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日々掌編短編小説(そよかぜの千夜一夜物語)

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2020年1月1日から、ほぼ毎日掌編小説を執筆中。東南アジア小説をはじめ、興味のあるあらゆるジャンルをネタにして作品を発表しています。ちなみにこちらには「書き下ろし」としてしばら… もっと読む
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2022年6月の記事一覧

映画に誘われ 第888話・6.30

「来た来た、もう待ったわ。ちょっと遅かったわね」私は時計を見た。確かに遅刻している。「ご…

うどん調査の後からの帰り方 第887話・6.29

「ちと飲みすぎたかな。う、頭が痛い」昨夜立ち飲み屋で長居して飲み続けていた豊島は、頭を抱…

路面電車と路線バス 第886話・6.28

「お、バスが通過していったかぁ」貞明はおもわずため息をつく。貞明はある町の路面電車の運転…

トサカ男の憂鬱 第885話・6.27

「よし、先頭に並べたようだ」こう頭の中でつぶやいた男の髪は、髪のほとんどを刈り上げておき…

露天風呂でのひとコマ 第884話・6.26

「いやあ、いい湯だなあ、本当に良い湯加減」「ふん、そんなのんきなことを言って良いのか!」…

閉店後の美容院 第883話・6.25

「あ、あのう店長」「熊谷君、どうしたの?」ここは町の美容院、男性美容師の熊谷は、女性店長…

名家の娘 第882話・6.24

「うむ、間違いない。流石は我が一族の娘である」娘の父親は威厳のある声でそこまで言い切ると、笑顔になる。そのあと父親は軽く咳ばらいをすると、この家の歴史について延々と語り始めた。  要約すれば父親は代々伝わる古い商家である。蔵に残されている記録によれば、室町時代、足利義満の時代にさかのぼるのだという。だがその後迎えた戦国時代は戦続きで商売どころではなかったようだが、それでも細々と商いを行い、豊臣秀吉の家臣に献上品を出したこともある。そのあと江戸時代を迎えた。  江戸時代になっ

桃の郷の文化財 第881話・6.23

「さて、3ヶ月ぶりの故郷だな」市雄は、岡山駅に到着した。彼は岡山特産の桃を使った加工品桃…

青春 第880話・6.22

「ねえ、拓海くん、このままずっと一緒にいてね」高校生の今治美羽は、同じ年の幼馴染で交際し…

七夕 第879話・6.21

「多分見えるかな」私、真理恵は郊外でコスモスファームという農家を飛んでいる。彼一郎は大学…

夏祭り 第878話・6.20

「あ、本当に珍しいこともあるわね」独り言を呟いた伊豆萌。それを優しそうな瞳で近づいてきた…

呑みながらの方が筆が進む? 第877話・6.19

「下北半島はいいよ。あんた行ったことがないの?」という部屋からの大声。祖父、茂の部屋に、…

すぐに急いで移動って 第876話・6.18

「所長、鳥取砂丘に無事行き、調査が終わりました。帰りの移動中にレポートも出来ましたので、…

砂丘に連れてもらって 第875話・6.17

「はい、和菓子買ってきたわ。ここの大好きでしょう」私は鳥取駅で待ち合わせた夫にお土産を渡すと、夫は満面の笑みを浮かべ。「おう、ありがとう」と一言。 「鳥取ってこういうところなんだ」夫が単身赴任で鳥取勤務となって半年が経つ。私は同行するか迷ったが、小学生の子供が今の学校でなじんでいる。   それに鳥取勤務は長くても1年と聞いているから、私はとどまることを決めた。こうして半年ぶりに夫に会いに単身鳥取に。今回は2泊3日の予定だ。平日で学校があるからと、子供は置いてきた。代わりに