度つり革の広告を見る。やっぱり見ると魅力的なものだ。今まで植物園にこんなに興味を持ったことがないのに、なんでこんなにもいちど行ってみようかと思えるのだろう。
ふと広告を作った業者がすごいと思った。だけどすぐに動物園のほうにも興味を持ってしまう。ひとつは植物園に行って後悔しそうな気がした。ただ広告が素晴らしいから騙されているのではないかと。
もちろん植物が生きていることも、長い時間をかけて成長をしていることも知っている。だけどすごい長い時間をかけてのことだから見た目は動いているようには見えない。行って結局「動かないや」と後悔するのは嫌だ。
それに動物園については数日前から行きたいと願っていた場所である。動物園の動物はピュアな生き物だ。人間のような打算もないから、見ていて気持ちが良い。
声に出して鳴くことがあり、それは何らかのコミュニケーションを現しているのだろう。だけどそれは何のことか見てるほうはわからない。ただ本能に任せて動く動物の可愛くもコミカルにも感じる動き。見ているだけで癒されるのだ。
「やっぱり動物園かな」などと思っていたら一駅通過した。確実に降りるべき駅に近づいている。
「うーん、けど」広告が気になった。どうやら期間限定のイベントのようだ。ということは今回植物園に行かないと、イベント期間中を逃す恐れがある。それはもったいない気がしてきた。
「ああああ、どうしよう」思わず声に出したくなるほど迷いだす。周りにほかの乗客が多くいて、立っている人もいるのに、ここで声を出したら変人と思われる。だから絶対に声は出せない。
と思ったらまた駅を通過した。「もしかしてあれが最後の駅」人影から移る風景を見てそう思ったが、それは間違いなかったようだ。降りる駅が近づいている旨のアナウンスが入ったかと思えば、電車の速度が下がっていく。もう駅に着くようだ。
「うあ、決められなかった」結局どっちに行くか決められないまま電車は駅に到着しようとする。この駅は動物園や植物園のほか、駅と直結したところに巨大なショッピングセンターがあった。だから降りる人が多い。一斉にドアに人が集まった。それまで座っていた人も立ち上がる。
こうして電車はほぼ停止したかと思うと、みんなが殺到していたドアが開いた。「降りないと」そう思ってその人たちの後に続く。
「で、どうしようかなあ」駅に降りて改札を出た。さてバス乗り場に向かったが決められない。「どうしよう」最初からの予定通り、動物園に行くか、それとも移動中に見つけた魅力的なイベントがある植物園に行くか...…。
ここで目をつぶる。5秒ほど無心になった。そして目を開ける。その直後に働いた直感で行き先を決めた。迷ったけどこれが運命、もう後悔しないと思いつつ。
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