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輪廻の風 第3章

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2022年5月の記事一覧

輪廻の風 3-27

偶然か必然か、ヴェルヴァルト大王に投げ飛ばされたエンディの落下地点は、エンディがラーミアと邂逅を果たしたあの海辺だった。

しかし、エンディを投げ飛ばした当の本人であるヴェルヴァルト大王は、エンディとラーミアが初めて出会った場所の事など知る由もない為、これは偶然の他ならないだろう。

だが、たとえ必然ではなかったにせよ、運命の悪戯と呼ぶに相応しい出来事であることに相違はなかった。

エンディは落下

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輪廻の風 3-26

冥花軍(ノワールアルメ)筆頭戦力のラメ・シュピールは、10代前半のあどけない顔をしたヤンチャ盛りの少年の様な風貌をしていた。

鼻の下まで伸びた長い前髪を七三分けにしており、右目は前髪が被さって隠れている。
そして首には黄色の花が刻まれていた。

彼は自身の能力を駆使し、王都ディルゼン跡地に黒色の大理石を基調としたドーム状の巨大な城を築き上げた。

バレラルク王国が魔族の手に落ちてからものの数分も

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輪廻の風 3-25

ヴェルヴァルト大王は悍ましい顔つきでラーミアを見下ろしていた。

「ラーミア、お前の輪廻転生はこれにて果てる。2度と生まれ変われんよう、魂そのものを滅してくれる。」
ヴェルヴァルト大王が言った。

ラーミアは恐怖のあまり身体が硬直し、身動きが取れなくなってしまっていた。

すると、ロゼとバレンティノ、ノヴァとラベスタがラーミアを護るようにして前へと出た。

それに続くように、エラルドとアベルはヴェ

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輪廻の風 3-24

「うおーーー!!」
エンディは溢れんばかり戦闘意欲を抑えきれず、大声を張り上げながらヴェルヴァルト大王に向かって空を駆け昇った。

しかし、ヴェルヴァルト大王に近づいていくにつれ、重圧に押し潰されては心が折れそうになっている自分にも気がついていた。

それを必死に誤魔化そうとしていた意味合いでも、声を荒げていたのだ。

エンディはヴェルヴァルト大王の顎を渾身の力で殴った。

そして両手の拳にありっ

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輪廻の風 3-23

王都に残った戦士達は絶望感に苛まれ、呆然と立ち尽くして空を見上げていた。

「う、うわあぁぁぁっ!!」
「に、逃げろぉ!!」

「ははっ…逃げる場所なんてねえよ…。」
「もう無理だ…どうにもならねえよ…。」

恐れをなして逃げ惑う戦士達は少なく、その過半数以上は潔く命を諦め、逃れようのない死という運命を受け入れ、為す術も無く立っているだけであった。

しかし、エンディとカインならば何とかしてくれる

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輪廻の風 3-22

ヴェルヴァルト大王。
それは魔族の始祖にして、魔族の長。
破壊神、魔神、大魔王、魔帝…多種の通り名を持つ絶対無敵にして究極の生命体。

彼が何処でどの様にして出生し、何処から現れたのか、それは神のみぞ知る永遠の謎である。

500年前の天生士(オンジュソルダ)と冥花軍(ノワールアルメ)の大決戦は、世界を破滅させかねない程の凄まじさだった。

初代天生士達は、神に仕える神官とは名ばかりの殺伐とした集

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輪廻の風 3-21

イヴァンカとルキフェル閣下は、早速剣を交えていた。

両者は本来の力の半分も出さず、まるで互いの手の内を探っている様だった。

ガキン、ガキンと、何度も太刀音を轟かせては火花を散らせる攻防戦。

エンディはそんな様子をじれったく思い、プルプルと小刻みに体を奮わせていた。

そして「隙ありーー!!」と叫び、イヴァンカとルキフェル閣下に向かって巨大なカマイタチを放出した。

2人はそれを軽々と躱して、

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輪廻の風 3-20

復活を遂げたイヴァンカは、瓦礫の山の上に悠然と立ち尽くしていた。

封印されていた2年間の間に髪の毛が腰の下まで伸びており、前髪を後ろへ流し額を露出させていた。

かつて着用していた純白の羽衣のような衣装はボロボロにはだけ、上半身が裸の状態だった。

その立ち姿は、2年間も封印されていたとは到底思えないほどに小綺麗な身なりをしており、神々しくすら見えた。

「ちくしょう‥なんてことだ…!」
ノヴァ

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輪廻の風 3-19

王宮の3階フロアに、"宝物殿"と呼ばれる部屋がある。

約2万平方メートル程の面積を誇る宝物殿は、王宮内で最も広い空間だ。

そこには建国から500年を経たバレラルク王国の歴史的遺産や文化財が主に納められている。

数百年前に国土を防衛していた兵隊達が身につけていた鎧や、使用していた剣や槍等の武器類、また当時名を馳せていた画伯によって描かれた美しい絵画や風刺画、名だたる芸術家によって造られた工芸品

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輪廻の風 3-18

「おっとぉ〜、てめえらは…エンディちゃんにカインちゃんじゃねぇかよぉ!!」
ジェイドは2人を見るや否や、異常にハイテンションになり、地上へと急降下した。

ジェイドとほぼ同時にルキフェル閣下も庭園内へと華麗に着地した。

「ジェイドさん、今私ごと王宮を消し去ろうとしましたね?」ルキフェル閣下はクスリと笑いながら冗談まじりに言った。

「ヒャヒャ、閣下〜ご冗談を!俺の放つ黒炎程度で、閣下が火傷するわ

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