本気のシュトレンの作り方、あるいはスタートアップにおけるコンプライアンスのマインドセット
この記事は「Funds Advent Calendar 2023」23日目の記事です。
ファンズ株式会社という、貸付型のファンドへの投資勧誘をインターネットで行う金融系スタートアップの会社が僕の勤め先。
僕がそこでコンプライアンスを担当してそろそろ1年8ヶ月が経過しようとしています。
今日はそんな僕の趣味のお菓子作りシュトレン作りと会社での業務を簡単に紹介します。
趣味のシュトレン作り
そろそろクリスマスですね。
キリスト教ではクリスマスまでの約4週間を待降節(アドベント)といいます。
この待降節の間、主の降誕を待ち望みながら毎日開いていくのがアドベント・カレンダーで、最近だとカルディやPLAZA、輸入食料品店などに入るとたくさんの種類が置いてありますね。
Funds Advent Calendar 2023という企画はこんなアドベントカレンダーというカルチャーに準えたもの。
さて、待降節の間、ドイツではシュトレンという菓子パンを用意して少しずつスライスして食べていくのだそうです。
このシュトレンというもの、ドライフルーツの洋酒漬けやナッツ、たくさんのスパイスが入っていてとても複雑な味わいとなるので僕は大好きです。
市販のものも食べるのですが、結婚する前から妻が作ってくれていた分を合わせれば、10年近くにわたってクリスマスの時期になると我が家には手作りのシュトレンが用意されていました。
紆余曲折を経てこの3年ほどは僕が作っています。
シュトレンのレシピ(材料と作り方)
今回はこんな感じで材料を用意しました。
※大きいの6本、小さいの6本分のエグい量になるのでお試しになる方はご注意ください。
工程1.ドライフルーツの洋酒漬け
まずは10月の終わり頃に、ドライフルーツを買い込んで洋酒に漬けました。
洋酒に漬ける期間は最低でも3週間程度と聞いていて、11月の第4週にシュトレンを焼こうと思っていたので、逆算してこの時期までに着手しています。
市販のドライフルーツはボロボロになったりしないように油でコーティングされていることが多いです。
なので、お湯を回し入れてコーティングを落とし、それから洋酒に漬けています。
洋酒の種類はレシピで指定されていなかったので、クランベリーやミックスドライフルーツはブランデー、レーズンはラムに漬けました。
あと、洋酒とスパイスの風味はシュトレンのポイントだと思っているので、洋酒に漬ける際もスパイスを加えています。
工程2.マジパン作り
マジパン、正確にはマジパンローマッセというアーモンドプードル(パウダー)と砂糖を2対1の割合で練ったものが、マジパン入りのシュトレンの生地の真ん中に埋め込まれます。
アーモンドプードルで作成されるのでもちろんアーモンドの香りがするのですが、洋酒とスパイスの風味はシュトレンのポイントだと思っているので、マジパンを練るときもお好みでスパイスを加え、水の代わりに洋酒を使っています。
結果的にこれがパンの部分をかなりしっとりさせる要因になってくれました。大成功。
工程3.中種作りと生地の練込み、焼き、そしてコーティング
中種を捏ねて1時間ほど発酵させた後に生地を捏ねます。細々とした工程は僕のInstagramのリールを見ていただいた方がわかるかも。
上記のとおりものすごい量を用意してしまったため、かなり大きなボウルが必要になりました。直径26cm・深さ14cmくらいのボウルを新調しました。
ちなみに生地を練るときは一緒にスパイスを練り込みます。
洋酒とスパイス(…(中略)…)ので、ふんだんにお好みの量のスパイスを入れました。
それから、ローストしたナッツや洋酒に漬けたドライフルーツも練り込みます。
「、、、やるんじゃなかった」
毎年シュトレンを手作りをするたび、このタイミングで必ずそう思います。
ナッツは生地からの離脱を試みるしドライフルーツも全然いうことをきかない。
イヤイヤ期の二歳児かよ。
それでも闘い抜いて練り込んだ生地はそれぞれの分量に分けて(今回は大きいものを6本、小さいもの(大きいのの3分の1)を6本)、麺棒で伸ばしてマジパンを挟み込み、形を凸型に整えて焼きます。210度に熱したオーブンで、大きいものは35〜40分、小さいものは20分程度です。
何本か焼いた途中で気がついたのだけど、オーブンに入れてからアルミホイルを上からかけておくと表面が焦げ付かずに焼き上がるみたい。
これは来年に向けた学びでした。
焼いた後は溶かしバターと砂糖で2〜3回ほどコーティングします。
すごい量のバターと砂糖が必要になります。
「、、、マジでやるんじゃなかった」
毎年シュトレンを手作りするたび、このタイミングでも必ずそう思います。
とにかく時間がかかるし手がバターと砂糖でベタベタになるし作業スペースが散らかる。
しかもこの大量のバターと砂糖。カロリーがエグい。
シュトレンは焼き上げてコーティングしてから1〜2週間は熟成期間です。
この間にスパイスと洋酒がジワーッとパン生地の部分に広がるのだそう。
洋酒とスパ(…(中略)…)のですが、しっとりとした生地から洋酒とスパイス、そしてドライフルーツやマジパンの風味がじわっと広がってくれたら大成功。
ここからは自分たちのペースでスライスして食します。
ちなみに、真ん中あたりでカットし、食べる都度5〜6ミリ程度にスライスして、切り目同士をくっつけて全体をラップに包んでおくと、生地のしっとり感や風味が長続きします。むしろ熟成?
気付き
実は前回と前々回はレシピから離れていくつか適当に済ませてしまったことがあります。
マジパンを練るときに黒糖を使った
→見た目が悪くなったドライフルーツのコーティング(油)をとらずに洋酒に漬けた
→洋酒が大して染み込んでいなかったレシピの量よりもずっとたくさんのナッツとドライフルーツを突っ込んだ
→つなぎが足りなくて崩壊しやすくなった
レシピ、大切です。
ちゃんと読み込んで、手順を守る必要があります。
一方で、次のような部分は実はこの3年で随分と創意工夫を凝らしています。
クランベリーにはブランデー、レーズンにはラムといったドライフルーツと洋酒の組合せ
形を凸型に整えるときの流れ
焼き上がって凸凹になった表面の整え方
バターと砂糖でコーティングをするときの傾け方や包み方
また、毎年「これは良かった!」という発見や「これ良さそう」といった新情報もあり、レシピをアップデートしています。
スパイスの量は思っているより多めでOK(香りは簡単にトぶ)
ナッツはローストすると香ばしくなる
焼き上げるときにアルミホイルをかけるとドライフルーツが焦げ焦げにならない
最後のコーティングは途中までは細かい砂糖で良くて、粉糖は最後でOK
そうこうしているうちに、過去イチ美味しいシュトレンができあがりました僕なりの美味しいシュトレンのレシピが確立しつつあります。
僕の業務
さて、僕が会社でどんなことをしているか紹介します。
コンプライアンスって何だっけ?
そこそこ社会的に浸透していると思っていますが、一般的には法令遵守と言われるのがコンプライアンスというものです。
銀行や証券会社、保険会社など、金融機関と言われる業態では「法令」だけを遵守していれば良いわけではなく、監督指針や金融庁の定めるガイドライン、FAQ、それに自主規制機関の定める諸規則やガイドライン、FAQなども意識しなくてはなりませんし、法令の根底に流れる原理原則にも注意をしていく必要があります。
証券会社等の金融商品取引業者の場合、事務年度毎に公表される「証券モニタリング基本方針」なども重要ですね。
(こういった法令や原理原則ってものは、シュトレンを作る際のレシピと同様に重要です。しっかりとまもっていかないと簡単に破綻します。)
コンプライアンスって何しているんだっけ?
抽象的なところでは内部管理態勢の構築だの維持だのと言われます。
会社が業務をするにあたってコンプライアンスがワークするような仕組みを整えるのですが、これがまた本当に抽象的ですね。
少し具体的な業務でいうと、たとえば次のようなものがあります。
(スタートアップということもあり、人的なリソースにも限りがあるので、僕は必然的にたくさんの業務に携わっています。ありがたい。)
帳簿が現行の法令に則って作成されているか、個々の業務が法令の要請に沿って行われているかといったチェック(ギャップ分析とか言うこともあります。)
個々の業務に関するコンプライアンス上の留意事項をまとめたコンプライアンス・マニュアルの作成
コンプライアンス上のイシューに関する研修の企画と実施
広告物や勧誘資料等の法令等適合性の審査
、、、ほらカタそう。
(でも今っぽいモノとしてはちょうど現在進行系で社内の生成AI使用に関するガイドライン策定なんかも進めています。ちなみにこの記事のキービジュアルも生成AIに作成してもらいました。)
そしてこれらの個々の業務の裏側には法令等や原理原則といったものが横たわっています。業務マニュアルやチェックリストなんてものを作っているとそのとおりに業務を進めていく必要もあります。
お菓子作りをレシピ通りに進めていくのと同じですね。
金融スタートアップにおけるコンプライアンス担当者としてのマインドセット(僕のケース)
法令等に適合しているか、コンプライアンス上の問題はないか、、、といったことを常々意識するので、カタそうという先入観を持たれることも致し方ないと思っています。
しかも金融とはいえスタートアップ。
非金融出身の方々もたくさん従事しています。
非金融業界出身の方々にカタいことばかりお伝えしていてもきっとツラい。コンプラ疲れを起こしてしまう。
業界の過去(昨年僕が書いた記事を参照)のことを振り返ると、特にこの業態にいる僕らには、ルールをルールとして守っていただくという固い決意も必要なのですが、とはいえコンプラ疲れなんてことは望んでいません。
だったらコンプラ疲れを起こさずにレシピに沿った美味しいシュトレンができるように創意工夫を凝らしたら良い。
大好きなシュトレンづくりと金融スタートアップのコンプラには実は共通項がたくさんあります。
How-toをとても大切にしなければならない一方で、美味しくつくるためには創意工夫が欠かせないのです。
というわけでつい先日も研修をしました。
内容はマネロン対策。…はい、カタい。さらにここでマネロンとか聞くだけで「え、ムズいしコワい」と硬直する人もいますよね。
大丈夫、コワくないわかっています。
わかっているので12月の研修はこんな装いで登場しました。
出オチ?ネタ?
いいえ、意図しています。
注目を集める必要があります。
コンプラ研修は眠たくなるものであってはならないし、マネロンなんていう難しそうなテーマだからこそ、むしろなんだかおもしろいと思われるものであってほしい。
だからこそ、レシピを守りつつ法令や原理原則を重視しつつ、たとえば伝え方で、たとえば対案の提示で創意工夫をします。
ちょっとまとめると
閑話休題。
僕たちコンプラにとっていちばん簡単なのは『ルールに触れる懸念があるからNGです』『リスクがあるからダメです』と言ってしまうことです。
もちろん、当社のバリューのひとつでもある「コトフォーカス」ではっきりとNG・ダメと言わなければならないケースもありますが、それはシュトレンがシュトレンじゃなくなってしまうような場面に限定され、美味しいシュトレンに仕上げる余地があるのであれば創意工夫を凝らすように、ホントにNGなときでなければスタートアップ企業として事業を実現させられるよう尽くすのもコンプラの重要な役割です。
法令や原理原則についてしっかりと咀嚼し、会社が何をしたいか、事業としてどこに行きたいかを反芻し、コンプライアンスの観点から伴走しサポートするのが、スタートアップにおけるコンプライアンスのあり方でしょう。
まだまだコンプラ担当者としての創意工夫についてはいろんなことを語ることもできるのですが、今日のところはいくつかポイントだけ予告的に述べるに留めておきましょう。
コンプラ的にはアタリマエ
自己開示
人は見た目が8割?
ホラ、カタくない
、、、何を言っているんだろう???
最後に
ファンズでは新しい仲間を随時募集中です。
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ファンズの採用に関する情報については、以下の内容もご覧ください。
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