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購買力平価説と金利平価

購買力平価説とか、完全市場とか、
現実には成り立たないって分かっているのになぜ習うのか。

ずっと疑問だったのですが、期末試験を目前にして理解しました。


これらの仮説って、結構実務で使うんですね。

企業が海外への投資計画や融資計画を立てる時、多くの不確実な予想データを使いますが、
購買力平価説だったりMM理論で、ある程度前提条件を固定してあげないと、分析とか推測だとか、何もできなくなっちゃうんですよね。






一物一価の法則 (the Law of One Price, LOP)

同一の財はどの国で生産されても、その価格は世界中で同じである、という考え。
LOPは、国際財市場における完全な競争、貿易障壁、取引コストがないことが前提。



購買力平価(Purchasing Power Parity, PPP)

2つの通貨間の為替レートが、その国の物価水準の比率に等しくなるようにするという考え。
購買力平価は、ある国の物価水準が他の国の物価水準に比べて上昇した場合、その国の通貨は安くなる(他の国の通貨は高くなる)べきであることを示唆している。(=LOPが維持される)

例えば、
国内の物価水準が+10%なら、自国通貨は-10%することで、価格水準に対する一物一価の法則が適用されているといえる。
これは、長期的には有効だが、短期的にはほとんど効いていない。



購買力平価説の課題

購買力平価説は本当に成り立つのか?

  • すべての財が2国間で同一ではない(例えば、トヨタとシボレー)ので、その価格は等しくなくてもよい。
    つまり、LOPはすべての財について成立するわけではないので、シボレーに対してトヨタの価格が上昇しても、その上昇分だけ円安にならなければならないとは限らないのである。

  • 多くの財やサービスは国際間で取引されていない(例:散髪、土地など)。
    アメリカでのコーヒーの価格は人件費の関係でイギリスと異なるし、このような品目の価格が上昇し,他国との比較で国の物価水準が上昇しても,為替レートにはほとんど直接的な影響はないことがわかっている。


また、実質為替レートの観点から見ると、
購買力平価説の元では、実質為替レートは一定でなければならないが、ほとんどの国の経験則から、実質為替レートは持続的である(平均に戻らない)ことが分かっている。

※実質為替レート
名目為替レートをインフレ調整したものであり、レートは実質的な高値と安値により変化している(つまり、経済の競争力を示す指標として使われる)。



また、フィッシャー効果という異なる観点から通貨価値を分析したものもある。

フィッシャー効果(Fisher Effect)

予想されるインフレーション(物価上昇率)と実質利子率(実際の利子率をインフレーション率で補正したもの)の間の関係を指す。

フィッシャー効果の基本的な考え方は、予想されるインフレーション率が上昇すると、長期的には実質利子率も同様に上昇するというもの。これは、投資家や貸借取引の当事者が将来のインフレーションを予測し、それを利子率に織り込んでいるという仮定に基づいている。

式にすると以下のように表すことができる。
名目利子率(i) = 実質利子率(r) + 予想インフレ率( e )



金融市場と為替市場(現物・先物)の関係性


金融市場とは、ローンや預金等の手法が用いられる、一般的なお金の融通がされる市場。

為替市場には下記の2つがあり、2つの通貨(例えば円とドル)とそれぞれの金融市場によって互いにリンクされている。


現物市場
ある種類の通Home Currency, HC)を他の種類の通貨(Foreign Currency, FC)に現時点(t)のレート(Spot rate, S)で交換することができる。(逆もまた然り)

HCt = FCt × St


先物市場
現物市場と同じように現時点(t)から離れた数ヶ月先の時点(T)のレート(Forward rate, F)で交換することを契約することができる。

HC_T = FC_T × F_T   from t



これを説明すると、

まず、これらは無リスク資産(何らかの外的影響により資産価値を損なわない)と仮定した上で、HCとFCという2つの通貨、そしてtとTの2つの時点で考える。


HC ←→ FC は、為替市場(現物市場、先物市場)で繋がっており、

時点t ←→ T は、HC、FCがそれぞれの金融市場(自国内、他国内)で繋がっていることになる。


これはつまり、次のような事実を示している。

  1. スポットとフォワードの為替市場を利用して、あらゆる金融市場取引を再現することができる(逆も然り)。

  2. 自国および海外の金融市場を利用して、あらゆるSpot/Forward為替取引を再現することができる。


    という事実は、
    SpotとForwardの為替レートを国内外のリスクフリーレートとリンクさせる重要なパリティ関係(いわゆるカバー付き金利平価CIP(Covered Interest Parity)もしくは、金利平価(Interest Rate Parity))を導き出すものといえる。


金利平価 (Interest Rate Parity)

金利平価は短期の為替レート決定理論としてよく知られ、
自国通貨建て資産で運用した場合の将来価値と、外国通貨建て資産で運用した場合の自国通貨ベースでの将来価値が等しくなるように為替レートが決まるという考え。

よりわかりやすくいうと、
10,000円を国内銀行に1年預けて10,010円になるのと同じように、
10,000円を100ドルに両替し、アメリカで1年銀行に預けて101ドルになり、日本円に戻すと10,010円となり、
日本円で運用してもドルに両替しても同じ結果になるという考え。


しかし、
現実には上記のように運用結果は完璧に同じにならないため、企業は、よりリターンが大きくなるように、為替市場と金融市場を駆使してアービトラージ(裁定取引)を行う。


では、この裁定取引のチャンスはいつまで続くのか。

答えは簡単で、「少しの間」です。


なぜなら、
金利平価からの乖離が検出されると、情報を得たトレーダーは直ちにアービトラージを実行する。こうした裁定取引の結果、IRPは極めて迅速に回復します。

このようにして、プロのトレーダー(AI)達のトレーディングにより自然と金利平価を維持し続けている。



この際、
自国通貨価値から見て、外貨預金の期待収益率を決定する要素は2つ存在する。

1. 海外の収益率
2. 自国通貨に対する外貨の予想騰落率


また、為替レートは以下2つの変動要因があると言える。

1. 為替レートの将来予想は、現在の為替レートの主要な決定要因であることが示されている。人々が為替レートが将来上がると期待するとき、それは現在上がる。(みんな買うからね。)

2. 為替レートは、様々なニュースイベントによって、ダイナミックかつ不安定な短期的行動をとる傾向がある。


カバーなし金利平価 (Uncovered Interest rate Parity, UIP)

カバー付き金利平価 (Covered Interest Parity, CIP) は、先物市場の使用を伴うため、FX リスクをヘッジ(回避)しているが、同様のヘッジなしの金利平価条件も成り立つべきであると主張することができる。

しかし、
CIP とは異なり、UIP は成立しないことが多く、アービトラージの機会が生じる。 そのような取引の一般的な例は、通貨キャリー取引によって提供されることとなる。


*通貨キャリー取引
ヘッジなしで収益率の低い通貨を借り購入資金を調達することで、収益率の高い通貨を購入し、相対的なリターンが投資通貨に対する資金調達通貨の上昇よりも大きい場合に限り、収益性があるとされている。
日本の金利は1990 年代半ばからほぼゼロであるため、円がキャリー トレードの最も人気のある資金調達通貨となっている。


以下の理由から度々、CIPから逸脱することがある。
・取引コスト(スプレッド)
・資本規制







ふと思ったのですが、
日本の大学の期末試験等はまだ、学生を教室に集めてヨーイドンでやっているのだろうか。(5、6年前はそうだったけど、)


イギリスの大学院で一年過ごしたが、試験タイプは以下の大きく3つ。
・レポート
・オンラインテスト
・プレゼンテーション

特に、オンラインテストについては、
数学系や暗記系の科目のテストもオンラインなので、時間制限が厳しいが、事前に準備したノートやネットを使いながらテストを受けることができる。


公式や単語を全部丸暗記して試験に臨むなんて必要もなく、すごく実用的かつ効率的だと思う。
(試験作成者もより捻った問題を作る必要があるが!)


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