12.文学フリマ大阪9/6出品作品試し読み

きたる9/6(日)に文学フリマ大阪(天満橋OMMビル)に初参戦するということで無事に昨日脱稿しました。

認知度なんて地を這いつくばる青虫よりも知られておりませんので、少しばかりnoteで試し読みできるようにしてみようかと。

販売作品は新刊一種、A5版34ページ、1冊500円でございます。
●店名『月に住めたなら』
●新刊『私と文鳥と烏と』
・私と文鳥と烏と(書き下ろし)
・白い約束(別名義でエブリスタに公開)
・私は神になった(別名義でエブリスタに公開)


●ブース F-39(入り口廊下川に面したスペースの真ん中のシマあたりです)

画像1

では以下、新作書き下ろしの表題作の冒頭部分です。是非お買い求め頂きたいです!不思議ほっこり系です!


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私と文鳥と烏と

世の中には不可思議なことは沢山あって、自分が経験してないことも山ほどあって、それが時々なんとなくモゾモゾと不快感のようなものを発して、「体験してないだなんて勿体ない」「体験せよ」とどこからとも無く声が聞こえるのだけれど、体験してる暇は今は正直ないのである。
私だって本音は、体験したいのは勿論山々なのである。富士山レベルでもなくカンチェンジュンガでもなくK2でもなくエベレストくらいには山々である。

ぽつぽつと降っていた雨がやがて車の窓を激しくバツバツと破裂音を立てるようになった深夜、私は微睡みつつ帰路についていた。
タクシー内に流れるラジオの音を控えめに絞ってくれたおじさんは柔和な雰囲気だったので、歴の長い運転手さんなのかもしれない、それとも私くらいの年頃の娘さんとか居るのかな、と思ったところで恐らく私は意識を手放した。


私は先日、数年来の腐れ縁のような彼氏と入籍した。
別に結婚しなくったって生きていける現代で、わざわざ役所に紙を取りに行って、証人とかいう人を厳選して依頼して判子までついてもらう。
正直な話、彼となら同棲もしていたのだしそのまま事実婚でも良かった。型にハマったものを好まない二人だし尚更である。
だがしかし入籍したのだ。事実婚ではなく法律婚をしたのだ。
あの紙切れ一枚を仕上げるのに時間をそこそこ要することさえ驚きだったが、夫婦となればそういった煩雑で無意味なようなものに割く時間も必然的に生まれるのだろうし、所謂結婚式準備が夫婦の準備期間のように、多分そんな意味合いで最初の関門になっているのだろうと私と彼は受け止めた。
ちゃっかり届けを役所に出した帰りはどこかウズウズとモヤモヤと気恥ずかしくむず痒く、たまらなかった彼は「ヒャッホイ!」とか言いながら謎のジャンプをしていた。
そんな様子を見て私も素直に心から「何してんのー!」と笑える、そしてまた私も真似をして下手なジャンプをする、そんな二人が夫婦になれたことが単純に意外なほどに嬉しかった。


二人で暮らす部屋には私が飼っている文鳥がいる。両手で収まるその小さな鳥がとても愛しくて、ピチチと泣きながら肩に止まり、私の短い髪の毛の先をついばむその様はもしかしたら旦那より愛おしかったかもしれない。
そんな愛しいものばかりに囲まれた部屋で私達は暮らしていた。


時々忙しくとも帰る場所があって、そこが温かい場所で、愛しいものたちもそこに帰ってくるのだと思うと自分でも何故か誇らしく感じる広くもない、趣味全開に飾り付けた、ただただ普通の部屋だった。


夢に出てきたのはそんな部屋で待つ文鳥と旦那だった。


何故かなんだか、旦那の方だけまるっと風貌は変わっていたのだけれど。


愛しい文鳥はそのままに、愛しい旦那のその姿は何故が文鳥と同じ鳥類の烏だった。


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(続きが気になった方は文学フリマでお買い求めを!後日通販もする予定です!)



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