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アイドル

私は、キラキラしたあの子たちが嫌いだった。

一生懸命踊って、汗を流して、いつも笑顔で、応援される

前世でどんなことをして生きていたのか

どんな心情であのテレビに映っているのか


何もかも、私には意味がわからなかった。



誰かに好かれたいと思った時

何も行動してこなかった自分に気が付いた。

あの子たちを妬んだ自分を悔やんだりもしたけど、

初めて生きる希望ができた。



課題ができたとはいえ、

まだまだ苦しくて、悔しくて、虚しかった。


あの衣装も、声も才能も全部、

何も持っていない自分が嫌いで

関係のない世界だと思うしかなかった。

生きるためにはそう思うしかなかった。



初めて舞台に立った時

私は、監督兼脚本家だった。


数ヶ月かけて作り上げた何かで

誰かを魅了する時間は、

感じたことがないほど心地よかった。


劇が終わり、キャストが舞台袖から出る

その時、盛り上がりがピークになる。

お客さんの拍手の中、初めて照らされたあの瞬間

私はここで生きていきたいと思った。


自分の作った世界の中で、

誰かの魅力を引き出せるような、

キャストや裏方、全員で作り上げるような

そんなことをし続けたいと思った。



天才は二種類いると思う。

才能ある者と、その才能を引き出す天才


私はずっと、前者に、嫉妬していた。

何も持たない私には眩しすぎたから。




初めての舞台で、お辞儀をしながら考えていた。

私は後者なのではないか?


本人も、周りの人すらも、

誰もが知らない才能、気付いていない魅力を

私が見つけられるなら、教えてあげられるなら、

それは本当に、自分に適していることなのではないかと。


そして、それを自分の世界観で作り上げることこそ

いま私が、本当にしたいと思っていることなのだろうと。

ここに書いていて、より思う。


自分にも、まだ見えていない魅力があるのだということを

忘れないであげたい。









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