マガジンのカバー画像

私のメイド・執事研究

23
運営しているクリエイター

記事一覧

「執事といえばセバスチャン」はいつ成立したのか? 執事ブーム以前のセバスチャン考察

「執事といえばセバスチャン」はいつ成立したのか? 執事ブーム以前のセバスチャン考察

「執事といえばセバスチャン」執事に関心がある方は、「執事といえばセバスチャン」という通説をご存知かと思います。ググって見れば、その回答を求める方たちの言葉や回答があふれています。その通説は、アニメ『アルプスの少女ハイジ』の男性使用人(実質的に執事)が「セバスチャン」の名称であり、そこに由来して、日本のクリエイターたちが「セバスチャンという名前の執事を描く」現象になったと言われています。

しかし、

もっとみる

DIO様は執事がいる館に住む夢を見る? 『ジョジョの奇妙な冒険』に見る老執事から青年執事への描写の変化

はじめに
長く連載が続く作品は、その作品が書かれた時期のトレンドを反映することがあります。『ジョジョの奇妙な冒険』(荒木飛呂彦、集英社、1987年1巻)は、1980年代から1990年代の作品(第1部と第3部)で、執事の描写が変化していきました。

『日本の執事イメージ史 物語の主役になった執事と執事喫茶』では、同作品を取り上げましたが、個人的にもっと深堀したかったので、刊行記念に執事観点で深堀しま

もっとみる

老執事も昔は青年だった〜『バットマン』アルフレッドと『アイアンマン』ジャーヴィスの青年化〜

『日本の執事イメージ史』では、様々な作品で脇役・年齢に見合った年齢の執事が、次第に青年・少年として描かれ、さらに主人公化するトレンドを追いました。

そうした「描かれた執事」イメージの海外での強いイメージに、「ヒーロー作品で主人公を助ける執事」という役回りがあります。中でも、『バットマン』の執事アルフレッド・ペニーワースは、以下のように紹介されるほどに、「バットマン」を支える存在でした。

執事が

もっとみる
英国執事研究者による映画『うちの執事が言うことには』感想 ロケ地と「屋敷のベル」考察

英国執事研究者による映画『うちの執事が言うことには』感想 ロケ地と「屋敷のベル」考察

原作のファンだったので、映画の『うちの執事が言うことには』を見てきました。以下、ネタバレを含みます。

原作の魅力について
まず、原作については、これまでに書いたことがありますが、「日本の執事の到達点」的作品です。「日本の現代社会」を舞台に、社交界を含めたもてなし、ワインの業務、銀食器磨きなどの「英国執事」の仕事をメインで描ける世界を成立させ、さらに日本の「家令」に連なる系譜の執事や執事養成学校な

もっとみる
35年前(1984年)の「メイド萌え」 めるへんめーかー氏のメイド服・エプロンへのこだわり

35年前(1984年)の「メイド萌え」 めるへんめーかー氏のメイド服・エプロンへのこだわり

はじめに〜1980年代の「メイド萌え」英国メイド研究家である私が、日本のメイドブームを考察した『日本のメイドカルチャー史』では、1970年代までに少女漫画や、児童文学・世界名作劇場のアニメでお金持ち描写・屋敷を描く際に「メイド」が主に背景として登場しており、『バジル氏の優雅な生活』など、いくつかの作品で表舞台に出る作品が増加していったと考察しました。

この後に続く「メイドブーム」としては、第1期

もっとみる
「執事といえばセバスチャン」考察の追跡調査報告1 『ペリーヌ物語』の影響考察

「執事といえばセバスチャン」考察の追跡調査報告1 『ペリーヌ物語』の影響考察

はじめに1年半前に、「執事といえばセバスチャン」はいつ成立したのか? 執事ブーム以前のセバスチャン考察 を書きました。その後の調査の途中経過記事です。この段階でも調査が終わっていないのですが、「#エアコミケ」参加予定日の5/4(月)に、集まっている情報からのテキストを公開します。まとまり次第、前作とあわせて同人誌にする予定です。

復習しますと、元々日本の漫画やアニメなどで「執事キャラクター」が増

もっとみる
メンバーシップ(旧有料マガジン)で読める翻訳本・同人誌紹介

メンバーシップ(旧有料マガジン)で読める翻訳本・同人誌紹介

はじめに
2021年8月から有料マガジン(メンバーシップへ移行)を初めて、どれぐらいテキストを公開しているのかをまとめます。章単位で翻訳を行う都度公開していましたが、章が多いものもあって混ざってしまうので、「本」単位ということで。

確認したところ、英書一冊全文翻訳7冊、部分翻訳2冊、同人誌全文5冊、部分1冊と、がんばっていました。

翻訳テキスト(全文)7冊翻訳テキスト(部分公開)2冊

同人誌

もっとみる
【翻訳】英国執事が見て見ぬふりしたこと:執事エリック・ホーンの人生と冒険 第4章

【翻訳】英国執事が見て見ぬふりしたこと:執事エリック・ホーンの人生と冒険 第4章

アンダーバトラーはお茶の時間に、焼いた骨髄を食べるのが好きでした。シェフは使用人の数に応じて肉の重量を平均化して切り分け、骨はキッチンに戻りませんでした。ただし、日曜日の夕食時に温めていない牛肉がもう一度運ばれてきたときを除いて)。アンダーバトラーはマトンの肩肉の骨を薪の灰の上に置いて、それをつまんで食べていたのですから、太って当然です。ある日、彼はそれを皿に乗せると、コショウと塩を取ろうとしまし

もっとみる
【翻訳】英国執事が見て見ぬふりしたこと:執事エリック・ホーンの人生と冒険 第3章

【翻訳】英国執事が見て見ぬふりしたこと:執事エリック・ホーンの人生と冒険 第3章

私は別の職場を探さなければならなくなり、新聞広告で州内の仕事を探し、自宅から約60マイル離れたイーストボーンにフットマンとして働くことになりました。

駅まで見送りに来てくれた母からは、いつものように良いアドバイスをもらいましたが、初めて家を出るので、私も母も胸が締め付けられるようでした。

列車は出発し、詩人が言うように
「疲れた子供のように横になって、
この世話のかかる人生を泣き明かす。
私が

もっとみる
【翻訳】英国執事が見て見ぬふりしたこと:執事エリック・ホーンの人生と冒険 第2章

【翻訳】英国執事が見て見ぬふりしたこと:執事エリック・ホーンの人生と冒険 第2章

当時はまだ、少年向けの奨学金制度などありませんでした。たとえあったとしても、私はもう12歳の大きな男の子で親の経済的負担になっているので、私は奨学金を受けられませんでした。親は、私が自分で生計を立てるか、あるいはそれに近いことをするようにと望んでいたのです。それでも私は、教会の聖歌隊で歌い続けました。私は強く甘い声を持ち、この頃はトレブル(ボーイ・ソプラノ)のリーダーを務めました。オルガン奏者の息

もっとみる
【翻訳】英国執事が見て見ぬふりしたこと:執事エリック・ホーンの人生と冒険 目次・第1章

【翻訳】英国執事が見て見ぬふりしたこと:執事エリック・ホーンの人生と冒険 目次・第1章

タイトル:英国執事が見て見ぬふりしたこと:執事エリック・ホーンの人生と冒険。貴族や上流階級に仕えた57年
TITLE: What the BUTLER Winked at : Being the Life and Adventures of ERIC HORNE(Butler) for Fifty-seven Years in Service with the Nobility and Gentr

もっとみる
作りたい本をまとめておく 人生の時間が足りないので

作りたい本をまとめておく 人生の時間が足りないので

はじめに本を作ると作りたい本が増える現象

メイド研究をして知りたいことを調べていると、その途中で出会う資料の中に「もっと知りたい」と思う広がりに出会うことがあります。本来は「100を読んで5-10ぐらいに蒸留してアウトプットする」のですが、その「100を読むと、別のいくつもの100に繋がってしまう」のです。

というところで、最近はちゃんと同人誌を作ると、そのテーマについては各終えたのに、隣接し

もっとみる
「#メイドの日」考察 日常化した日本のメイドブーム

「#メイドの日」考察 日常化した日本のメイドブーム

はじめにここ数年、5/10に日本のTwitterのハッシュタグ #メイドの日 がトレンド1位を取ることが続いています。5/10が「メイドの日」とされるのは、「5月=May=メイ」、「10日=とう=ド」と読むことに由来するとされています。

2017年には、盛り上がりがネットメディアのねとらぼで記事化されました。

それから毎年、メイドの日はトレンドに入り続けています。

5/10の「メイドの日」に

もっとみる
コミケ99へのサークル参加と新刊・頒布同人誌

コミケ99へのサークル参加と新刊・頒布同人誌

参加情報直接参加は2年ぶりとなるコミケに参加してきます。新刊は『英国メイドの暮らし VOL.1』となります。

参加日:2021/12/31(金)
サークル名:「SPQR」
配置場所:西地区1ホール "た "19a
コミケカタログ上のサークル情報(要ログイン):https://webcatalog.circle.ms/Circle/15713531

※今回のコミケへの一般参加には事前チケット購入

もっとみる