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英大学院MSc 金融リスク分析

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企業はどのように外国為替リスクをヘッジしているのか

2024年になり、日銀が金融緩和政策を辞めると宣言したのに円安が戻らないですなぁ。 2022年にはコロナ禍が去り、各先進国がこれまでコロナ禍中に市場にばら撒いた給付金マネーを回収するべく、金利を引き上げて金融引締政策を行う中、日本だけが金利を上げることができず、海外との金利差を主な背景に円安が大分進んできましたが、私はこの為替変動にかなりやられました。。 為替リスクとは、外国為替レートの変動により、企業の収益、純現金収支および市場価値が変化する可能性を示す指標です。 これら

    • 確率密度関数を使った信用リスク評価と市場で用いられる信用格付

      信用リスクを扱うのは、今回で3回目。 信用リスクは、金融業界特有のリスクであり、その評価というのはとても難しいんですよね。この世の中は、Aが起きる(原因)とBになる(結果)という因果関係が1対1の関係ではありません。1つの結果は、複雑に絡み合った無数の原因によって生み出されているのです。そして、その原因を紐解くことは現状不可能です。 その不可能をいかに推測にするか、という世界です。 第一弾は、銀行の信用リスク管理、第二弾では、信用評価調整額(CVA)を利用して信用リスクを

      • 過去のデータを使って将来を予測する。分析前にやるべきこと(ディッキー・フラー検定)

        将来の売り上げを予想するにあたっては、過去5年間の売上や株価を利用するなど、多くのケースで時系列データを利用しています。 そこで注意しなくてはならないのは、使用する時系列データが変なトレンド(非定常性)を持っていないかを確認することです。 例えば、アイスクリーム屋であれば、季節や気温によって売上が左右されることは想像に難くありません。「1年間のうち、夏の間だけ売上が高い」といったトレンドを持っている時系列データは分析に使うことができません。 ここでは、分析前に時系列データ

        • オペレーショナルリスクを正しく理解する

          このオペレーショナルリスクは、「人がマニュアル(手作業)でやるから失敗するんでしょ」や「大企業は稟議書で何重に確認しているから問題ない」と楽観視されることも多い。 しかし、特に最近ではAML/CFTやサイバー、SNSを発端にした外部事象にうまく対応できずに損害を被るといった内部だけで対処できる問題ではなくなってきている。 例えば、 2021年に起きたアメリカの小売ゲーム店GameStopが倒産の危機を迎え、多くのヘッジファンドが当社株をショートしていたところ、掲示板サイトR

        企業はどのように外国為替リスクをヘッジしているのか

        • 確率密度関数を使った信用リスク評価と市場で用いられる信用格付

        • 過去のデータを使って将来を予測する。分析前にやるべきこと(ディッキー・フラー検定)

        • オペレーショナルリスクを正しく理解する

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          銀行が頭を抱える流動性リスク

          今年の米シリコンバレーバンク(SVB)の破綻をきっかけに、国際的な議論では、常に流動性リスクが話題となっている。 流動性リスクとは、 その言葉の意味のままに急に現金が必要になった時に、ほいっ、とすぐ現金を渡せるかというお金の流れるスピードに沿ってお金を用意できるかということであるが、 これは、銀行にとってこの流動性を確保するというのは大変に難しいことであり、常にジレンマを抱えている。 流動性とは ある資産や証券がその本来の価値を反映した価格で、市場で迅速に売買できる度合

          銀行が頭を抱える流動性リスク

          信用リスクの評価方法とクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)

          今回は、信用リスク第二弾!! 今回は、信用リスクの実際の評価(分析)の方法と信用リスクを移転(スワップ)する手法です。 特にクレジット•デフォルト•スワップ(CDS)はリーマンショックでも有名になった信用リスクを移転させるための有用な金融商品ですが、 CDS自体が、信用リスクを測る指標としても活用されています。 (例えば、今の仕事では、楽天のCDSのスプレッド(保険料)の動きを毎日チェックしていたりします。) 用語の確認 PART 1 まずは、信用リスク分析に関する用

          信用リスクの評価方法とクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)

          ポートフォリオ最適化理論

          ポートフォリオ(Portfolio)とは、 金融商品の組み合わせのことで、特に具体的な運用商品の組み合わせを指します。「ポートフォリオを組む」ということは、どのような投資信託を購入しようか、株はどの銘柄で何株ほど持つか、などの検討をするという意味です。 このポートフォリオを個人ベースの身近なもので考えると、現金や普通預金、定期預金、投資信託、株式、国債なんかが含まれます。 よく言われているのが、 自身の総資産のうち、半分の50%は普通預金や定期預金、国債なんかの無リスク

          ポートフォリオ最適化理論

          購買力平価説と金利平価

          購買力平価説とか、完全市場とか、 現実には成り立たないって分かっているのになぜ習うのか。 ずっと疑問だったのですが、期末試験を目前にして理解しました。 これらの仮説って、結構実務で使うんですね。 企業が海外への投資計画や融資計画を立てる時、多くの不確実な予想データを使いますが、 購買力平価説だったりMM理論で、ある程度前提条件を固定してあげないと、分析とか推測だとか、何もできなくなっちゃうんですよね。 一物一価の法則 (the Law of One Price, LO

          購買力平価説と金利平価

          FXマーケットの概要

          春期の期末分析レポートに追われ、ご無沙汰になっていました。 今回は、FXマーケットの概要です。 FXとは、 "Foreign Exchange"の略称で、日本語にすると、"外貨為替"。 よく「FXで絶対に勝てる」とかいう詐欺業者を見かけるので、FXというワードを知っている人は多いと思いますが、、 FXマーケットとは単純に、日本円→米ドル→ユーロ→…と通貨を交換するマーケットなんですね。 ただし、その交換レートは常に変動し、その都度のレートで交換したり、ある一点の将来のレ

          FXマーケットの概要

          銀行の流動性リスク

          そもそも銀行というのは、 消費者から「いつでも引き出せる預金」(=短期負債)を集めて、 企業に長期に貸し出して利子を取る(=長期債券)という、 長短の金利差で儲ける、銀行のビジネスモデル自体が脆弱性を生み出している、とてもタフな業務なんだなぁと。 流動性とは ある資産や証券が、その本来の価値を反映した価格で、市場で迅速に売買できる度合いを示す。また、銀行が即時および短期の債務を満たすための現金をどの程度持っているかを示す指標でもある。 長期的に金融機関の支払能力を脅か

          銀行の流動性リスク

          過去データから将来を予測する 2 (ARCH,GARCHモデル、ベイジアン他)

          前回に引き続き、今回はARCHモデル、GARCHモデル、Interpolation、ベイジアン予測といった手法を見ていく。 前回は以下参照。(分析の前提条件も記載してあるので、まだの方は是非) 分散自己回帰(ARCH)モデルAutoRegressive Conditional Heteroscedasticity models 分散不均一性を示す時系列データに適用されるモデルで、分散自己回帰モデルや分散不均一モデルと呼ばれる。金融時系列データへの適用事例が多い。 この

          過去データから将来を予測する 2 (ARCH,GARCHモデル、ベイジアン他)

          金融取引におけるリスクヘッジ手法とは (金利先渡契約、スワップ、オプション)

          金融はある種、タイムマシンのようなものだなぁと、 金利先渡契約 (Forwards rate agreements, FRA)金利先渡契約 (FRA)とは、 資産ではなく、将来の金利を原資産とするデリバティブ契約。 FRAを締結する目的は、 将来のある時点における借入または貸付のための一定の金利を固定化することにある。 一方の当事者は、FRAで指定された固定金利と契約決済時の市場金利の差額を(合意された想定契約額に基づいて)他方の当事者に支払うことになる。(原金利はLI

          金融取引におけるリスクヘッジ手法とは (金利先渡契約、スワップ、オプション)

          過去データから将来を予測する (ARMAモデル、単位根検定)

          分析モデルの数のなんと多いこと、、、 文量が多いので記事2つに分けて、今回は、ARMAモデル(ARモデル、MAモデル)、単位根モデルを紹介する。 <前提> データセットが定常性テスト(時間の変化に応じても確率分布が変わらないこと)に合格することが条件 例えば、 X_t=[x_t; x_t-1; x_t-2; ...]と時間変化した時、X _t-1=[x_t-1; x_t-2; ...], X_t-2=[x_t-2; x_t-3...]となること。 *t: 時点 自己回

          過去データから将来を予測する (ARMAモデル、単位根検定)

          銀行を取り巻く信用リスクの基礎と評価モデル

          シリコンバレー銀行等破綻に続き、クレディ・スイス銀行まで危機に陥り、UBSに買収されることとなってしまった。 依然として、過去のような金融危機にはなっていないものの、信用リスクが高まっており、現在のマーケットは、脆弱性のある銀行探しに躍起になっているように思える。 ここで今一度、信用リスクとは何か、そしてその信用リスクをどのように定量化して評価・管理しているかを確認していく。 信用リスクとは借り手が債務不履行に陥る可能性から生じるリスクのこと。 貸し手は借り手の投資機会

          銀行を取り巻く信用リスクの基礎と評価モデル

          リスクを定量化して分析する (統合リスク分析)

          最近、シリコンバレーバンク(SVB)の破綻からシグネチャーバンク破綻、クレディスイスの経営不安と信用リスクが伝播して(ずさんな実態がバレただけ?)金融業界が慌ただしくなってきている。 これらの原因は、結局リスク分析、つまり、リスクの定量化がしっかりと行われていないからであり、今後、リスク分析の重要性が更に高まると考える。 リスクを定量化する そもそもリスクとは、将来の不確実性に起因するものである。 リスクが顕在化するためには、以下の項目が成立している必要がある。 不

          リスクを定量化して分析する (統合リスク分析)

          データの信頼区間を求める (MATLAB使用)

          社会人になり、分析関係の仕事をする上で一番身に染みて感じたことは、100%正確な分析は不可能であるということ。 全てのデータを集めることもできないし、集めたデータも必ずしも正確とは限らない。集まったサンプルの中から分析した結果がどのくらい信頼できるのか、 分析において肝になるのはここではないかと思う。 信頼区間はなぜ必要? 信頼区間 (Confidence Interval)は、分析結果の精度を知るための統計科学的な推測法であり、パーセントで表す。 例えば、 国民の購買

          データの信頼区間を求める (MATLAB使用)