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作りたい本をまとめておく 人生の時間が足りないので

はじめに

本を作ると作りたい本が増える現象

メイド研究をして知りたいことを調べていると、その途中で出会う資料の中に「もっと知りたい」と思う広がりに出会うことがあります。本来は「100を読んで5-10ぐらいに蒸留してアウトプットする」のですが、その「100を読むと、別のいくつもの100に繋がってしまう」のです。

というところで、最近はちゃんと同人誌を作ると、そのテーマについては各終えたのに、隣接して関連する領域を調べたくなり、時間がいくらあっても足りない状況となっています。

そこそこ焦ってもいますが、先々のことは書き出しておいて心の中のメモリを解放するのが良いともいいますので、書いておきます。自分にとっての長期目標ということでもあるので。

これは読書計画にも繋がり、ある領域を別の領域を調べる前に取り組んでおくと、下地ができていて効率が良いというロックマン方式です。加えていえば、純粋な翻訳と、資料を読みながら仮説や論点を作り、裏付けとなる資料を引用する形式では前者の方は作業プロセスは少なく相対的に負荷が少ないため、以前よりも加速していくつもりです。

『英国メイドの世界 完全版』は前後の時代を含めた三部作へ

もう一つ大切なのは、ライフワーク『英国メイドの世界 完全版』を目指す上で、必要な資料を集め、アウトプットをする点です。これまでの私の考えでは、『英国メイドの世界』は20世紀に雇用が衰退する事情を十分に扱えず、『英国メイドがいた時代』と『第二次大戦化の英国カントリーハウス準備号』でカバーする見込みでした。

しかし、2022年夏に『英国メイドの暮らし VOL.2』で家事使用人マニュアルを扱う中で、16-18世紀の家事使用人事情についてもある程度、知識をまとめておく必要があると感じました。『英国メイドの世界』で触れている範囲ではありますが、もう少し詳しく広く扱えると気づきました。

『英国メイドの世界』:ヴィクトリア朝の家事使用人中心・今まで通り
『英国メイドがいた時代』:最盛期の時代から衰退の時代へ
『英国メイドと家事と近代』:最盛期に至る理由の明確化・社会変化

こんな感じでしょうか?

◯2022年冬での同人誌化を目指す

・フレデリック・ゴーストの自伝
19世紀末からフットマンになり、Beyond the Centuryも体験したフットマン。

・エリック・ホーンの自伝:2冊
ヴィクトリア朝の頃から働き、転職・失業、成功・失敗を繰り返し経験した執事。不遇度合いの方が高かったが、最後のやけっぱちで書いた執事自伝がベストセラーになり、続編まで刊行。

◯常時翻訳していきたい使用人マニュアル系

同人誌化は蓄積してまとめて行う見込み。

・家事使用人マニュアル翻訳:10冊?(1冊は済み)
夏コミ同人誌で言及したものをいくつか。以下はそのうちの一つ。

・20世紀使用人問題・政府資料4冊(1冊は済み)
全体に使用人問題は20世紀の課題で、メイド衰退の歴史とセットになります。社会問題として大きすぎる反面、かなりの資料でその当時の家事使用人へのヒアリングをおこなっている点でも貴重な資料として、出版する価値があります。一冊は済ませたので、もう一つ、かなりの声を載せている本を出版します。

・礼儀作法マニュアル:未定
『英国メイドの暮らし VOL.2』の続編。内容は、『英国メイドの暮らし VOL.2』で扱ったように、古くの宮廷の家臣が立身出世のために身につけたマナーが、社交界・上流階級への扉として機能していく点と、それらの本の著者たちの社会的属性が変化すること。可能であれは現代にもつなぎたい。

・『ミセス・ビートンの家政読本』全文翻訳:未定
夏の新刊同人誌で、一部を扱いましたが、この本に時々散見する異常な情報密度が面白過ぎて、全部訳したくなっています。もちろん、家事使用人に関する資料の密度も高いので、日本でメイド知識を創作に使う人は最低限、ここを通ってくださいねというような意味合いもあります。


◯考察を行う本

・職種:ランド・スチュワードと土地経営:2024年夏コミ

以前『ヴィクトリア朝の暮らし 終わりの始まり』で扱った職種、「ランド・スチュワード」。実はこの職種もマニュアルがあり、また職種にともなる日常のやり取りを記録した資料も豊富にあり、かつ農業生産に関わる職種なので農業マニュアルとも親和性があます。英国貴族や地主といった上流階級の経済基盤を知り、その中で屋敷が果たした役割を知る点でも、この食湯の解説は必要と思っています。

・第二次大戦下のカントリーハウス:2023年冬?
書いたままそれっきりになってしまったのですが、これも調査範囲が劇的に広く、他の作業を優先してしまっているものです。とりあえず締切を決めることで、やる気を高めておきます。


・英国メイド研究書の系譜(主要文献リスト)

これは特に本にしなくてもいいのですが、英国の戦後から2020年ぐらいまでの70年以上の家事使用人研究に関する文献の整理・位置づけの再確認をしたというテキストを書きたいと思っています。こう思ったきっかけの一つが、『英国メイドの暮らし VOL.2』で参考にした『男の家政学 なぜ<女の家政>になったのか』で、次のような言及を見たからです。

ここの『経済集志』という雑誌があり、ドロシー・マーシャルの『英国における家事使用人の歴史』という本の書評を小林巧という人が書いておられる(日本大学経済学研究会、1955年、第24巻第6号)。
「薪をとり水を汲む人々が古くから存在しいたにもかかわらず、歴史家は従来こうした人たちに少しも関心を寄せてこなかった。家事使用人に関する歴史記述はこれまでのところ皆無に近く、僅かに折々の随筆や文学書、日記、書簡の類に彼らの意見や状態が散らばって書かれているに過ぎない」

『男の家政学 なぜ<女の家政>になったのか』p.164

たまたま私はこのドロシー・マーシャルの資料を入手しているのですが、読んだ当時はあまり研究の進化の具合というのか、系譜というのか、そういうものを考えておらず、「古い時代の研究だし、情報量も少ないし、1970年台のパメラ・ホーンの資料の方が良い」と思ったものですが、今こうして振り返ると、「この本が出た1949年はどういう認識だったのか」を知ることは有益だと思い、整理した方が良いのかも、と思いました。

Dorothy Marshallの『The English Domestic Servant in History』1949年。


◯いろいろな人間がいたことを照らし出したい

・主人と使用人のエピソード集(MAID HACKSのアップデート版)も作りたかった:2023年前半を想定

家事使用人の自伝や手記、インタビューなどには、当時の使用人が経験した世界やであったきた人々の情報が豊富に散りばめられています。そうした言葉を集めて編集した本が、同人誌『MAID HACKS』でした。

ただ製作したのが2007年なので、それ以降に集めた膨大な資料からもさまざまなエピソードを集めて反映させた「完全版」を作りたいと思いつつ、先延ばししていました。この本は誰もが楽しみやすく、マニアックではなく、同人誌の入り口と指摘のしやすいので、来年の夏の刊行を予定します。


・『英国執事の流儀』の最新版も:203年中か?

同様に『英国執事の流儀』も作り直したい気持ちがあり、しばらくの間、電子書籍のみにして絶版にしていましたが、2020年のコロナ禍で印刷所を応援したいと増刷を行い、再度、同人誌としての頒布をおこなっています。これの大規模アップデートをしたいもう一つの理由は、書いた時点での自分の管理職経験と、現在までの管理職経験には雲泥の差があり、そうした社会人としての経験の蓄積も反映したいと思っています。


◯まだまだ作りたい本がある

・メイド短編小説再び:2024年か?

既にご存知の方も少ないかもしれませんが、私がメイド研究を始めたのは英国の屋敷を舞台とする創作(TRPGシナリオ)や小説を書きたいと思ったからですが、資料研究の方が劇的に面白過ぎて、創作をあまりできていません。

元々の同人誌シリーズ『ヴィクトリア朝の暮らし』も創作+解説の構造にして創作をできる場所を作っていました。非実在のメイドイメージを理想化して描く点は諦めたくないので、これも少しずつ出力先を設けていきます。

以下が創作同人誌です。

・執事セバスチャンに関する謎を完結させたい

セバスチャンに関する追跡調査も終わっていないので、これも完結させなければ。ちょっと取材リソースがないので、人にお願いする点が出るかも。

◯ゲスト招きたい

・メイド研究記念本

同人誌の楽しみは、普段ならば接点がない人たちとも「この作品が好き」という形で繋がりを持ち、好きを表現する形での創作を共有しあえることにあると思います。その活動の中の理想の一つが、「自分が好きな作家の方達をゲストにお迎えする同人誌を作る」ことです。

そして私のメイド研究生活も22周年を迎えており、何か周年記念本を作りたいと言い続けておりま。本来は20周年記念本の予定でしたが、コロナの影響で頓挫して現在に至っています。

あと、どなたをゲストにお迎えするのか、どういうコンセプトであれば統一感があって美しく、また参加していただける方にもメリットをお返しできるのか、そしてその時の編集をどうするかなど、いろいろと考えることが必要です。

以前にゲスト本は作ったこともあり、その時とどう違うの、というところも明確にしておきたく。前回は「広義のメイド」として喫茶やコスプレや同人ジャンルを扱ったので、次回はイラストや小説、漫画などの創作メインになるのかなとも思っていますが、まだ具体的に煮詰めきれていません。

・ヴィクトリア朝のガチ本:2025年か?

ヴィクトリア朝ももう、異常に資料があるわけですが、資料の多くは1990年代から2000年代前半の出版になっていて、新しい視点での研究を必ずしも反映できていないという難しさも出ています。

これもメイドの資料と同じで、日本で出ている本のリスト化を行ってもいいのかなと考えています。その上で「自分が知りたいヴィクトリア朝」に特化して、ヴィクトリア朝の入り口になるような本を作れないかな、とも考えています。ある種、『エマ ヴィクトリアンガイド』がそうなのですが、もう少し広いヴィクトリア朝で、きれいも汚いもあるようなわい雑さを。

まとめ

◯同人イベントに向けて:2025年までの計画

・2022年冬コミ:フレデリック・ゴーストの自伝
・2022年冬コミ:エリック・ホーンの自伝

・2023年春か?:20世紀使用人問題・政府資料4冊
・2023年夏コミ:MAID HACKS RETURN?
・2023年夏コミ:英国執事の流儀 
・2023年秋? :執事セバスチャンの謎を追う
・2023年冬コミ:第二次大戦下のカントリーハウス

・2024年夏コミ:職種:ランド・スチュワードと土地経営
・2024年冬コミ:メイド短編小説再び
・2025年夏コミ:メイド研究25周年本:ゲスト
・2025年冬コミ:『ミセス・ビートンの家政読本』全文翻訳:未定

◯常時

・家事使用人マニュアル翻訳:10冊?(1冊は済み)
・英国メイド研究書の系譜(主要文献リスト)
・ヴィクトリア朝のガチ本?

これらを安定して作業するには経済的基盤と時間的余裕も必要なため、この方向でのメイド研究を応援してくださる方は、私の著書の購入や、有料マガジン購読など、ご支援いただければ幸いです。

また、時間を早めて読みたいという要望が多ければクラウドファンディングを検討しますし、出版企画などがあればお声がけください。スケジュール次第ですが。


いただいたサポートは、英国メイド研究や、そのイメージを広げる創作の支援情報の発信、同一領域の方への依頼などに使っていきます。