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薬剤師が教える5分でわかる更年期障害の治し方

はじめに

本書を手にとって頂き誠にありがとうございます。
40歳を境目に「イライラして子供や旦那にあたってしまう」「少し動くと汗だくになってしまうので家から出たくない」「肩こり・腰痛がひどくなってきた」などお悩みな方多いのではないでしょうか?
これ全部更年期障害のせいです。この本を手に取っていただいた方々のせいではありません。そんな辛い経験をしている更年期世代の人々の悩みを少しでも改善したいと思いこの本を執筆いたしました。
今回は基本的な対策方法をたったの5分間でわかりやすく簡単にまとめさせていただきました。
本書が症状の改善の手がかりになる事を願っております。

・自己紹介
久保木彰一
昭和薬科大学卒業 薬剤師免許取得
北京中医薬大学日本校卒業 国際中医薬膳師免許習得
大手ドラッグストア勤務後調剤薬局に勤務、現在は製薬会社で商品開発やお客様への情報発信を中心に活動中。
在学中に調理師免許を取得していることもあり休日は家族に料理を振る舞い、美味しそうに食べている姿を見るのが楽しみの一つです。

1章 更年期障害とは

・原因
更年期障害の原因はズバリ、女性ホルモンの一種、エストロゲンの低下です。エストロゲンは30代をピークに卵巣の働きが衰えることで40代後半より急激に分泌量が低下します。エストロゲンが低下する事でいままでエストロゲンの働きでバランスを整えていた体の機能が乱れさまざまな症状が引き起こされます。また、エストロゲンが低下すると脳は卵巣に対して、もっと女性ホルモンを出すようにシグナルを送ります。しかし低下した卵巣に対してはそのシグナルが届かずに脳内が混乱してしまうことが自律神経の乱れを引き起こすのです。更年期障害を治すにはこのエストロゲンの働きを知り、低下しているエストロゲンの量を増やす事が必要です。

・症状
更年期症状は年齢によって出現しやすい症状が異なります。
40代〜55歳 月経異常、のぼせ、発汗、動悸、めまい、浮遊感、関節炎、
55歳〜60代 疲労感、不眠、不安感、憂鬱、物忘れ、尿失禁
60代〜 骨粗鬆症

2章 エストロゲンの働き


エストロゲンの働きを紹介させていただきます。どの働きも女性が生活していくために必要な機能を担っていたことがわかるはずです。この機能が低下する更年期障害はやはりやっかいものであることがわかります。

・女性らしいカラダを作る
・肌の潤いやハリを保つ(コラーゲン生成を助ける)
・血管を強くしなやかにして動脈硬化を防ぐ
・骨密度を保つ
・髪をツヤツヤにする
・物忘れを予防する
・善玉コレステロールを増やし、悪玉を減らす。

3章 更年期の治し方


この章では更年期障害の治し方についていくつか紹介させていただきます。それぞれメリット、デメリットがございますので、自分自身にあった治し方を実践して下さい。


・ホルモン療法

病院へ通院して治す方法の代表例がホルモン療法です。
ホルモン療法は飲み薬、貼り薬(貼付剤)、塗り薬(ジェル)などさまざまな剤形があり、健康保険が適用されています。
ホルモン補充療法によって期待できる効果は以下になります。


<ホルモン療法に期待される効果>
・ホットフラッシュ(のぼせ、ほてり、多汗)を和らげる
・抑うつ気分、または抑うつ症状を改善する。
・骨を破壊する細胞(破骨細胞)の生成を抑えて骨密度を増加させる。
・皮膚のコラーゲンやエラスチンを増やし、肌の張りや潤いを保つ。
・膣粘膜の乾燥を防ぎ、性交痛を改善する。
・抗酸化作用がある。
・血管壁を柔軟にして、心臓血管系疾患のリスクを下げる。
・糖・脂質代謝によい影響を与える。
・過活動膀胱の症状を和らげる。
・認知症リスクを抑える可能性がある。
・顎骨(あごの骨)の骨密度を増加させる。
・ひざやひじ、指の関節などの軟骨の代謝にもよい影響を与える。
・大腸がんのリスクを下げる。
(参考:「ホルモン補充療法ガイドライン」編集/監修 日本産科婦人科学会・日本女性医学学会)


ホルモン療法は多岐にわたる効果が認められている他、医師の監視下で治療していくので安心感があります。しかしホルモン療法は乳がん、子宮がん、血栓症の治療薬を処方されている人、または脳卒中や心筋梗塞を起こしたことのある人などは使用できません。また胃のむかむか、胸の張り、おなかの張り、おりものの増加などの違和感を感じることがあるので、継続で使用できない人も少なくありません。ホルモン補充療法を検討される際は是非医師と相談して決める事をお勧めいたします。

・漢方薬

漢方薬は医師の診察のもと処方されて服用することが多かったですが、セルフメディケーションが浸透してきている現在、市販薬としても容易に購入できるようになってきました。しかし漢方薬は種類が多く選ぶのが難しいと思われる方も多いでしょう。更年期女性に良く処方される漢方薬は3つあります。当帰芍薬散・加味逍遥散・桂枝茯苓丸これらの漢方薬を婦人科三大処方と呼びます。今回はこの三大処方を症状別に紹介させていただきます。


【当帰芍薬散】
とにかく疲れが溜まっていてフラフラしている人や更年期症状の中でもむくみや冷えが特に気になる方にお勧めです。精神症状よりも身体症状が辛い方は服用しましょう。
【加味逍遥散】
ホットフラッシュや不眠、イライラなどの自律神経の乱れによる更年期症状が強くでる方にお勧めです。身体症状に比べ精神症状が辛い場合は服用しましょう。
【桂枝茯苓丸】
ホットフラッシュなどののぼせ感があるにも関わらず、手足の末端は冷えている方にお勧めです。精神症状と身体症状どちらも悩んでいる人は服用しましょう。

漢方薬は副作用が少ない事から自分自身で始めるのには良いでしょう。しかし自分の「証」を把握していないと効率的な治療には繋がりません。また効果を実感するまでに1〜2ヶ月かかる事が考えれれますので、費用面での負担もあるでしょう。しっかりと症状を治したい方はホルモン療法同様一度受診をお勧めいたします。

・サプリメント

セルフメディケーションでもっとも手軽に始めれる事から、私の一番のお勧めはサプリメント療法です。いくつか更年期障害の軽減に効果が期待される原料と有効性が期待できない原料を紹介いたします。

「大豆イソフラボン」
大豆は食品として、またサプリメントとして更年期の症状緩和に用いられてきました。高濃度のフィトエストロゲン(ダイゼイン、ゲニステイン)が含まれており、エストロゲン作用を示すものと考えられています。心血管系には良い影響を与え、骨代謝も改善が期待できるとされています。疑似エストロゲンを補い、症状を軽減したい方のファーストチョイスになる原料です。

こんな症状をお持ちの方にお勧め
○コレステロール値が気になる方
○更年期障害でお悩みの方
○集中力や記憶力を向上させたい方
○骨粗しょう症を予防したい方

「大豆イソフラボン代謝物/エクオール」
大豆イソフラボンの一種であるダイゼインから腸内細菌によってつくられる活性代謝物「エクオール」を10㎎/日摂取により、ほてりや肩こり等の更年期症状、骨、メタボリック・シンドロームおよび肌の老化に対する効果が認められています。しかしエクオールは化学合成により生成される原料なので効果が高い反面、中止後の離脱症状が心配する声もあります。

こんな症状がある方にお勧め
○コレステロール値が気になる方
○更年期障害でお悩みの方
○集中力や記憶力を向上させたい方
○骨粗しょう症を予防したい方

「レッドクローバー」
レッドクローバーはヨーロッパおよびアジア原産の豆科の植物で、大豆と同様に、ゲニステインやダイゼインなどイソフラボンを含有しています。大豆と同様に更年期の症状緩和や骨量低下予防目的で使用されており、安全性も高いとされています。

こんな症状があるか方にお勧め
○更年期障害でお悩みの方
○美肌を目指したい方
○骨粗しょう症を予防したい方
○コレステロール値が気になる方
○のどの炎症を予防したい方

「ブラックコホシュ」、「ザクロ」も有名ですが、有効性が確立していたないためお勧めできません。また「ロイヤルゼリー」は、「女性ホルモンの働きを助け、糖代謝を改善する」「体質を改善し若返る」などと謳われ日本では人気があります。一方で各種アレルギー反応が起こる可能性があり、注意が必要です。

4章 生活週間を改善しよう

・毎日30分間日光を浴びてお散歩しましょう。

幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの分泌を促します。また夜になるとセロトニンはメラトニンに変わり睡眠をサポートします。イライラしたり、眠れない方はお勧めです。適度なお散歩の更年期障害への有効性は日本生活習慣病予防協会で認めれれています。

・ホットフラッシュを軽減させるツボ

三陰交(さんいんこう)
内くるぶしの最も高い位置から、指4本分上に上がったところの骨と筋肉の境目にあるツボです。
中指で10〜20回左右に押し動かすことで刺激され、ほてりをはじめとする更年期障害の症状がやわらぎます。
神門(しんもん)
手首の横線の小指側、少しくぼんだところにあるツボです。
精神的な緊張をほぐし、イライラした気分をやわらげるツボとして有名ですが、ほてりやのぼせを鎮める効果があります。
片方の手の親指で押しながら、手首を左右に動かして刺激してみましょう。

・更年期障害の方へおすすめなビタミンを食材から取ろう!

おすすめなビタミンはビタミンB1、ビタミンEになります。
ビタミンB群のなかで特にビタミンB1は更年期障害に良い働きをします。ビタミンB1は脳や神経のエネルギー源である糖質の分解を助け、全身の新陳代謝を高めます。また、手足の末梢の血管を広げ血液の流れを良くする働きもあり、更年期のイライラや不安を鎮めるのに効果的です。ビタミンB1が多く含まれる食品には、豚肉(ヒレ、もも)、玄米などがあります。ビタミンEにはホルモンの分泌を整えて老化を防ぐ作用があります。ホルモンバランスの乱れによって生じるのぼせや顔の火照り、発汗、イライラなどの精神不調などの症状を緩和させる作用があります。また血行を良くする働きもあり、頭痛、肩こり、冷え性などにも有効です。ビタミンEが多く含まれる食品には、かぼちゃ、赤ピーマン、アーモンドなどがあります。