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覚悟が透けて見える理念と、見透かされるwoke-washing

|選ぶ理由が「ブランド」から「意味」へ変わろうとしてる

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この間ファミマを訪れた際、ラベルレスの伊右衛門を買うともう一本旧商品がもらえるキャンペーンを行っていました。

これ、今後定着させたいラベルレス体験をさせ同時に旧商品がハケる、とガワは理解できますがそれ以上に実際購入体験して驚いたのは「デスクに置いても誰も伊右衛門とわからない」ということでした。

プロダクトがブランドを伝えないってこれすごいことだなと感じます。伝えるべきことを明確にして、なにで選ばせたいのか、その理由が「ブランド」から「意味」へ変わろううとしてる。

実施意図とは違うかもしれないけど、私なりにこの取り組みの存在意義のポイントは、プロダクトははっきりと問題意識をもって人格と等しいくらいの理念を表現する時代になってると感じました。

|高いレベルの提供価値を作れば、共犯者がそのレベルを維持させようとしてくれる

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ラベルレスを始め、機能(モノ)よりも、ソーシャルイシューを絡めライフスタイルを売ってゆく取り組みは、ほんの数日、数週間のプロモーションで定着するものではありません。

手間をかけ、共犯者を育ててゆく覚悟でプロモーションの反応を捉え、次はこの価値をどう伝えなおして行こうかという長期の投資対効果を重ねて見違えるような力をつけていくモノです。

その結果、差別化を超えて唯一の存在となり、「スキ」と口にする共犯者が、他者を巻き込もうとし始め、これにより持続性に富んだ高いLTVを提供するプロダクトへと体質が変わってゆきます。

|漢方薬の様にじっくり効かせるのか、抗生物質の様に短期で売りを掴むのか

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こうした取り組みの際気を付けたいのが「そんな理念でモノが売れるものか」という凍てつく波動です。ひとたび放たれると、これまで共犯者を育ててゆく覚悟を前提にしていたはずの話を無効化し、昭和平成の経済合理性フォーマットが発動。

実施期間内にこの訴求でどれだけ売るかという短期費用対効果へと目的が変わり、たちまちソーシャルイシューがただの広告訴求軸になってしまうのです。

もちろん問題提起自体は目的を明確にするためにとても重要です。

一定のサンクコストを念頭に置き、漢方薬のようにじっくり効かせ実現したい価値にこだわる覚悟があるか
それとも抗生物質の様に短期で売りを掴む販促プロモーションとしてソーシャルイシューを活用するのか

これらをはっきりさせておかなかればリキャップの際に「思ったほど売れなかった」とコミュニケーションギャップが生まれてしまいます。

ただ後者のような活用は、目的が販促主義になったままソーシャルイシューっぽいプロモーションとして世に放たれ「この手の取り組みは売れないんだよね」というプレビューを起こしてしまう原因となってしまいます。

そして最近はこうしたソーシャルイシュー風の、っぽい取り組みのコトを「woke-washing」と呼ばれるようになってきています。

|それっぽい社会課題の取り組み「woke-washing」

このところESG投資が盛り上がってることから社会課題に取り組むプロモーションが増え、多くの大企業が最近パーパスと謳うようになりました。

そんな流れをうけ、このパーパスを謳い社会課題に取り組んでますと見せかける「woke(覚醒)-washing(のフリ)」なマーケティングが増えてきたと言われるようになっています。

行動を伴うこのレトリックを裏付けることなく、売り上げを伸ばすために価値のある原因の言葉と画像を使用して「woke-washing」を行う企業に激しく非難。 ユニリーバの最高経営責任者Alan Jope氏は「業界に対する信頼をさらに損なう可能性がある」と語った。

どんな未来を実現したいか、覚悟を持った理念は気迫が生活者に透けて見えるし、奥行きを感じます。逆に、奥行きなければ見透かされ、売りのための「広告」といとも簡単に見抜かれます。

例えば短期でキャンペーンが終わったり、サプライチェーンに対して問いを立てているかどうかが一つのポイントになっています。

先程の伊右衛門も、そもそもキャンペーンが終わったらおしまい?そもそもペットボトルをなくすことには取り組まないの?など捉え方を変えれば色々出てきます。(伊右衛門が炎上してるわけではありません)

それがソーシャルイシューを利用したのか、持続して取り組んでいきたい覚悟か、この点についてはプロモーションを長尺で伝え答えを気が付かせるしかありませんので、プロモーション期間が終了したらそれっきり、同じイシューにはお目にかかれない時は「woke-washing」の意図する意味に近いかもしれません。

|大量消費を促すのではなく、売れる分だけ世の中がよくなってゆくブランドを目指すべき

例えばタイガーさんは、サプライチェーンの構造に問いを立てる覚悟の打ち出しを始めました。全員がその価値を理解できるとは思えないし、バーティカルな売り上げになることもないと思います。でも顧客はたとえ500円他社より高くても、そこに意味を見出し手に入れる。理念は販促力を高めてくれると気が付かされます。あと初心者でもこの意義を理解しやすい

ユニクロさんの場合、ただ社会課題を解決するという視点以上に、未来に着目を知ると理解が深まります。「楽しみにくかったファッションをより自分の生活に取り入れられる」という可能性が描けます。近頃あったファッションって意味がある?という問いを立てたとき、この商品の存在価値はとても高い。一緒に着れる未来があればきっとそれも嬉しい。ヒトの未来の豊かさが手にはいる可能性をとても感じて素敵だと思いました。

ゴディバさんで行われた取り組みは素晴らしい使命を持っていたと思いました。ただそれ以降この問いを立てる声を聞いたことはありません。義理チョコをなくそうという世の中へ問いを立てる大いなる取り組みは、まさかワンシーズンだけで文化定着できるとは思っていないはずです。となれば目的が上記とは異なり、経済合理の判断がありそうです。サンクコストを前提にしていたのではないのかもしれません。また出会いたい。

BIKAS COFFEEというD2Cコーヒーブランドをご存知でしょうか?このコーヒーブランドは理念にこだわる覚悟がすごい。ネパールの経済活性の一翼を担うこのBIKAS COFFEEは、大手コーヒーメーカーから取引のオファー受けるものの「生産・雇用環境の健全性のバランスが崩れるかもしれない」ということと「大量消費を促すのではなく、売れる分だけ世の中がよくなってゆくブランドを目指すべき」という理由から、早い段階からD2Cのビジネス手法に念頭に置き、満を持して2019年国内展開に至っています。

生み出す構造までを含めて手に取ってもらいたいというサプライチェーン自体に覚悟と気迫が透けて見えますが、それだけではなくコーヒー自体の「モノ」という提供価値を超え、BIKASCOFFEE同様にグローバルなアクションを一つでも増やしていくという「意味」的価値を構築するため、コミュニティ形成を繰り返しています。買うほど地球を発展させてくれる、AllbirdsやPatagoniaのような可能性を秘めてるようにさえ感じます。

|祭りは新規じゃ盛り上がらない。

ソーシャルイシューを絡めた取り組みは何をしたかという「WHAT」に注目は集まりやすいですが、本来は「なぜそうなりたいのか」か、未来に対して実現したい行動を続けている「WHY」の部分が語られるべきです。

「woke-washing」が議論になってしまうのは「WHY」を語らず、こうした意義を食い物にして(言葉悪い)、価値を消費させ、社会課題をトレンドマーケティング手法として試み「売りに繋がりにくいテーマ」扱われてしまうようになるからなのではないでしょうか。

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また、こうした状況下では急にSDGsを取り込みマーケティングを行うべきと謳うマーケッターや代理店が増えてきています。それが間違いとは言いませんが、SDGsを取り込むことが目的ではなく、自分のありたい姿を実現させるとが目的です。それは時代に流されたまさに「woke-washing」な考え方の第一歩だと自問自答すべきかもしれません。理念が先にありき。何をやるかはなぜやるべきかの先には来ません。

「woke-washing」にならないためには、取り組みの持続性、サプライチェーンなどの背景、あるべき姿という理念とリンクしているか、そしてその覚悟が透けてみえることが最も重要です。その熱気に支持者は集まり、新たな顧客を連れてきます。

作りたいのはブームですか?それとも文化ですか?と聞くと文化と答える方は多くいます。でもブームなりますという提案と文化になりますという提案ではブームが選ばれます。覚悟の差はここに現れます。だから覚悟は最初に問うべきなのです「あなたはどうありたいですか?」と。‬ 

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SDGsへの向き合い方

ビジョンコミュニケーション。元新聞配達員。元舞台役者。元コピーライター。C1グランプリ優秀賞。宣伝会議講師。キャンプ好き。2M(メディア)なPRプランより生活者目線で理念を打ち出すブランディングを実施。三茶散歩コミュニティマネージャー。好きな言葉は「和して同ぜず」