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写真家 西村陽一郎さん

口野理恵

カメラを使わない写真技法であるフォトグラムやスキャングラムを中心とした写真家として活動されている西村陽一郎さんにお話を伺いました。


プロフィール:
出身地:東京
活動地域: 主に東京、神奈川
経歴:美学校Bigakkoで写真を学び、撮影助手を経て独立、フリーランスの写真家となる。カメラを使わない写真技法であるフォトグラムやスキャングラムを中心に、植物や昆虫、鳥の羽、水、ヌードなどをモチーフとした作品を発表している。個展、グループ展多数。
現在の職業および活動:写真家
座右の銘 :生々流転

偶然性との出会いの美しさ

Q:現在の活動について教えてください。

西村陽一郎さん(以下、西村 敬称略):写真家として活動をしています。
仕事を大別すると、学校で教える先生と、作品を作る作家と、依頼された撮影をするカメラマンの3本の柱で、約30年間やっています。
どれも写真なんですけど、内容はそれぞれかなり違うんです。元々は、先生になろうとも、カメラマンにもなろうとも思ってなくて、写真が好きだったので作家の仕事をしていたら、いつの間にかこうなってました(笑)。
というのも、私は病気であまり学校にいけなかったので、自分が今、先生とか講師とか教えるような事をやっていること自体驚いています。でも大変だけどすごくやりがいもあって、本当にご縁だなと感じています。

記者:そうなんですね。色々なご縁があっての今なんですね。どんな作品を制作されているんですか?

西村:これはフォトグラムといって、カメラを使わない写真です。暗室は使いますが、大きなカメラの中で制作するようなもので、感光材料に直接、物の光や影を焼き付けるんです。フォトグラムって「光の絵」という意味なんですが、日焼けの原理で、光のエネルギーによって物質が変化して、光があたると黒くなり、あたらないと白くなる。それと同じ原理です。
写真の基礎の基礎で180年くらい前からある古典技法です。


記者:カメラを使わない写真ってあるんですね!全く知りませんでした。そして素敵な作品ですね!ワクワクします。

西村:ありがとうございます。自分の中にあるものではなく、偶然性に委ねて撮影するのが好きで、そこに美しさを感じるし、そこと出会うのが楽しみなんです。
もちろん、きっかけはこちらが作るんですが、現象に近いものから奥深いものを見せてくれる、感じさせてくれる、そこに惹かれるんですよね。
そしてそれだけじゃなく、その関係性で何かが作られて行くのがとても楽しいんです。

出典元:東京造形大学「UNDERGROUND Lab 地下の色層」2013年 展示風景

写真は出会い。写真を続けているだけで、新しい発見と出会いがある

Q:どのような夢やビジョンをお持ちですか?

西村:写真は出会いなので、一生写真を撮り続けることですかね。
写真を続けているだけで、探さなくても、未知な光や光景や、新しい写真と出会えるし、発見があるんですよ。出会い続けることによって、自分が知らない世界と出会いたいなって思います。
カメラ持ってるだけでも飽きないんですよね。作品が売れればいいけど、それはあんまり夢にしちゃいけないかも(笑)。

あとはプライベートなことで言うと、子供が二人いて二人とも女の子で大学生なんですが、子供の将来はとっても楽しみですね。


Q:その夢やビジョンを実現するために、どんな目標や計画を立てていますか?

西村:基本の生活がとても大事だと思っています。なので、日々の暮らしが大切だし、その暮らしを共にする家族が大事だと思っています。

あとは、ギャラリーの人たちにお世話になっているので、気持ちの上ではできるだけのことをしたいです。何よりギャラリーの方々は、自分の作品を認めてくれている人たちなので、それだけでも心強いですしありがたいです。
そんな今の人間関係を大切にしつつ、コツコツと続けて、少しずつ自分の写真を手に取ってくれる人たちを増やしたいですね。

実は私が個展をやっていた時に会場に来てくださった方が、3年前に私の写真を写真集にしてくださったんです。そしてその方の関係で昨年、一昨年とパリや香港でのアートフェアで発表するという機会を頂きました。自分では予想だにしなかったことで、これも、「人との出会い」だったので、コツコツ続けて来てよかったなって思いました。

記者:人との出会いですごく現実が変化したのですね。

西村:そうですね。その人たちも、何もこの作品が売れるからって作ってくれるんじゃなくて、まず、本当に作品のことを好いてくれて、なんとか他の人にも知ってほしいと思ってやってくれていること、そこに感動しますよね。本当に一人じゃ絶対できないことです。


自分の心が動いた時が大事。それは間違いなく自分の写真になる

Q:その目標や計画に対して、どのような活動指針を持って、どのような基本活動をしていますか?

西村:カメラマンの仕事は、相手の要望に応えることがすごく大事なんですが、作品に関しては、撮りたいものをそのまま撮るんです。
我がままにというか、衝動のままにというか、自分の気持ちに素直に撮るのが大事だと思っていて、そうじゃないといけないと思っています。

記者:その時に大事にしている感覚とかありますか

西村:自分の心が動いた時が大事だと思います。ぞくぞくするというか、その感覚ですか。それは間違いなく自分の写真になります。
その気配っていうんでしょうか。錯覚なんでしょうけど、語りかけてくるものみたいな、囁く声が確実にあるんです。そこに素直に従うことが大事だと思っています。

光と闇は一対。それを欲望のままに手づかみでとってくる。

記者:普段からカメラ持ち歩いてるんですか?

西村:写す写さないに関係なくカメラは持ち歩いていますね。光を写すためには、闇がないとだめなんで、カメラは闇で光との出会いを繋いでくれるものなんです。
写真家は光をとるけど、光だけだと立体はとれないので、光と闇は一対。闇によって光を知れるんです。闇と光、それを欲望のままに手づかみでとってくる、そんな感覚です。

記者:すごく本質的ですね。


Q:その夢やビジョンを持ったきっかけは何ですか?そこにはどのような発見がありましたか?

西村:もともと昆虫が好きだったんですが、姉が山歩きをやっていて一眼レフのカメラを持っていたんです。姉がそのカメラ貸してくれて、身近な蝶々、昆虫など写したのが面白くて、もっともっと上手にいっぱい撮りたいなと思ったのがきっかけだと思います。

それから、自分は体が弱くて、小学校にもあまり行けなかったんですが、14歳の時かな。昆虫愛好会で観察会っていうのがあって、そこには頑張って行ってたんです。そこで知り合った人が、20も年上の方だったのですが、家に泊まりに行ったり仲良くしてくれて。写真館をやっていて、ポートレートを撮ったり、写真に関わる仕事をしている人でした。

それから17歳の時、オオムラサキという日本の国蝶に指定されている蝶の映画に、自分は昆虫集めの担当で参加したんです。山梨の山奥にプレハブをたてて5ヶ月間泊まり込みで。その時に参加していたスタッフに、モノクロ写真の好きな助監督の方が数名いらして、撮影現場でモノクロのスナップをとっていたんですが、その写真がすごく新鮮で、なんともいえずノスタルジックで良かったんです。現場に一緒にいたのに、モノクロの写真は明らかに違う時間が映し出されていました。

記者:多感な子供の頃から、写真や映像に関わる多くの方々との出会いがあって、そして今に繋がってらっしゃるんですね。それこそ、体が弱かったとおっしゃられていましたが、逆にそれがないと今の西村さんがないのでは。。。

西村:そうですね。子供の頃、小児喘息で小学校に行けなかったんです。元気な時は元気なのですが、発作が起こると息ができなくて、苦しくて。実際、学校に行きたくないわけではないのに行けない。なんで自分ばっかりこんなに苦しまなきゃいけないんだろうって、葛藤や孤独がありました。そんな中で、自分が好きな昆虫、写真やそれに携わる人達との出会いがとても楽しかったのと、そんな出会いを母や姉も応援してくれたなと、今考えれば思うんです。
私は末っ子長男で、姉が2人いて7つと9つ上だったので、とても可愛がられました。今でも、個展をすると姉や両親も来てくれるし、楽しみにしてくれています。

記者:素敵なご家族だったんですね!


Q:最後に読者の方にメッセージをお願いします。

西村:身の回りのものから家族でも人でも写してみてほしいと思います。写真に撮ることで、知ってるようで知らなかったというような発見があると思うから。そして写真は撮りっぱなしではなく、1枚の紙にプリントしてみてください。紙にすると、その中から見えてくるものがあるから。光が形になることや、時間のかけがえのなさ、自分のものとして感じられるといった、そんな未知との出会いを楽しんで欲しいなと思います。

記者:西村さん、今日は素敵なお話ありがとうございました。

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西村さんの詳細情報はこちら↓↓↓

西村陽一郎さんのホームページ

西村陽一郎さんのFacebook

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編集後記

今回インタビューの記者を担当した口野、戸来、平野です。
「何年たっても同じような事やってるんですよ!」とご自身の作品を見ながら嬉しそうに語る西村さんは、本当に写真が大好きで、心から楽しんでらっしゃる方なんだと感じました。沢山の素晴らしい作品と、沢山の本質に迫る話にゾクゾクしました。
西村さん、本当に素敵なお話ありがとうございました。

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この記事は、リライズ・ニュースマガジン”美しい時代を創る人達”にも掲載されています。



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