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Vol.5 リハビリってどうコントロールしていくべき?~イングランドプレミアリーグのチームの事例を元に~

みなさんは、怪我をしてしまった選手を復帰をさせていく過程で何を基準してリハビリの段階を進めていきますか?

怪我の種類によって、復帰のさせ方や負荷のかけ方は変わると思いますが、プレミアリーグのチーム(おそらくエヴァートン)が実際に行っているGPS Dataを一つの指標にして(もちろん他の項目もチェックしていますが)選手を管理しながら復帰にもっていく過程をまとめた論文があったので紹介します!

再受傷のリスクを抑えながら、どのようにボリュームを上げていくのか参考になったので興味のある方は読んでみてください。

この論文の面白かったところは、運動量だけでなく、サッカーでいう複雑性のある動きをどういう段階で組み込んでいくかをまとめているところでした
(当たり前かもしれないですが、はじめはリアクションの少ないもの⇒徐々にサッカーの動きに近く認知判断が必要なものみたいな)
あとは、実際におこなっていることを動画で紹介しているところです。

下記から本文です!

Progressing rehabilitation after injury: consider the ‘control-chaos continuum’

怪我後のリハビリーテーションを進める:「コントロールとカオスの連続性」を考える

Progressing rehabilitation after injury: consider the ‘control-chaos continuum’


緒言

負傷後、早期にトレーニングや試合に復帰することは再受傷(Re-injury)のリスクを高める。
しかし、主力の選手が出場できることは、チームにとってプラスな材料になる

リハビリ担当者は、Return to Sports(RTS)の過程において、上記2つの要素のバランスをとりつつ、エビデンスと臨床経験を組み合わせて傷害のリスクを推定し、それに基づいてRTSを計画し、適応をさせていかなければならない。

トレーニング負荷を定量化しモニタリングすることは、Re-Injuryのリスクを管理しながらリハビリテーションを進めていくうえで重要である。
また、それらを行う上でGPSは、ランニングの外部負荷を測定する有効な手段となります。

しかし、リハビリ担当者は、ランニング負荷の量的なコントロールだけでなく、競技における動きの質的な特性の両方に注意しなければならない。
これには、スポーツの予測不可能な性質を反映した、非常に変化しやすく突発的で予測不可能な動き(the conditions of ‘chaos’)が含まれます。

この論文では、GPSの変数を相互にリンクさせながら、より大きな知覚と反応性の神経認知的課題を徐々に組み込んでいく「Control-chaos continuum(コントール-カオス連続体)」(CCC)を提示する(図1)
このフレームワークは、高いコントロールから高いカオスへと移行するものであり、イングランドプレミアリーグのサッカーという厳しい環境における10年以上のリハビリテーションとRTSの経験に基づいている。

THE CONTROL-CHAOS CONTINUUM コントロールとカオスの連続性

選手のGPSでのChronic Running Loadと、組織の推定修復時間を用いて、5段階のフレームワークを提案する。

ここでは、ハムストリングスを損傷したセントラルディフェンダーを例に挙げる。Chronic Load(慢性負荷)の経過をサンプルとし、6週間のリハビリ後のトレーニング復帰を推定したものです。(図2)

このモデルは、もっと期間の短いフェーズや長いフェーズを使用する短期的もしくは長期的な怪我にも適用できる-これはプログレッションの基準に基づくものであり、時間に依存するものではない。

また、フェーズ進行の決定に情報を提供するために、GPSデータに付随して使用する筋力やパワーの測定の例も紹介する(表1)

High control 高いコントロール性

目的:ランニングスピード/負荷を高いレベルでコントロールし、筋骨格系への衝撃力を低く抑え、選手の自信を高める。(図1&図3)

まず、傷害(例えば、ハムストリングスの傷害の場合はスピードの進行、鼠径部の傷害の場合にはパスの量)と、個人(例えば、ポジションやプレースタイル)に応じて、Re-Injuryの潜在的なリスクファクター(表1)を考慮する必要がある。

ランニング開始初期の目標は、低速でのランニング量を徐々に増やし、High Speed Running(HSR)の暴露(Max Speedの60%未満)と筋骨格系への負担の2つを制限することである(補足動画1

低速での直線的なランニングは、高い加減速の大きさも最小限に抑える(図1)
また、スポーツに特化したタスク(つまりボールを使ったタスク)は、動きのばらつきを抑えるために最小限に抑え、ワークとレスト比率を操作することで、適切なエネルギーシステムのdevelopmentを可能にする。(図1)

Moderate control 適度なコントロール

目的:ボールを使ってのChange of Direction(COD)の導入、コントロールの軽減(ややコントロールされたカオス)、HSR Loadの増加(表2)

CODの強度と量によって加減速の要求が決まるように、CODを漸進的に統合し、コントロールを徐々に減らしていく。
この目標は、課題制約の程度を減らすこと、Explosive Distance(加減速をしながらカバーする距離、2~4m/s/s)を受傷前の選手のトレーニングデータと比較して漸増させることである。

直線的なHSR(60-70%MS)を増やし、ボールのある時と無いときのCOD活動を増やしていき、動きの多様性を高めていく(補足動画2)。
これらの相対的な割合は、選手と傷害の特性によってきまる。


Control to chaos カオスへのコントロール
目的:サッカーに特化した週間構成(図4)を導入し、コントロールからカオスへの移行(予期せぬアクションを伴う限られた量の動きを含む)を反映したゲーム特有の要求を過負荷にする。

私たちのフレームワークでは、Fitness Developmentにはサッカーに特化した焦点をもち、技術的な側面を取り入れ、コントロールからカオスのレベルアップへと移行する。

トレーニングの特異性を高めるために、「インテンシブ(集中的)」と「エクステンシブ(広範囲)」なサッカーを用いて、ゲームの構成要素に過負荷をかけるように1週間を構成する。

インテンシブフットボールでは、制限されたエリアでの加速、減速、CODの要素を通じて、筋骨格系と特定のエネルギーシステムに過負荷をかける(補足動画3)9。

ドリルには、より反応的なパスや動き(補足動画4)、爆発的な動きを再現するための漸進的でポジションに特化した加減速が含まれる(補足動画5)。

エクステンシブ・フットボールは、典型的な試合での要求を反映したもので、より広いエリアを使い、より速いスピードと距離を生み出す。

ドリルプリシペーション(処方箋)では、必要なエネルギーシステムをターゲットにするため、有酸素性パワーインターバル走を使い、より速いスピード(65%~80%MS)でのランニングを徐々に取り入れていく(補足動画6)。
※HIITのショートインターバルなイメージですかね。


Moderate Chaos 適度な混乱

目的:パス&ムーブと特定のプレーパターンのドリルを加え、中程度のカオス(予測不可能な動き、最小限の制限)の下でHSRを向上させる。

この段階では、コントロールとカオスの両方の条件下でHSRの負荷がさらに増加する。

セッションは、微妙な方向転換(補足動画7)を含むHSR(75%MS以上)をターゲットとし、選手の相対的な試合要求に基づいてスプリント距離を段階的に増加させ、「スパイク」(負荷の大きな/急激な増加)を最小限に抑える。

さらに、テクニカルスキルの進歩に対応するために、プレーパターンのドリルに加えて、特異性を高めたパスとムーブのドリルを取り入れています(補足動画8)。

1週間の総走行距離は、正常時のトレーニングレベルに達しているはずです(図2)。

High Chaos 高いカオス
目的:プレーヤーを週ごとの相対的なトレーニング要求に戻し(図2)、Worst-Case Scenarios(最悪のシナリオ)(ハイスピード/ハイカオス)をテストするためのドリルを含める。

技術的な考慮事項:パス/クロス/シュート;ジャンプ/ヘディング/タックル;静止/移動/状況に応じて、短距離/中距離/長距離からの強度を段階的に評価する。テクニカルアクションの量は徐々に増やし、選手や怪我に応じたものとする。

最終段階では、ポジションに特化したコンディショニングを重視し、受傷前の週間トレーニング量と比較した試合強度を反映させる。

ポジションに特化したスピード/スピード持久力ドリル(補足動画9補足動画10)は、パスのスピード/方向がプレーヤーの動きの速さを左右する試合での活動に備える。

問題となっている傷害に特有の技術的な検討事項(例えば、鼠径部の傷害に対するボール打撃の活動)は、筋力とパワーの診断と並んで、トレーニング復帰の最終的な基準の一部となる(表1)。

Conclusion 結論
エリート環境(ハイパフォーマンススポーツ)では、RTSは選手とチームにとっての利益とリスクのバランスをとるダイナミックなプロセスである。
CCCはハイコントロールからハイカオスへと移行し、徐々にリスクの高い条件下でランニング負荷を処方する。
この連続体は、科学的根拠と長年の経験が融合したものである。
このフレームワークは、量的および質的な進行基準を統合した、RTSに対する個別のアプローチを実践者に提供するものである。








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