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013|卒業とともに


Order | 2021

Title|Order
Date Created | 2021
Art Supplies|ペン
Size|-

Concept|
感情の渦に巻き込まれたあの日に私は何かを失った。
溢れ出る涙は滞ることなく流れ続ける。
どんな角度でも私は私だと実感するその時まで。

Explanation|
大学卒業後私は版画をする環境を失い、ペンを走らせていました。私ができる制作方法として、私はペンで作品を描くことしか出来なかったからです。この頃私は何も考えずただ紙にペンで作品を描けていた頃でした。今ではコンセプトや、モチーフがないと画面に絵を描くとが出来ないほど感性が鈍っていますが、それでもこの作品を書いている時私はとても楽しく描いていたと思います。今ままで版画ばかりをしていた反動だと思います。今まで自分の使用していたペンを使わずに作品を制作した期間が私にとって長すぎたのかもしれません。あの頃の私は就職活動もうまくいっておらず、結局内定をもらえず卒業しました。不幸中の幸いか、楽観的な私の性格上なぜか不安という感情はなかったものの、すでにデザイナーになるという夢は持ち合わせていたからでしょうか。そんな時期に描いた一枚の絵がこの『Order』でした。私はこの作品を描く前にふと思ったことがありました。人の顔を重ね合わせた時、人間は一つ一つの顔をしっかりと切り分けて判断できるのだろうか。ということです。今まで様々な作品を目にしてきた私は、顔の上に顔が重なっている作品は見たことがありませんでした。もしかしたら見ていたかもしれませんが、記憶に残っていない時点で見てない判定です。そんなよくわからない好奇心から、兎にも角にも人の顔を描いていこうと思いました。そして完成した時面白いことに気づきました。この作品は四方八方に顔が存在しているのですが、どこを隠しても作品として成り立つほど見どころばかりなのです。これも顔なのか…という驚きもあり、天地のない作品だからこその醍醐味がこの作品にはあるのです。しかし私も適当に顔を配置していたわけではないのです。この作品は色紙に描いており、1人1人の顔を描く時、色紙を回しながら描いています。その為、どんな角度から見ても人の顔が主役となり、人間には様々な顔がある。という主張を陰ながら伝えているのです。我々人間は産まれてこの方様々な感情と顔を習得してきました。要は喜怒哀楽に応じた顔色というものです。しかし、どの感情をとっても最後は泣いているのではないでしょうか。人間は嬉しくても泣けるとても感受性豊かな生物です。皆様の目にこの作品がどう映るかは分かりません。しかし、その涙や、顔色をじっくりと見ていただき、イメージを膨らまして欲しいのです。この作品の人間達の前後には何があったのか。どんなことがあるのだろう。そういった物語の“順序”を読み解いても欲しいのです。それは皆様の感性に委ねます。この『Order』という作品の醍醐味なので。これは私からの“注文”です。それではまた。


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