四月 星繍

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最近の記事

夏とか煩いから静かにしてくれ

夕立ちが降った。 慌てて傘を出す人や、 凌げる場所に走り出す人たちを横目に、 なんかもういいやって空を仰ぐ。 何処かで雷が鳴る。 雨粒に汗が混じって少しだけしょっぱい。 体温が奪われていく感覚が気持ち良くて、 どうせ自分に跳ね返ってくる苛立ちとか、 金輪際僕が出てくることのないあなたの今後とか、 全部、ぜんぶ気化すればいいのにとか思って、 こんな時用のプレイリストなんかが 存在していること自体が可笑しくなってきて、 もうこの世にいない人間の音楽を聴いている。 すべての雨が海に

    • anti serotonin

      この希死念慮すら実績解除の過程の途中だと知って、底だと思って踏み締めた地にもさらにまた底があって、死にたくなってからやっと始まるエンドコンテンツ。拭えない、僕が僕自身の代理人であるかのような感覚。それ死ぬまで治らない病気らしいよってあなたが言った夏まだ生きていたいと、もう終わりにしたいを半々で希釈したみたいな灰色の空。幼い頃の話を同世代の人とするのは苦手だ。なぜなら全く話が合わないから。やれあれが懐かしいだの、やれあれが流行っていただの、そんな話題になってしまったらただ頷くだ

      • 拝啓、全ての喪失たちへ

        ちゃんとした父親はいなかった。それは僕が不倫で生まれた子だったから。 まだ部落という文化が根強く残っているような地域で、そのせいで僕の父親にあたる男は冤罪であるにも関わらず刑務所へ入れられたらしい。 祖母は子供の頃から目が見えず、貧しい家庭だったが故にネグレクトだったと言う。だから、私が生きる為に助けてくれる人が必要だったと、そう語る祖母の表情の悍ましさをよく覚えている。盲いた彼女の視線の先に、本当は何か見えているんじゃないかと疑いたくなるような顔だった。 そんな祖母に道具の

        • シャーデンフロイデ/ぜんぶ夢

          日が暮れる頃に家を出て、朝方、街が青く染まる頃に家に帰る。池袋駅東口には毎日のように若者がたむろしていて、もうほとんど乾いた吐瀉物の残骸をカラスがつついている。路肩に停車したタクシーの運転手がガードレールにもたれながら煙草を吸っている明治通り。まだ人気の少ない駅の構内を小走りで通過するスーツ姿の人たち。繰り返す風景を横目に飛び乗る常磐線。繰り返し、繰り返す、なんの変哲もない日常。すれ違うあの人も、あの人も、それぞれの守りたい生活があって、そのために汗を流しているのだろうと思う

        夏とか煩いから静かにしてくれ

        マガジン

        • 日記
          16本

        記事

          あの渚が遠い

          刺し違えてでも殺してやりたい過去があるから、生傷の絶えない体に染みるぬるい風。遺影みたいな選挙ポスター、自販機の横に貼られた怪しい広告、ジャンプの新刊で取り戻す曜日感覚、文末にかけて次第に失速する詩。こんなに暑いと煙草も不味くて困る、そんなぼやきも解体現場の騒音に掻き消されて、確かにその時、私は安心したのだ。塗り潰して、重ね書きして。見たくないものの方が明らかに多いから。 サマーソニックの投稿ばかり流れるタイムラインをスクロールして、ぼんやりと夜道を歩いている。部屋干しの匂

          あの渚が遠い

          宛らあなたは

          想像する。 惰性で流れるシネアドが終わり、場内の照明が全て消えて、疎らに聞こえていた会話が静まるあの一瞬。 想像する。 ケーキに刺さっている蝋燭の火を一気に吹き消して、誰もがそれを固唾を呑んで見守るあの一瞬。 想像する。 台風が来る前の不穏な空気と、それに比例するように増していく高揚感。消灯時間で真っ暗になる夜行バス。朝日が昇る前の一番濃い夜空。機材チェックが終わって静寂に包まれるライブハウス。 間違いなく"今、始まるんだ"という確信。それを頭で理解する前に、血流に乗って全

          宛らあなたは

          東京メトロ

          目をつぶった時まぶたの裏側に映るのは、ノーブレーキで赤信号に突っ込んで大破する車とか、屋上からダイブして段々と迫ってくるコンクリートだとか、何かに衝突して命が途絶える瞬間で、視界が突然真っ暗になっては、また再生される。そんな時もあれば、無限に膨張していく暗闇の中で、視覚も聴覚も奪われて、置き去りにされていくような感覚になることもある。その暗闇の中で、私自身が本来許容しえなかった怒りや悲しみ、寂しさ、侘しさ、全部が溶けていって、一体になっていくような気持ちになる。 そこはまる

          東京メトロ

          2022

          嵐はいつか過ぎ去る。そりゃそうだよ実際過ぎていった。 でもその余波が収まらないうちにまた次の嵐がきて、僅かな晴れ間、濡れた体を乾かす暇もなくまた雨に打たれる。泥濘んだ足場では飛べやしないし走れもしない。それでもぎりぎり身動きは出来てしまえる。息を切らしていないと不安だった。そんな風だった、2021。ようやく終わったという安心感と、もう終わってしまったという焦燥感。みなさんはどれくらいの割合ですか。私は4:6くらいです。 明けましておめでとうございます、四月です。 昨年関わっ

          冬の匂いがする

          日が沈むのが早くなると、夜が長くなって嬉しい。と言うより、自分の中での感覚的な夜の滞在時間と、実際の夜とのギャップが少なくなるから嬉しい、の方が若干正しいかもしれない。そしてそれと同じ理由で、私は冬の冷たさが好きだ。まだちょっとだけ、息が白くなるには足りないけれど。 こんばんは、四月です。 最近の私は、帰宅早々に電気も消さないまま気絶するように眠り、夜中や明け方に目が覚めては、タイトルもつかないような詩を書いたり、絵の練習をしたりして過ごしています。 先日は二年ぶりに大好き

          冬の匂いがする

          画角から溢れたハッピーエンド

          言葉にできないことばかりだけど、確かに今、言葉にしなきゃいけないことがあるのもまた事実で、こういう時人はどうあるべきなのだろう、と、いつも考えている。欲しいのは正しさじゃない、最適解でもない、ただ僕の気持ちが、心が、目の前のあなたになるべくそのまま届いてほしいだけなのに、それが随分と遠い。遠いから、それに酷似した質感の温もりへと強引に持っていくために、黙って抱きしめるしかなくなる。言わば強硬策、言わば消去法、どうしようもないから、声にならないだけだったんだよいつも。なんとなく

          画角から溢れたハッピーエンド

          十七歳、そして日は沈む

          ウォークマンから流れる音楽が全てだった、自転車で行ける半径が世界そのものだった、あの頃に戻りたいなんて思ったこと、今まで一度だってない。ずっと居場所はここじゃなかった。どこに行っても腑に落ちない。どうせ失くすなら、せめて納得できる失くし方を。そういう風に生きてきたはずなのに、今更失ったものの所在が気になる。退屈が理由で飛び出してから、もうそれが癖になってしまっている。幸せも、不幸せも、全部を並列に語ることはそんなに難しいのだろうか。大好きだから会いたくない。名残惜しいから旅立

          十七歳、そして日は沈む

          告白、酷薄

          私は夜明け頃、一瞬青くなる街が好きだ。古びたコインランドリーの少しカビっぽい匂いが好きだ。昔からある中華屋のよく分からないフィギュアとか好きだし、透明のビニール傘についた水滴も好きだ。お酒なら緑茶割りが、煙草ならハイライトが好きだ。冬の海が好きだ。物語の後書きが好きだ。紙を捲る時の感触が好きだ。タクシーのラジオで流れる、平成初期を感じるJ-POPが好きだ。 古本屋で買った本の、誰かの落書きが好きだ。犬か猫なら、両方好きだけど強いて言うなら猫の方が好きだ。赤い鉄塔を見つけたら

          告白、酷薄

          何となく死なないために、何となく生きる

          歌って、騒いで、飲んで、語って、ちょっとだけ泣いて、そうしてあまり眠れなくて、重たい瞼にも午後の日差しは容赦がない。今日の昼間は気温が三十三度まで上がった。蝉が鳴いていた。二十二歳になってもやっぱり夏は嫌いだった。 私は夏生まれだと話すと、それっぽいねと良く言われる。 かに座の人は、自分の殻の中に入れた人は絶対に守ろうとする人なんだと、友人が教えてくれた。私は占いの類いはほとんど信じないタイプの人間だけど、何となく、それは嬉しいことだった。自分の手の届く範囲のことは、ちゃん

          何となく死なないために、何となく生きる

          愛しい日々から

          痛みの中でしか、事実を正しく認識できない 瞼は重いのに、思考は澄んでいて、こういう時に限って、人知れず死んでいくだけの悲しみに思いを馳せてしまう。 痛みの中でしか、自分の視界を信じられない 大切なものや人が増える度に、いつかそれを見殺しにしなければいけない自分を想像する。 この手に抱えきれないくらいの幸福、 身に余るくらいの愛情、 身の程以上を望むのは愚かだと知っていながら、それでも愛おしい気持ちが変わるわけでもなく、器の伴わないそれは簡単に溢れて、私は、仕方がなく優先順位

          愛しい日々から

          幸福論

          記憶のあちこちに虫食いができていて、そこから潮風が入り込むから、錆び付いてしまっている。あなたと一緒に行った近所のCDショップの、試聴機で聴いたあの曲、なんて曲だったっけ。学校をサボって見たあの映画の結末はどんなだっけ。ジュースを賭けた線香花火、勝ったのはどっちだっけ。錆び付いているから、思い出せないでいる。 自分で自分なりに定義した言葉、感情、事実を、想定外の角度で覆してくれる何かを、ずっと探している。死ぬまでずっと同じ純度で感じられる衝撃を、肌身離さず抱えておける痛みを

          或る深夜

          深夜タクシーの料金メーターが繰り上がる度に、朝が近付いていること、逃げられないこと、酩酊の中で考えていた。吐き気と浮遊感、だけど思考だけは澄んでいる。右手に握っていた500mlの空き缶を握ると、夜が潰れるような音がした。誰かに噛み付かれたみたいな三日月。夜風が冷たいと、何となく嬉しい。冬の寒さは誰にも媚びない寒さだから、私は冬が好きだ。 ハッシュタグで本当に繋がりたい人と繋がれる人などいるだろうか。好き放題ハートをばらまけるSNS。嘘ばっかりのSNSで、本当に載せたい生活を