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014|写真の違和感


Abstract line|2021

Title|Abstract line
Date Created | 2021
Art Supplies|銅版画
Size| -

Concept|
人が線を描く時。その線は偶然性をを持ち合わせない。
では必然的に作られた線の上に、偶然的に作られたものがあるとすれば。
どんな表情になるだろうか。

Explanation|
この作品は銅版画で作成した作品です。 銅版画の技法に関しては、「 04|銅版画の感覚 」をご覧ください。
前回卒業後最後の作品というnoteを書きましたが、その前にこの作品を作成していたことが抜けていました。申し訳ありません。
私は勉強のため写真家の本を見ました。様々な白黒写真の作品集だった。
その時見たZが重なったような階段を横から撮った写真に違和感を感じた。その違和感は空間の違和感だった。その時撮った実際の写真があるのでまずは見てもらいたい。

本来写真とは奥行きや色、構図、光など様々な要素で1つの作品となる。その中で重要な要素として、奥行きを出す。ということ。その本を見るまで私は奥行きのない写真は味気なくリアルさを感じない写真になると思っていた。しかし、その写真を見た時その価値観はひっくり返ったのだ。本来階段のような奥行きのあるものは、写真に収める時に必ずと言っていいほど、上からのアングル、もしくは下から覗き込むようなアングルにして、奥行きを出すことがほとんどだと思う。しかし、その写真集に載っていた階段の写真は、Zが積み上がったような階段で、それを横から撮影しており、まるで壁のような写真だったのだ。しかしその壁には斜めに手すりの線が左上がり、右上がりと、織りなすことによって階段ということがわかり、写っている人間がここに階段があるということを代わりに伝えてくれているのだ。まるで現代でいうエスカレーターのような見え方になっている。この写真を見た時、自分の中で、ただ線が交差しているだけで階段という認識ができるのだ。という飛躍した考えをしました。それに伴い、この綺麗なシンメトリーを線で表現できればどれほど美しい作品ができるのだろうという好奇心が出ました。実際に銅版画で綺麗なシンメトリーを作成してみたものの、正直写真を見た時の衝撃は湧きませんでした。何かが足りない。その時私は思いました。この線は私が必然的に描いたもの。要は意味を伝えようとしすぎてよくわからなくなったただの線でしかないことを。その時閃いたのです。ならば上から偶然性をもたせた全く真逆の要素を足してみてはどうだろうかと。そのひらめきは正解でした。必然的に描いたその線に上から抽象的な要素が交わることによって、荒くも繊細な新しい表現ができたからです。自分にとってうまくいくかどうかわからないことでしたが、個人的には大変うまくいった作品となりました。たとえ過去の人間が残した作品だとしても、現代に劣っているわけではありません。その時代にしかない特色ややり方は、逆にいうと今にはないことの方が多いのです。だからこそ本や、写真、絵画、音楽といったカルチャーは廃れず、過去のものが巡ると言われているのです。世の中にはミーハーと呼ばれる新しい物好きの方が一定数いると思います。私はこの文化は悪いことではないと思います。なぜならその人たちが新しい価値観を切り開いていってくれるからです。しかし、実際に新しいものと呼ばれるものが本当に新しいのでしょうか。もしかしたらすでに過去にあったものがたまたま現代で人気になっただけかもしれません。そう言った意味ではまた時代が巡っているのです。時代とはそれの繰り返しです。これを見ていただけている皆様の中で一番新しい情報。最新のものは何でしょうか?Ai?ネットワーク?はたまたモーションキャプチャー?色んな新しいが出てきていますね。これらに関しては科学の発展と、人間の知能の上昇による産物なので過去にはないと思います。しかし、これから10年、20年さらに先の人類にとって今の新しいは過去の産物としてあしらわれるのです。新しいことも大切ですが、そのうち古くなるものに価値を見出すのではなく、過去から今までにあったものの価値をもっと知る必要があると思います。これからの時代はおそらく過去のものに対しての価値と、現代で最も新しい形のものに対しての価値という2つが、大きく経済的に響いてくると思っています。なぜなら今人間ができていることはそのうちAiやロボットができるようになると言われているからです。だからこそこれからは職人のようなスキルを持った人間が重宝されていくのです。それは、画家や、ミュージシャン、デザイナー、建築家、職人。そう言った0から1を産む人間と、1から10を作れる人間2つです。皆様は誰でもできることを仕事にしたいですか?私はそうは思いません。だからこそ、自分の好きなものをとことん突き詰めていく人が増えていくのだと思います。大きな夢じゃなくてもいいですが、なりたい理想は抱いておくといいかもしれません。何かしらの目標があってこそ人生を謳歌できるとお思うので。ただ、思い詰め過ぎも良くないのでたまには息抜きしてくださいね。それではまた。


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