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心を開く

『感性を磨くと、心が開いていく。』

私が土曜日に講師をしている学校の、美術の先生の言葉。

授業が終わって、美術室で美術の先生や他の先生たちとお昼ご飯を食べているときに、先生の絵についての話になった。

「先生が描いた絵を見たんですけど、何を表しているのか全然分からないです。」と言うと、
「感性を磨けば、見えてくるよ。」と先生はおっしゃった。

どうすれば、感性を磨くことができるのか聞くと、

「作品と対話をする。
 何を表しているのかを考える。
 作者の話を聞く。
 数多くの作品と出会う。」

「感性、センスは、衰えることがない。センスが良い人は、ずっとセンスが良いでしょ?
すぐに決断できる人は、センスがある人なんだよ。
感性を豊かにしていけば、センスも磨かれていく。そして、心が開いていく。心が開いている人は、伸びる。」

その先生の作品をみせてもらった。

「何を感じる?」と聞かれて、
「分かりません!」と即答。
「何かに見えてこない?」と聞かれて、
不思議なことに見えてきた。

「色んな人が手を繋いでいるように見えます。」

「そうやって、見ていくんだよ。例えば、これが目、鼻、口。顔に見えてくるでしょ?」

確かに!

「先生が、目、鼻、口っておっしゃったから、そればかり探してしまいます。それでも良いんですか?」

「それでもいい。みる方法の手段の一つになっただけだから。そこから、広げていけばいいんだよ。」

絵の前に立って、じーっと見ている人の気持ちが全然分からなかったけど、先生の話を聞いて、その人たちの行動にすごく納得がいった。

そうか。あの人たちは、絵から何かを捉えようと、感じようと、対話をしていたんだ。

感性を豊かにする方法を、もう一つ。

「感じるままに、そして何か一つにこだわって、描く。」

「絵を描く人をどう思う?」と聞かれた。

「純粋にすごいなって思います。私は『書く』方法で表現するから、それを絵にできるのはすごいなって思います。」

「美術・文学・音楽の中で、美術と文学が一番似ているんだよ。」
全然ピンとこなくて。

「どちらも何かに、例えながら、繋ぎ合わせながら、ひねりながら、「かく」。
学生にも必ず、表現したいことを文章で書かせている。そして、その文章はなるべく修正しない。その文章そのものが、かれらの表現だから。」
すごくピンときて。

「書く」と「描く」。

「本を読みながら出会う文章でも、自分が書く文章でも、主語と述語が合っていなかったり、矛盾している言葉だったり、文法がおかしかったりするけれど、すごくしっくりきたり、魅力的だったりするときがあります。それも同じようなことですよね?」

「そうそう。表現は自由だから。」

もう一つ、先生の作品を見せてもらった。

「窓から光が入ってきているのに、部屋の中は影がある真っ暗なまま。
心の中に似ています。表面上では明るい姿を見せるけれど、心の中は虚無感だったり空っぽだったりする、私に似ています。」

「なかなか感性あるよ。ちょっと先生と描いてみたりしたら、きっとすぐ伸びるよ。」

めちゃくちゃ下手くそでセンス皆無な私だけれど、
描いてみたいなって思った。
心を開いていきたいと思った。

久しぶりに、こういう話し合いをして、すごくワクワクした。
自分の姿を客観視すると、きっとそのときの私は、
目がキラキラしていたはず。
楽しい楽しい。

来週からも、美術室に入り浸ろう。

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