法律家業界の話6 うれしい仕事

こんにちは。まったん弁と申します。

このnoteでは,私の弁護士経験から,法律家の業界について業界外の人々に向けて,お役に立てる情報を発信しております。

これまで弁護士・裁判とかかわったことがないよ,という一般の方々,個人事業の方,中小企業の担当者などを想定しておりますので,法律のややこしい部分はあまり拘らず,ざっくばらんに,かつ,短い時間で気軽に読むことができるnoteにしております。

今回は,「うれしい仕事」というテーマです。

うれしい仕事

某社が取り仕切っている最近の新卒就職活動では,仕事の「やりがい」がまるで美しい女性のようにもてはやされます。しかし,「やりがい」は仕事の副次的要素,いわば「おまけ」のようなもので,これのみを求めると「やりがい」のない仕事が,低価値のもののように感じてしまうのではないでしょうか。

まったん弁が思うに,仕事の本体は「人ができないこと,やりたくないことをお金をもらって行うこと」で,その付録が「やりがい」というおまけです。「ガリガリ君のあたり棒」みたいに,たまに「やりがい」が当たると嬉しいものですが,基本的に仕事をして残るのは「はずれ棒」みたいに何もない木屑です。

職業としての弁護士はキリスト教の聖人みたいに自己を犠牲として社会的弱者を守るものではありません。「職業として」やっていますからね。ですから,うれしい仕事とは「きちんと報酬がもらえる仕事」で,「やりがい」が当たればさらにうれしいということになります。

例えば「着手金で30万円,成功報酬で50万円,期間は半年から1年間」くらいの仕事は,まったん弁のような,弁護士会の末席を汚す身としては,十分にうれしい仕事です。ベテラン弁の先生方はきっともっともっと稼いでらっしゃるのでしょうから,これくらいは大したことないかもしれません。

それと,裁判所からもらえる仕事がいくつかあります。破産事件の処理を行う破産管財人,相続人が居ない方に代わって処理をする相続財産管理人などです。これらは,基本的に裁判所が報酬を確保してくれるので,「とりっぱぐれ」が生じません。ですから,安心して仕事ができるという意味では,うれしい仕事ですね。裁判所から信頼されているという自信にもつながりますしね。

うれしくない仕事

うれしい仕事が報酬をきちんともらえない仕事だとすれば,うれしくない仕事は報酬をきちんともらえない仕事なのでしょうか?

数学に命題論というのがありますよね。「AならばB,BでないならばAでない」というアレです。命題論からすれば,裏は真ならずですから,上記の命題は偽です。報酬がもらえないと残念ではありますが,依頼者との「共感」があれば,そんなに嫌だということはありません。むしろ,達成感があります。

まったん弁が嫌だった仕事は全て,依頼者が泥水を周りにまき散らしながら爆走する大型トラックみたいに,悪感情をまきちらしてきたものです。弁護士にとって,相手方から罵倒されるのは何でもありません,闘争の相手方ですから覚悟ができています。しかし,依頼者は自分が身をていして守っているはずの人なのに,ときどき「後ろから刺す」人がいるんですね。

被害者意識がふくらみすぎて,敵と味方の区別もつかないほど本人の目をくらませてしまっているのでしょうか。そうなると,法律や理屈なんて全くの無意味です。泣きわめいている赤ん坊にお坊さんが説法するようなものです。

まったん弁もそれなりの経験がありますので,そういう状況にでくわしても,「またか」くらいにしか思いませんし,対応する覚悟を常に持っています。でも,「言葉の力」はとても強いものです。心という器は思いのほか薄い素材でできているようで,少しの振動でひび割れてしまうのです。

ですから,「ヒステリックな依頼者」と1年も2年もともに事件解決のための作業をするのは,アラブの地雷原をさ迷い歩くようなもので,いつ自分の足が吹き飛ぶか分からない怖さがあります。

そういうわけで,うれしくない仕事は,悪感情のコントロールができないヒステリックな依頼者の事件です。


こういう話にどれほど需要があるのか不明ですが,まあ皆さんのちょとした暇つぶしくらいにはなりそうですかね(笑)

また次回は別のテーマで投稿をしますので,気に入った方はフォローなどしてくれると嬉しいです(^^)/

では,またよろしくお願いします。

まったん弁


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