『綾ちゃんはナイショの妖精さん』とはこんな話 小説のワンシーンを切り取りました 1巻その2
少女漫画『綾ちゃんはナイショの妖精さん』は投稿小説サイト「エブリスタ」で公開中の長編小説を作者が自力でコミカライズしたものです。
元の小説版のタイトルは『ナイショの妖精さん』。本編9巻と短編集1巻の10巻分ありますが、その小説のワンシーンを切り取ってご紹介したいと思います。
漫画派の方にはネタバレになります。ご注意ください!
★ ゴーヤぷすぷす 86ページ ★
ヨウちゃんの横にリンちゃんが寄っていって、猫みたいに人懐っこい目で、ヨウちゃんを見あげてる。
ヨウちゃんもまんざらじゃなさそう。リンちゃんのぶんの空いた食器まで、トレイの上から取り上げて。食器入れのかごに、かたしてあげてる。
なにあれ? 紳士気取り?
あたしは、箸で、ゴーヤをぷすぷす。
★ しぴぴぴぴ 92ページ ★
「あ……綾~っ!! 」
ヨウちゃんのほっぺた、真っ赤っ赤。
で、そのかっこう見て、あたしは「あはははは」って大笑い。
だってこの人、うちのクラスのボス。女子たちにキャーキャー言われてる、モテモテくん。
それが……それが……。
農家のおじさんみたいな、麦わら帽子をかぶって。黒いゴム長ぐつをはいて。軍手にホースを持っちゃって。
ホースの先から、水がしぴぴぴぴ。
★ 葉児 笑み 94ページ ★
あわてて追いかけたら、ヨウちゃんは、開いたドアを背中でおさえて待っていた。
「入れよ。リコーダーの特訓終わったら、かあさんのハーブティー、ごちそうしてやるから」
ふんわりやわらかい琥珀色の瞳。
★ びー 100ページ ★
音楽のテスト本番。
五線譜の引かれた音楽室の黒板の前に立って。リコーダーを両手ににぎりしめたら、教室のみんなが見わたせた。
教室の一番後ろの席の、ヨウちゃんと目が合った。
う~ん、無反応。しらっと冷めた目で、腕を組んでる。
ヨウちゃんが、こくんとうなずいた。
……あ。
が、がんばるっ!
リコーダーに口をつけたら、でっかい音が「ビーっ!」
★ アリッサム 107ページ ★
「おまえ、花係だったよな。花、四等分にして、教室の四方に置け」
さっくり。冷めた声。
「……へ?」
「アリッサムには、妖精の魔力を解除する力がある。これをつかえば、あいつらも正気にもどるだろ」
……だよね。
こんな冷血オトコに「恋する音楽」なんて効くわけないよね。
あたしが花束を受け取ると、ヨウちゃんはもう背中を向けて、教室に歩き出していた。
「あ……。ま、待ってっ! あ、あのっ! ヨウちゃん、ありがとうっ!! 」
花束をにぎりしめて、あたしは植え込みの陰から立ちあがった。
「きのう、ヨウちゃんが笛を教えてくれたおかげで、あたし、テストで最後までまちがえないで吹けたっ! 一発オッケーもらったの、はじめてなのっ!! 」
今回はここまで。
コミカライズ版は↓からどうぞ。
漫画の試し読みページも作りました。