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ポートフォリオ最適化理論


ポートフォリオ(Portfolio)とは、

金融商品の組み合わせのことで、特に具体的な運用商品の組み合わせを指します。「ポートフォリオを組む」ということは、どのような投資信託を購入しようか、株はどの銘柄で何株ほど持つか、などの検討をするという意味です。

このポートフォリオを個人ベースの身近なもので考えると、現金や普通預金、定期預金、投資信託、株式、国債なんかが含まれます。

よく言われているのが、
自身の総資産のうち、半分の50%は普通預金や定期預金、国債なんかの無リスク資産として、急に現金が必要になった時のために保有しておき、

残り半分は、6:4の割合でリスク性資産、外国株式と国内株式のインデックスファンド(投資信託)で保有する(NISA、iDeCo使用)というのが個人資産を安定的かつ効率よく、増やすポートフォリオと言われています。

(私個人は、年内に大きな現金需要があるため、全資産のうち約40%をインデックスファンド等のリスク性資産で保有しています。
リスク性資産についても 私のポートフォリオは上記ポートフォリオとは、少し異なりますが、来年はもう少し攻めないと。)


と、少し前置きが長くなりましたが、
このポートフォリオ最適化理論とは、すべての個人に関わってくる理論であり、決して、金持ちの投資家だけのためのものではありません。

以降、たびたび出てくる「投資家」という言葉は、金融資産(現金、株式、債権)を保有するすべての人を指しています。



リスク回避型の典型的な投資家は、
リスク単位あたりの期待ポートフォリオ・リターンを最大化するポートフォリオを模索している。


国内マーケットのみで考える

国内投資家は、国内市場の個別証券の集合の中から投資対象を選択する。
その場合、国内証券のポートフォリオの組み合わせの無限大に近い集合が、国内portfolio opportunity setを形成する。

*portfolio opportunity setとは、
ポートフォリオ理論で使われる用語で、あらゆるリスク資産から引き出されるポートフォリオのすべての可能な組み合わせを指す。


期待リスク vs 期待リターン

国内証券の無限の組み合わせの期待リスク対期待リターンを赤の点で記載した。
これら無限の組み合わせの集合の左端に沿ったポートフォリオの集合は、効率的フロンティアと呼ばれ、点をつなぐと、曲線のようになる。

この曲線上の点、つまり国内証券の組み合わせは、各レベルの期待ポートフォリオ・リターンに対して最小の期待リスクを持つ証券の最適ポートフォリオを表している。


わかりやすくいうと、

期待リターンが同じ(y軸が同じ)組み合わせのうち、効率的フロンティア(無限にある証券の組み合わせの集合の左端の曲線)上の組み合わせは最も期待リスクが低い(x軸の値が小さい)ので、最適な組み合わせですよね!ということ。



最小リスク国内ポートフォリオ

Minimim Risk Domestic Portfolio, MRDP

個人投資家は、無リスク資産と効率的フロンティア上に見出された国内証券のポートフォリオを組み合わせた最適な国内ポートフォリオ(DP)を探索することになる。

無リスク資産(Rf)からスタートし、ポートフォリオDPに到達するまで、セキュリティマーケットライン(SML)に沿って移動していく(上図参照)。

この国内ポートフォリオ(DP)は、所定のリスクレベルに対して最も高いリターンと定義される。



グローバルマーケットで考える

ここまで投資対象を国内に限っているが、これを世界に広げ、グローバルポートフォリオに拡大すると更にメリットを享受できる。

このグローバル分散投資の真のメリットは、
世界中の異なる株式市場のリターンが完全に正の相関を持つわけではないという事実から生まれる。

具体的には、以下による。

・国によって産業構造が異なること
・異なる経済は、正確に同じビジネスサイクルに従うわけではないこと


グローバルに分散投資されたportfolio opportunity setは、
国内のみのものよりも左側にシフトするため、国際的に分散されたPOSは、同等の国内ポートフォリオよりも期待リスクが低くなる。
そのため、国内のPOSに含まれる証券やポートフォリオと完全な相関関係がないグローバルの証券やポートフォリオを追加導入することにより、利益を生み出すことが可能となる。

つまり、
国内のみよりもグローバルにリスクを分散した方がより良くリスクが分散されるので、国内のみに投資するよりもグローバルに投資した方がより低い期待リスクで同じ期待リターンが得られる。


最適グローバルポートフォリオ

International Portfolio, IP

投資家は、同じ無リスク資産とグローバル分散POSの効率的フロンティアからのポートフォリオを組み合わせた最適ポートフォリオを選択することができる。
IPは、無リスク資産のリターン(Rf)から国際分散された効率的フロンティアに沿って接する点まで延びる資本市場の線上にある点を見つけることで発見される。
IP は、国内ポートフォリオのみと比較して、より低いポートフォリオ・リスクでより高い期待リターンを提供する。



ポートフォリオのリスクとリターンの計算

では、実際にどのように計算して求めるのか。
以下の例で考える。


オーストラリア企業である Ausdrill は、
2 つの異なるリスク資産、すなわちオーストラリア株式市場のインデックス(w=40%)とドイツ株式市場のインデックス(w=60%)に投資することを検討している。

この2つの株式は、次のような期待リターンと期待リスクによって特徴付けられる。


オーストラリアのポートフォリオ(AP)
期待リターン14%
期待リスク15%
EUR/AUD 7%

ドイツのポートフォリオ(GP)
期待リターン18%
期待リスク20%
EUR/AUD 5%

相関係数
p(AP & GP) 0.34
p(GP & EUR/AUD) 0.12


両方の投資先がそれぞれの国内だけの場合、
このポートフォリオの期待収益率は、

E(Rp) = (w×R)_AP + (w×R)_GP
E(Rp) = (0.4×0.14) + (0.6×0.18)
= 16.4%

*E (Expected): 期待
*Rp (Return of portfolio): 収益率
*w (weight): ウエイト(比重)


ポートフォリオの標準偏差(リスク)は、


証券会社のマイページ等で自身が購入している金融商品あるいは、これから購入を検討している金融商品を見てみましょう。
おそらくすべて計算済みのデータが載っているかもしれません。



グローバルにポートフォリオを組み入れた際のリスク

もちろん、世界中の投資先に目を向けたとき、メリットばかりがあるわけではない。


外国為替リスク

◦ 海外市場の資産を外貨で購入することで、異なる国(および通貨)の証券に関連する相関が変化する可能性がある。

◦ 国内での投資やポートフォリオ構築では得られない、ポートフォリオ構成や分散投資の可能性がある。

◦ 国際分散投資は、ファンドが異なる通貨に分散投資されるため、ポートフォリオリスクの低減に役立つ。ただし、為替レートの変動が大きい場合は、ポートフォリオ全体のリスクを高める可能性がある。


為替レートの計算式が変化した場合の影響としては、
日本居住者が外国市場(例えば米国)に投資する場合の実現リターンは、次のように与えられます:
実現リターンR_ius = (1+R_ius)(1+e_$¥)-1

*e_$¥: JPYと比較したUSDの為替レートの変化率(USDがGBPに対して高くなったり低くなったりする場合など)



上記のAusdrillの例を使い、Ausdrill の母国はオーストラリアであると考える。

前回と同じ情報を使って、投資期間終了までにEURがAUDに対して7%上昇したと仮定した場合のポートフォリオのリターンを計算してみる:

実現リターンR_iGER = (1+Ri)(1+e_EUR AUD)-1
= (1+0.08)(1+0.07)-1
= 26.26%


新しいポートフォリオのリターンは、より高い実現リターン R_iGER を使用するようになる:

E(Rp) = w_AP *R_AP + w_GP *実現リターンR_GP
= 21.35%


そして、外貨為替リスクを調整したポートフォリオのリスクを計算する。

実現リスク rσ_iGER = √(σ^2_GP *σ^2_EUR/AUD + 2 *p_(GP&EUR/AUD) *σ_GP *σ_EUR/AU)
= 21.19%


AUSとGER双方の新ポートフォリオリスクは、
σp = √(w_GP^2 *r σ_GP^2 + w_AP^2 *r σ_AP^2 + 2p_(GP&AP) *w_GP *r σ_GP *w_AP *rσ_AP)
=15.8%

従って、外貨為替リスクによりポートフォリオリスクは、15.1%から15.8%に増加する。


結論
今回の事例では、2つの通貨に分散投資しているだけなので、為替変動が大きい場合はリスクが高くなるのは当然。
しかし、他の通貨に分散するようになると、全体のリスクは減少する(先のグラフで説明したグローバル市場のポートフォリオに近づくため)。






ようやく修士論文が完成し、提出しました。

7月に帰国してから約2ヶ月間、新しい業務の仕事をしながら夜な夜な分析を回して、なかなか満足のいく結果が出ず、苦しんでいました。

そして、ようやく修士論文から解放されたので、溜まっていた記事を少しずつ書いていこうかと思います。
(そして、過去の記事も色々と見やすいように校正しなければ。)


今の仕事では大学院で学んだことをほとんど(というか全く)使っていないので、書き始める時は、理論や計算式をすっかり忘れてしまっていましたが、本を読み返すうちに、記憶が鮮明に蘇ってきました。

5年後、10年後、この知識が必要となった時にすぐ取り出せるよう、整頓して知識をしまっておこう。


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