「相手の視点に立つ」一緒に考えてみませんか?
手話通訳の派遣事務所には、このようなFAXが日常的に届きます。主に70〜80代のろう者です。彼らは日本語が不得手なだけで、自分で考えて自分で行動できる手話話者です。
今回は手話通訳の私が、他言語話者(ろう者)からの日本語のFAXを読み解く中で「相手の視点に立つ」をどのように実践しているかをお伝えします。
彼らは不得手ながら日本語話者の私たちに分かるように送ってくれています。その思いを汲むところから、仕事が始まります。
難しいですが手話技術は要りません。皆さんもよろしければチャレンジしてみてください。
読み解く
日本語を文字でなく記号のように捉え、見真似や記憶を手繰って書かれています。私たちが読み取ってくれると信じてくれているので、細かいところも見逃さないようにします。
まずは書いてあることを整理して、推測します。
宛名が自分の名前
→自分宛てFAXを参考に書いているのだろう、差出人の意味黒岩(通訳)の矢印は郵便局のみ
→通訳は郵便局だけで必要で、銀行は自分の予定だろう
⇒ 9月19日10時30分郵便局に、通訳派遣の依頼
ただ、銀行もわざわざ書いてあるので、通訳不要か確信は持てない
皆さんどう読み解きました?
さて、確認したところ本当に郵便局のみの依頼で、銀行はご自身で行く予定でした。
ではなぜ不要な銀行のことまで書かれていたのでしょうか?
相手の視点に立つ
そんなこと気にしなくていいのかもしれません。意味ない可能性もあるからです。でももしかしたら意図があるかもしれませんよね。
私は日本語にしたらこんな意味があるのかもと思いました。
前もってお知らせくださるなんて、とてもお気遣いの方ですね。通訳者も安心して待っていられます。
もし意図を考えなければ、銀行の部分は紛らわしい余計なこととなり“次から銀行は書かなくていい”と伝えてしまうかもしれません。
思いやりで書いて紛らわしいと言われたら、ショックですよね。
それでいて少し遅れて “なんで遅れたんですか” なんて言われたら…前もって伝えていたのに、いたたまれないです。
自分の物差しだけで見ない
一見、不要だとか紛らわしいと思ったものも、その方なりの配慮や思いやりの表れの可能性もあります。これを見落として自分の感覚だけでみると
「余計なこと書くなんて。分かりづらいのに」
「おじいちゃんだから仕方ないよね」
なんて、思いやりをネガティブに受け取ってしまい最悪のコミュニケーションを生む可能性があります。
もちろん逆に意味がない可能性もあります。でも無意味だとしても、思いやりを受け損ねるのに比べたらどうでもいいことですよね。
“これ理解するの無理だよ” と思われた方もいるかもしれません。
今回の意図が分からないとダメということも、もちろんありません。
私自身通訳者なのに、意識しても相手の視点に立ちきれないこともたくさんあって、想いを受け止められなかったものもあります。
それでも、相手の背景を念頭に入れつつ、どういった思いで行動しているのかを考える意識だけはしていきたい、意識で変わってくることがあると信じています。
第2弾も書きました!
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