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「介護事業所の倒産件数の増加」に関する報道の仕方は、少し視野が狭いと思う

介護事業所の倒産件数が過去最高という記事を見かけるが、統計などを見ていて思うことがある。

それは、介助事業所の「倒産件数の増加」ばかり報道されていることだ。

確かに倒産の原因として、慢性的な人手不足や低賃金問題、新型コロナウイルスによる利用者受け入れの困難性が挙げられる。しかし、これはどの業界でも同じ話である。

そこで、もっと別な要因も検討したほうが良いのではと思い、介護事業所の倒産に関して色々な記事を眺めていた。そしてふと「介護保険制度が始まった2000年から~」という文言が目に留まった。

今年は2024年なので、介護保険制度が始まってからかれこれ20年以上が経っていることになる。これは算数の引き算ができれば小学生だって分かる。

となると、介護保険制度ができた2000年から介護事業を始めた企業・事業所も、同じくらいの20年以上の事業年数を経ていることになる。
介護保険制度ができる以前より介護事業を営んでいた事業所だと、30年以上の事業年数もあるかもしれない。

――― 何が言いたいのかと言うと、20年以上も事業を続けているとしたら、経営方針として廃業を決断することもあるのでは? という話だ。

実際、記事の一部に「経営者が高齢だが後継者がいない」といった文言も見られる。可能性の1つとして、介護保険制度ができてから事業継続してきたが、経営者も20年以上経って年をとり後継者もいないので廃業すると決めたことだって考えられる。

また、未熟ながら経営に携わっている身として感じるのは、事業を発展させることも難しいが、事業を維持することも同じくらい難しいということだ。

そもそも、介護サービスは社会的ニーズが高く、コロナウイルスのまん延時にもエッセンシャルワークと言われていたが、ニーズが高いこととビジネスとして成功するかは話が違う。
「ニーズの高さ=成功」ならば誰もが介護ビジネスに手を出すだろう。しかし、そうでないと知っているからこそ撤退する事業所もあるのだ。

このように考えていくと、「介護保険制度が始まった2000年から~」という文言を報道に盛り込むならば、人手不足やここ数年の社会問題だけに倒産の要因をスポットかするのでなく、介護事業の起点に立ち返った考察をすべきではないか? と思う。

事業を維持するということの困難性に加えて、人材不足やコロナウイルスといった社会問題が加わったから倒産につながった、という流れの報道の仕方ならば納得できるというものだ。少し深掘りしてみると面白いと思う。

――― ついでにもう1つ、介護事業所の倒産件数の報道に疑問を述べる。

介護事業所の倒産件数ばかりが話題に出ているが、介護事業所の新規立ち上げや介護施設の新規オープンに関する話はあまり目にしない。

倒産件数が上がっているのは分かるが、同じくらいとはいかなくとも介護事業所や介護施設だって少なからず新規立ち上げはある。

それはビジネスとしての側面もそうだが、地域の高齢者を支えたい、介護業界を何とかしたいという熱意ある介護者が立ち上げる事実に注目して報道して欲しい。

また、介護職の人手不足は問題と言われているが、新しい介護事業所や施設ができるとそれなりに職員が集まるという話も聞く。それは新しい設備や環境、まだグループができていない人間関係、自身のキャリア構築などを期待してのことらしい。

もちろん、新規事業には社会的な信頼がないため多くの障害はあるのは当然だろうが、何も倒産してばかりで介護の担い手が一気に減っているわけではないことは是正したほうが良いと思う。


――― ネガティブな報道をしたほうが注目を集めやすいので偏った情報になってしまうのであろうが、超高齢化社会や介護の担い手不足などの問題を国民全体で考えるのであれば、広い視点の報道をしたほうが建設的ではなかろうか?


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。








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