衝動(それはおんな)
間に合わない心が破裂しそうだ。
何かが失敗したわけでもなかった。ただただ、必要的に顔を合わせただった。少しの嬉しさを含み、微笑んだだけだった。
胸の高鳴りはなく、悲しみもなく、
そして、では、この弄ばれた胸のひきつりはなんであろう?
百合子は一心に自転車を飛ばしたい気分だった。
自分の心から、収まりきらないエネルギーが細かく鋭い空気になって、彼女を爆破させようとしていた。
四つ角も止まらず、赤信号にもとまらず、そうして誰にも邪魔されないまま、たった一台、猛スピードで走る赤い車に、真正面から突進したかった。
同じくらいのエネルギーに否応なしに吹っ飛ばされたい気持ちになった。
母音を濁らせた叫び声とともに、はね飛ばされたかった。
そうして彼女は、四つ角でとまり、赤信号でとまり、馴染みのスーパーの前でブレーキをかけて、小さいサイズの豆板醤を買った。
(恋に明るくない女のときめき)
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