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人手不足ならばこそ、「別にやらなくていいこと」をやめて業務負担を軽くする

各業界どこも人手不足が深刻である。私が身を置く介護業界も、既知のとおり人手不足と言われている。

ようやくシフトを作っても、体調不良などの急な欠員が出たり、やむを得ない事情で退職することだって日常茶飯事である。

そんな人員不足な日々に対応していることもありつつ、ふと「そもそも人手不足の何が問題なのか?」と疑問を抱いた。

そして、その疑問に対して次のような要素があると思った。

① 1人あたりの業務負担が大きくなる。

② 1人あたりの生産性が乏しくなる。

③ 上記①②が続くと、事業発展どころか現状維持すらままならなくなる。

④ 上記①~③が各職場・各業界で起こると社会経済が発展しない。

上記は広義の見方であって細かく見れば問題は多岐に渡る。例えば、1人あたりの業務負担が大きいと個々のウェルビーイングにも影響するし、業界や社会経済が発展しないことは国力の低下を意味する。

「仕事でやりがいを得よう」なんて考える余裕もなくなってしまう。それどころか「今日も仕事だ・・・」「しんどい」「辞めよう」「辞められない」というメンタル不調も招く。

そして人手不足の状態で急に休むスタッフや退職者が出ると、事態は余計に悪化する。また誰かの業務負担が増えたり、プライベートが削られる。

こんな負のスパイラルこそ、目に見える人手不足の問題なのだろう。




以上は、介護事業を営んでいても日々感じていることである。

しかし、上記のような要素を鑑みると、1人あたりの業務負担が大きいというところを起点に考えることで、問題は解消まではいかずとも幾分かは軽減できるのではないかと思う。

実際、私は事業運営として日々細かく業務負担の軽減を推進している。

介護記録のあり方、排泄介助の手技の見直し、消耗品の選定・・・1つ1つは小さいけれど、小さい見直しの積み上げは重要である。

それぞれのテーマに対して担当スタッフに話を聞く。

「なぜ、この記録を残しているの?」
「なぜ、この手順をやっているの?」
「なぜ、この消耗品を使い続けているの?」

と、現在行っている業務の背景を「なぜ?」と問いただす。

聞かれたほうはきっと面倒だと思っているに違いない。しかし、「なぜ?」を聞くと大抵の場合は「このように教わったから」「今までこの手順でやってきたから」という理由になっていない回答が多い。

つまり、当事者たちも「なぜ?」が分からないまま、業務を機械的にルーティンワークとしてこなしているのだ。

中には、今は別にやらなくてもいいことや、二重三重に同じことをやっていたり、前任者の不適切なマイルールを継承されているなど、頭を抱えることもある。

まぁ、だからこそ是正すれば業務負担は軽くなると期待する。



しかし、いざ「この業務は今後やらなくていいですよ」と言ったところで、「やった、業務が楽になる!」と喜ぶスタッフは少ない。

それどころか「え・・・いいんですか?」と困惑の表情を浮かべたり、「自分は今のままでいいと思うんですが」と眉をしかめる反応もある。

前者は、今までやってきたことをやらなくなると、何か悪いことが起きるのではないかと不安だったり、「誰か」に怒られるのではないかと思う様子が伺える。なお、その「誰か」は当人も定まっていない。

後者は「今のままでいい」のではなく、現在やっていることをやらなくなるという「変化」が恐いだけだと思う。

業務負担が軽くなるというメリットだけでは、現行でそれをやっているスタッフは動かない。

このような反応は改善のたびに見てきた反応なので、まずはソフトランディング的にスタートしてみて、とりあえず問題があったら随時修正したり、仮に本当に以前のままのほうが良いならば体制を戻すだけである。

実際、このような改善は最初は納得されないものの、稼働して見れば大体は慣れるもの。そのため、後で「前の業務をやらなくなって問題ある?」と確認すると「いや、別に」ということが多い。

そこに至るためには、やはり事前にスタッフに聞き取りするなどのコミュニケーションや改善をスタートする前の説明をすることは必須だと思う。




このような業務改善を繰り返しているうちに思ったことは、各業界で人手不足と感じるのは「現状の業務体制を維持しようとするから」ではないか?ということだ。

例えば、1日1人あたり10個の担当業務があったとする。
普段はそれを6人で担当している(10個 ✕ 6人 = 60個)

しかし、ある日1人のスタッフが急に体調不良で休んだ。
そこで、休んだスタッフ分を残りの5人で割り振る。
ここでは単純に5人で分けるとする(10個÷5人=2個/人)。
その結果、その日は5人それぞれが12個の業務となる(10個+2個)。

文章にすると非常に分かりにくいが、何が言いたいのかと言うと、いつもの業務体制を維持するとすると1人あたりの業務負担が増える、というだけの話だ。

しかし、ここで次のようなことを考えてみてはどうだろう?

「休んだスタッフ分の業務は、本当にやらなければいけないのか?」
「10個の業務のうち、今日やらなくても問題ない業務はないか?」

 
――― 私たちは、今日やることは必ずやらなければいけないという思い込みがある。もちろん、成果や期限を守ることは大切である。

しかし、何としてでも必ずやらなければいけない業務というのは限られている。現状の業務体制を維持すること自体に、仕事としての価値はそこまでないのだ。

そのことに気づくことが業務負担軽減のための機会であり、引いては人手不足の解消の鍵ではないかと思う。



今やっていることをやめるというのは簡単だが、それに抵抗を感じる人は多いと思う。正直言えば、業務改善をしてこのような記事を書いている私だって同じである。

今やっている業務を見直すことだって、人手不足解消の一環であることは誰もが分かっている。それでも抵抗があるのだ。

しかし、人手不足であるという現実は変わらない。労働者人口は減っているどころか、そもそも日本の人口そのもの目減りしている。

大きな変化を強制するつもりはない。
ただ「別にやらなくていいこと」を1つ1つやめていくだけでいい。

最初は「自分がやってきた仕事なのに・・・」と面白くないかもしれない。プライドが傷つけられるかもしれない。

しかし、それは一時的なことだ。しばらくすれば「ああ、そういえば去年まではそんな業務もあったね」くらいになる。それどころか「思い返してみれば無駄ななことしてた。なんであんな業務にこだわってたんだろう」と笑い話になることだってある。

業務負担を感じているならば、人手が足りなくてしんどいと思うなら、是非「別にやらなくていいこと」を見つけて、本当に価値ある仕事に注力することをお勧めする。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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