2021年3月の耳がひかれたアルバム13枚 (クラシック・ジャズ・ポップス)
3月はこれら13枚のアルバムを聴きました。
どれもいいアルバムでした。
忙しい人のためのSpotifyプレイリストはこちら。計48分。
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01. クラロスクーロ (Claroscuro) - Capella De Ministrers & Carles Magraner (2021)
Release date : 2021 / 04 / 01
Label : CDM (Capella De Ministrers)
Genres : Classical
演奏空間を丸ごと体験する1500~1650年のスペイン音楽の調べ
音の立体感がいいなあ。楽器の響きと場の空気感がよく録られている。抑えながらも芯がある響きの重ね方、丁寧で繊細な響きがいい。
7.De tu vista celosoは残響音をふんだんに生かした演奏。
エンジニア(mix,mastering)はJorge García Bastidas。
主に映像作品のre-recording mixerを務めているとのこと。
具体的には、映画「君の名は」や、アニメ「ハイキュー」のスペイン語吹き替えのミックスを担当している。
この音響の立体感は映像が主戦場の人だからなのかな。
歌声、楽器と空間の残響音のバランスが丁度良く、過剰になりすぎてない。心地いい。
演奏団体はCapella De Ministrers。1987年にスペインで設立された古楽団体。
この団体の音楽監督はCarles Magraner。スペインを中心に活動するヴィオラ・ダ・ガンバ奏者。
奏者の一人、ソプラノのDelia Agúndezの歌い方と声質いいなあ。透明感と高音の伸びがあり、つんざく感じがない耳に優しい声質のソプラノ。
このアルバムの演奏空間はサンタ・マリア教会、バレンシア県、レケナ(スペイン)にて。
残響音の長い響きいい…。
スペイン文学の金字塔『ドン・キホーテ物語』には、随所に当時の音楽文化のありようを垣間見せる描写が見つかりますが、このアルバムはそれらを丹念に追い検証しながら、16-17世紀のスペイン音楽史を概観してゆく充実したプログラムが魅力。オルティス、ムダーラ、ナルバエスといった16世紀の天才たちからリバヤス、サンスら17世紀の巨匠まで、(中略)聴かせてくれます。
曲順は『ドン・キホーテ物語』になぞらえた2部構成に序章と終章となる部分も構想、フランスやドイツへの音楽的波及も見て取れるようになっています。
わお興味深い。
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[関連]過去の作品はこちら。モラレス: 哀歌集 (2020/03発表)
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02. マレ: ヴィオール曲集第3巻 (Marais: Troisième livre de pièces de viole) - François Joubert-Caillet, L'Achéron (2021)
Release date : 2021 / 03 / 19
Label : Ricercar
Genres : Classical
ひとつひとつの旋律を流麗に聴かせる演奏によるフランス・バロック期のマラン・マレーのヴィオール曲集
DISC4(第8組曲 ハ長調(通奏低音: Th, Vdg)と第4組曲 ニ長調(通奏低音: Cmb, Vdg))が特に好み。構えずに心を楽にして聴ける。音符が詰まっているところは小気味よく駆けて、離れているところはゆったりと余裕を持って歌っている。その緩急の付いたグルーヴが心地いい。
アルバムを主導するFrançois Joubert-Cailletはフランスを中心に活動するバス・ド・ヴィオール奏者。
共に演奏するのは古楽団体L'Achéron。上記のヴィオール奏者ジュベール=カイエにより2009年に設立された。
エンジニア(録音・編集)はJérôme Lejeune。
作曲はMarin Marais。1656-1728年のフランスで活動した作曲家、兼指揮者、兼バス・ヴィオール奏者。1679年にはルイ14世の宮廷のヴィオール奏者に任命されている。
余談だが、ルイ14世といえば最近見たNetflix配信の「ベルサイユ」が面白かった。これは脇役のフィリップ1世とシュヴァリエ・ド・ロレーヌとの夫婦漫才を楽しむドラマ。フィリップ1世はルイ14世の弟で、シュヴァリエは同性の愛人。このシュヴァリエがめちゃくちゃな性格で最高なんですよ。ヒゲ×クズ×ナルシスト×メンヘラ×散財借金のイケメンいいよね…。脱線オワリ
ヴィオール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)を誰よりも巧みに弾きこなし、この楽器の演奏技法をさまざまな角度から深めていったマラン・マレ。その偉大さはあらゆるヴィオール奏者が認識しており、すでに録音史に残る名盤も数多く世に出ていながら、総数500にも上るというマレのヴィオール作品の全てを録音した演奏家はまだ現れていません。
1711年に発表されたマレ3番目の曲集は、「おどけ仕草」「グラン・バレ」「移り気」といった比較的有名な作品も多く含まれ、多様な弓奏と撥弦とを使い分けなくてはその魅力を発揮し得ない難しさ(略)。
時にダイナミック、時に細やかなその演奏を支える通奏低音にはヴィオール、テオルボ、バロックギター、クラヴサン(チェンバロ)が組曲ごとに入れ替わりながら起用され、クラヴサンだけがヴィオールと対峙する緊密な二重奏として演奏されている組曲もあれば、クラヴサン抜きの独特なしっとりした響きが味わえる組曲もある、そんな多彩さもこのセットの魅力の一つとなっています。
ほうほう。
このアルバムの演奏空間はサンテーユ聖母教会、シラン(フランス、南仏ラングドック地方)。
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[関連]過去の作品はこちら。コンソートの記念碑 (2020/04発表)
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03. ザ・スウィーテスト・ソングス~ボールドウィン・パートブックからの音楽 Vol.3 (The Sweetest Songs) - Contrapunctus, Owen Rees (2021)
Release date : 2021 / 02 / 05
Label : Signum Records
Genres : Classical
溶け合い響き合う声に身を任すイギリス・チューダー朝時代の宗教合唱ポリフォニー曲集
声の混ざり合い、ブレンドがいいなあ。旋律が滑らかにつながってるのもいい。旋律の立ち上がりと収まりも緩やかに優しく制御・処理されてる。心地いい。
06.Domine quis habitabit (Robert Parsons)のポリフォニー具合が好み。こりゃ歌いたい。
この時期のイギリスの合唱曲はどれもポリフォニー感マシマシながら、耳で聞いた時のごちゃりのない明瞭さが兼ね備わっていて好き。
Contrapunctusは、2010年に設立されたイギリスの古楽団体。
設立者はOwen Rees。イギリス、スペイン、ポルトガルのルネサンス音楽を専門とした音楽学者、兼オルガン奏者、兼指揮者。
このアルバムの演奏空間はイギリス、オックスフォードの聖マイケル&オール・エンジェルズ教会(St Michael at the North Gate)
[参考]アルバムの詳細はこちら2(TOWER RECORD)
ボールドウィン・パートブックからの音楽、3部作を締めくくる最終巻。ウィンザー城セント・ジョージ・チャペルの聖歌隊で活躍していたジョン・ボールドウィンが編慕した約170点に及ぶコレクションは、チューダー朝の素晴らしき宗教的ポリフォニーの宝庫です。
ボールドウィン・パートブックというのがあるのね。内容はバード等のチューダー朝時代のイギリスの合唱曲が編纂されてるとのこと。へええ。
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04. 光と影 (Clair-Obscur) - Sandrine Piau, Orchestre Victor Hugo, Jean-François Verdier (2021)
Release date : 2021 / 03 / 15
Label : Alpha
Genres : Classical
声と楽器の響きが調和する管弦楽伴奏の近代ドイツ歌曲集。
歌声がいいなあ。楽器に溶け合いながら存在感を保つ柔らかい声いい。
あとフレージングもいいなあ。旋律をその流れに沿いながら最大限に込められる情報量を聴かせてくれる。それとビブラートの周期の拍の収まり方が調度よくて心地いい。
この時代の近代の音楽いいよね…。
この時代は従来の西洋音楽の解体と再構築が果敢にされてるゆえなのか、その副作用で美しい旋律や和音・和声が多く生まれてる印象。それは無調音楽にしても、その反動の従来の調性音楽への回帰にしても、その二つの均衡から生まれた折衷案にしても、どれも美しいのが多い。
毎回書いてるけど美しいってなんじゃろうな。あくまで好みと同じで主観によるところが大きいとは思うが…。
軽く検索すると、報奨系として美の認識には脳の内側眼窩前頭皮質が関係していたり、聴覚ではなく視覚を中心とした研究で、主観的に美が経験されている際には,情動的処理システム,認知的処理システム,感覚運動的処理システムの少なくとも3つの機能的に独立した神経システムが駆動する(そして聴覚での美の認識もその視覚と共通する部分がある)みたいなのがあったりして、へええとなった。
だがその美の認識は、情動が揺さぶられたからか、音のパズルの面白さに感心したからか、演奏を聴いての肉体的なミラーリングで神経が奮い起こされたからか、この三つどれに美しさを感じたかというのは分けるの難しいね。この辺を分解して内観するのはひたすら経験なのじゃろうか。道は長い。余談オワリ。
歌手はSandrine Piau。フランスのソプラノ声域を得意とする声楽家。
オケはOrchestre Victor Hugo。1994年に設立されたフランスの管弦楽団。2010年からクラリネット奏者経験のあるJean-François Verdierが指揮をしている。
フランスの歌姫ピオーが歌う管弦楽伴奏のドイツ歌曲集。
「4つの最後の歌(R.シュトラウス)」「あすの朝(R.シュトラウス)」「7つの初期の歌(アルバン・ベルク)」などの有名曲、そしてリヒャルト・シュトラウスが最後に残した歌曲とされる「あおい」が聴けるのが大きな魅力です。
アルバン・ベルクとリヒャルト・シュトラウスの響きいいよね…。あとアルバムにはアレクサンダー・フォン・ツェムリンスキーの作曲もある。この人の曲は初めて聴いた。いい…。
[参考]歌手のインタビューはこちら ※フランス語(FORUMOPERA)
[参考]収録曲のインタビューと演奏動画はこちら ※フランス語(Youtube)↓
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05. 丘の向こう - イノトモ (2020)
Release date : 2020 / 11 / 21
Label : NEUTRAL RECORDS
Genres : J-POP
ギターシンガーソングライターによる素朴でセンチメンタルに胸を打つ音楽
いいなあ。ポツポツと歌う声も曲もいい。落ち着く。01.ぬくもりと03.かなしみをはんぶんのユーフォニウム(ゴンドウトモヒコ)との掛け合いもいい。
ギター×ユーフォニウムはもっと聴きたい。郷愁を呼び起こすというか、センチメンタルに心を揺り動かす。いい…。
イノトモは日本のシンガーソングライター。「しばわんこの和のこころ」のOPの作詞作曲演奏や、くるりのBirthdayのコーラスをしてたのね。懐かしい。いい…。
サウンドプロデュースにおおはた雄一(Gt)、伊賀航(Ba)を迎えている。
エンジニアとして、近藤祥昭(GOK SOUND)(録音)、原真人(ミックス&マスタリング)、伊藤優子(ミックス)が参加している。
[参考]収録曲を含むLIVE動画はこちら(Youtube)↓
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06. ドレミのうた (Do Re Mi) - 坂東 祐大 (2021)
Release date : 2021 / 04 / 02
Label : Yuta Bandoh Studio
Genres : Classical
音がとにかく面白い。耳を傾ける楽しさに溢れてるアルバム
全体で9分のアルバム。
新鮮な音の刺激に溢れてる。キャッチーで面白い。Eテレで映像化して流して欲しい。子供たちに聴かせたらキャッキャッと喜びそう。自分は聴いていてキャッキャッと笑みがこぼれた。
作曲と音楽監督は坂東祐大。現代音楽から劇伴、ポップスまで幅広く手掛ける作曲家。最近では米津玄師のアルバム「STRAY SHEEP(2020)」の共同編曲でほとんどの楽曲に参加したことでも有名。
エンジニア(録音・ミックス)は涌井良昌。
多くの人にとって気にもとめない些細なことが、実はある人の耳にはめまいがするような革新的なものに響くかもしれない。
そうした新しい世界の捉え方を音を使って提示できないか。
聴き手が未だ体感したことのない感覚を、創作を通して探究したい。
自分の中にそうした根源的な欲求がある。
“ドレミ” というありふれた素材を使って、新しい音楽表現を切り拓いてみたい。
MVの制作はAC部。AC部いいよね…。見ると頭がドレミになる。最高。
AC部×音楽といえば、去年2020年にNHKの名曲アルバム+の企画で作られたウィリアムテル序曲のMVが尖っててお腹よじれた。最高。
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07. ゴーストアルバム - Tempalay (2021)
Release date : 2021 / 03 / 24
Label : WM Japan
Genres : Altanative
エグさとキャッチーさが織りなす令和の日本語歌謡曲
エグいんだけど、ところどころ聴かせどころでポップになる。この緊張と弛緩が癖になる。
あと一曲一曲の音の密度がいいなあ。ずっと演奏と響きの密度が高く進んでいく。響きを満たすシンセと他の縦横無尽に動く楽器のバランスがいい。それとところどころ挿入されるサンプリングもいい。密度高いのに疲れないのはなんでじゃろ。インタビューにそのへん色々と意識してやってたとあったので意図通りなのかもしれない。
あと音の推進力がいいなあ。リズム感というかなんというか、音楽が停滞せず前へ前へと進んでく推進力がある。演奏のキレが気持ちいい。
特にドラムのうねりのあるグルーヴとリズム、そしてVoの歌い方(ノリ)から生まれる推進力好き。
またベースが全体的に心地いい。05.忍者ハッタリくんの口ずさみたくなるようなベース好き。
とにかくいいなあ。これは今年のヘビロテしたアルバムに入りそう。
歌詞もいいなあ。この断片的に独り言をつぶやくような感じはどれも好み。
01. ゲゲゲ
おいも若きも世のため人のため
化けろ化けろばけらにゃ損損 嗚呼
時の流れにゃ逆らえん
化けろ化けろばけらにゃ損損 嗚呼
わびしくて泣く
ひと夜賑やかに
02. GHOST WORLD
くだらない いつだってもう飽きたように僕ら一切の業を成すの
08. 何億年たっても
東京都は平和だな ああなんか眠れないな
感情がひきちぎれてゆく
が特に。
Tempalayは小原綾斗(Gt,Vo)、John Natsuki(Dr)、AAAMYYY(Syn)からなる三人組のロックバンド。後者二人はソロ名義でアルバムを出している。
また今回はベースとしてBREIMENの高木祥太が参加している。
Tempalayの曲を作るときは、メロディがつかみやすいものに対しては難解で気持ち悪い感じのアレンジをして、メロディがつかみづらいものに対してはわかりやすくシンプルなアレンジを考えるんです。(John Natsuki(Dr))
今まではスタジオにバンドで集まってアレンジを出し合ってたんですけど、今回は各々で音を作り、リモートで一旦完成まで仕上げて、ベースとドラムのアレンジだけレコーディング前にスタジオに入ってやりました。 (小原綾斗(Vo, G))
なるなる
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08. Outside World 2 - Henry Solomon and Logan Kane (2021)
Release date : 2021 / 01 / 26
Label : Good Question
Genres : Jazz
うねるグルーヴ全開のグニャグニャ楽しいジャズ
楽しい。即興演奏の掛け合いの快楽が詰まってる。
面白くて何度でも聴きたくなる。
サックス・ベース・ドラムの組み合わせはグルーヴの快楽を生み出すのに強いなあ。特に02.Really Slow Foxと09.Keep Your Cool、05.HitsはドラムにLois Coleが参加していて、どの曲も楽器が噛み合っていていい。
05.Hitsの4分からのLouis Coleの急に刻み挟むドラムには笑ってしまった。最高。
冒頭に踊れるジャズと書こうとしたが、踊れる音楽、身体が自然と動く音楽なんて人により千差万別だよなあ、音楽が身体に結びついた記憶により人それぞれだよなあ…と考えて書くのがふと止まった。
幼稚園児にトランスを聴かせたら踊りだしたという事例があるので原始的な踊らせる音のナニカはあると思うけれど。 まあとにかく言いたいことは、このアルバムは自然と身体を揺らしたくなる音楽だったということで。うーん踊りを誘発させる音楽とはなにか。難しい。
メインの奏者はSaxにHenry Solomon、BassにLogan Kaneがいる。二人は共にカリフォルニア州ロサンゼルスを拠点に活動している。
サポートの演奏メンバーとして、Dennis Hamm(key)、Louis Cole(dr)、Paul Cornish(key)、Benjamin Ring(dr)がいる。
エンジニアとして録音・ミックスにRiley Geare、マスタリングにLouis Coleが参加している。ルイス・コールはドラム以外にもマスタリングで参加してたのね。
[参考]アルバムの詳細はこちら(Live For Live Music)
[参考]演奏動画はこちら ※収録曲ではない(Youtube)↓
身体が揺れるノリノリのグルーヴがいいなあ。グルーヴの快楽ある。
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09. Folk Music of China, Vol. 11: Folk Songs of the Dai & Hani Peoples - Various Artists (2021)
Release date : 2021 / 03 / 26
Label : Naxos World Music
Genres : International
声と楽器の絶妙な距離感が気持ちいい中国の伝統民謡
中国雲南省のダイ族とハニ族の伝統民謡。民謡特有のグルーヴ凄い。トリップ感すごい。
二声や、旋律楽器による二重奏フェチなので、二人による演奏が多いこのアルバムは特に惹かれた。えげつない演奏の絡み方してる。感覚的にはこの辺をこうしたら音楽的に気持ちいいからこう絡んでるんだろうなというのはうっすら感じられるけれど、いかんせん初めて出会う音楽なのでところどころ新鮮で驚く。
02と07のZhang Ha Songの不意に挟まれる環境音の鶏の鳴き声いいなあ。録るべくして録ったものじゃないだろうが、いいアクセントになってる。
伝統音楽というのは大抵が出来事とセットで、時間空間から切り離してその曲をヘッドホンで何度も聴く、そしてその耐用性があるかどうかを評価するというのは傲慢すぎてチャンチャラおかしいと思う自分が時々いる。のだけれども、そんな考えは棚に上げて思考停止して、とことん消費する大衆音楽として今回は聴いてみた。結果このアルバムは文化や歴史から切り離しても音楽的な快楽として何度も聴く魅力があった。という余談ポエム。
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[関連]過去の作品はこちら。Folk Music of China, Vol. 7 (2020/06発表)
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10. Earth Voices - Amanda Tosoff (2021)
Release date : 2021 / 01 / 29
Label : Empress Music Group Inc
Genres : Contemporary Jazz
7人のボーカルを起用した心地いいピアノジャズ
心地いい。シンプルでメロディックな音楽。声とストリングスの混ぜ方、扱い方が過度ではなく調度いい。
アルバムではそれぞれ7人のカナダで活動するヴォーカルを起用している。歌声がどれもいいなあ。落ち着く。
Amanda Tosoffはカナダのトロントを拠点に活動するピアニスト。
こんなのがあった。SaxのソロをAmanda Tosoffが楽譜に起こして鍵盤で弾いてる動画。
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11. Jazz Deluxe - Carmen Lundy (2021)
Release date : 2021 / 01 / 01
Label : Bundlebeats
Genres : Mainstream Jazz
エネルギッシュさ溢れるピアノジャズ小品集
親しみやすく、音の展開の快楽の基本を押さえてるの心地いい。そして退屈さと陳腐さを感じさせない。どの曲も安定して気持ちよく聴ける。ジャズボーカルのエチュード集としてATN出版社で出されそう。
Carmen Lundyはアメリカのボーカリスト兼ピアニスト。この方は今66歳なのね。全然思えなかった。音楽と声に若いエネルギッシュさある。
メンバーは他に、ベースがDarryl Hall、ドラムにMarvin “Smitty” Smith、ギターにAndrew Renfroeがいる。
[参考]アルバムの詳細はこちら(Music Archives)
[参考]アーティストの演奏動画はこちら ※収録曲ではない(Youtube)↓
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12. Road to the Sun - Pat Metheny (2021)
Release date : 2021 / 03 / 05
Label : Modern Recordings
Genres : Classical
メセニー作曲のクラシックギター組曲集
いい…。
なんか何度も聴いちゃうんだよなあ。言語化が難しいのだけれど、シンプルなんだけど複雑。直感的な魅力があるのだけれどパズルのような面白さがある。それが何か確かめようと何度も聴きたくさせる魅力ある。
組曲をまたぐが、03~05の流れが美しい。
Apple Musicではジャケット画像がアニメーションになっていてビビった。
今はジャケットをアニメーションにする時代なのね。これからこの流れは数年掛けてゆっくり広がっていくかな。
作曲はPat Metheny。アメリカのギタリスト。今回、11.Hush Little Babyのアルヴォ・ペルトの曲だけ42弦ギターの演奏で参加している。
01~04の組曲Four Paths of Lightの演奏はJason Vieaux。アメリカのクラシックギタリスト。
05~10の組曲Road to the Sunの演奏はLos Angeles Guitar Quartet。1980年に結成されたアメリカのクラシックギターアンサンブル。
このアルバムは解説とレビューが多くありどれも参考になった。細かい情報はこちらに。いい…。
・Rolling Stone Japan (柳樂光隆)
・ARBAN (土佐有明)
・Música Terra (個人サイト)
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[関連]過去の作品はこちら。From This Place (2020/02発表)
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13. ヒンデミット: 管楽器のためのソナタ集 (Hindemith: Wind Sonatas) - Les Vents Francais (2021)
Release date : 2021 / 04 / 02
Label : Warner Classics
Genres : Classical
ノスタルジックな旋律と近代的な美しい響きの融合した管楽器とピアノによるソナタ集。
ヒンデミットいいよね…。各音程の距離感が美しくて好き。ノスタルジックな旋律と書いたが、これは個人的すぎて一般的な感想ではない気がする。なんだか胸がキュッとなる旋律なんですよ。各声部を歌うとこの世ではない異世界への謎の郷愁を感じる。センチメンタルでもあるのだが、感傷的になりすぎないドライな美しさある。
ヒンデミットは感覚的にくるんですよ。サウンドが格好良くてエモいんですよ。と管楽器とピアノのソナタを久々に聴いて思った。
演奏はLes Vents Francais。フランスの木管アンサンブル。
演奏に歌心あっていいなあ。フレージングが良くて聴かせるところを聴かせてくれる。そして耳だけで聴いて構造が分かりやすいように演奏してくれる。声部のそれぞれのフレーズの区切りが分かりやすくて、やりすぎて陳腐までいかない調度いいライン。
このアーティストは去年のアルバムRomantiqueも良かったのでオススメ。当時は日和って記事に載せてなかったが、改めて聴くといいなあ。
ピアノはÉric Le Sage。フランスを拠点に活動している。
これらのソナタは1936~1942年に書かれたもので、古典的な形式への意図的な復帰を表しており、音楽学者で評論家であったクロード・ロスタン(1912-1970)の言葉によれば「ヒンデミットの新しいスタイルは、音色の不安定さとメロディアスな流動性から解放する独特の半音階主義」と明らかにしています。彼が復元するのは古典的な構造でもあり「そうすることで、彼の精神を最も主権的で大胆な思想の自由で若返らせることができる」と評しています。ヒンデミットの若い頃の前衛的な性格は感じられず、むしろ、楽器の性格を知りつくした手堅い表現によって、楽器の特質が表れるようになっています。
なるなる。ためになるなあ。
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個人的にヒンデミットの曲はドストライクなのだが、去年はアルバムを取り上げる機会がなかった。いい機会なのでソナタ以外でよく聴きたくなる作品を四つ上げてみる。
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一つ目はピアノ曲のルードゥス・トナリス(Ludus Tonalis)(音の遊び)。
バッハの平均律クラヴィーア曲集の20世紀版を意図して書かれたもので、副題は「対位法・調性およびピアノ奏法の練習」。
ピアノ演奏もいいが、この曲集は倍音がブミョーンと豊かな音色の楽器が合うと思うのであえて8bit風アレンジをあげてみた。出典が見つからないが構想・作成段階ではオルガン曲だったとかなんとか。一度オルガンの倍音豊富な音色で聴いてみたい。この曲に限らずヒンデミットの曲は8bit風音源か、ブイブイ鳴ってるシンセが似合うイメージ。
最近だとトルコのピアニストHuseyin Sermetによるアルバムが2018年のMyベストの一つだった。(Spotifyはこちら) このアルバムはとにかく演奏の勢いに飲まれてしまった。録音環境の悪さなんて気にさせない、息を呑むような鬼気迫るライブ演奏。ルードゥス・トナリスの録音としては新鮮だった。
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二つ目は歌曲集のマリアの生涯 (Das Marienleben)。歌詞はリルケの詩より。
こちらはレアなテノールが歌ったバージョン。元は女声。とことん響きが美しい作品。
あとグレン・グールドの演奏もいいよね…。グールドのアルバムでヒンデミットにハマった人です。今でも光る演奏。歌いこなすソプラノすごい。
(Spotifyはこちら)
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三つ目と四つ目はヒンデミット後期の弦楽四重奏曲 (String Quartet)。具体的には6番と7番。
後期の四重奏はどれも音を探り耳を澄ます快感に溢れてる。楽しい面白い(やってることは難しいけれど)。このジュリアード弦楽四重奏団の演奏は内声が豊かで、しっかりと鳴らすところを聴かせてくれて聴き応えある。(Spotifyはこちら1)、(Spotifyはこちら2)
以上、布教による脱線オワリ
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おわりに
アルバムの情報はAmazonとAppleMusicに準拠してます。
アルバムの順番は順不同です。順位ではありません。
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四月のアルバムが三枚入っているのはご愛嬌ということで。今回も二ヶ月分を書こうと思ったが、いいアルバムが多すぎて困った。なので一ヶ月毎に書くことにした。
場末の某掲示板の爆発四散する暗黒力士祭りを読んでたら時間が飛んでた。いい…。関係ないけど15年前あたりのgifのSUMOスレを思い出して目頭が熱くなった。思えば遠くへ来たもんだ。
カーディガンズ (The Cardigans)が音楽スレに貼られていたので懐かしくなり久々にアルバムを全て聴いてみた。学生の時、昔ベストだけ軽く聴いてたが、今聴くとまた聴こえ方が違う。いい…。
noteがGoogleフォームを貼れるようになったので近い内に導入したみ。
オワリ
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おすすめのアルバム、訂正、要望、質問などがあればここへ気軽にマシュマロを投げてください。
最後まで読んでくれてありがとうございます。よかったら「スキ」も押してくれると嬉しいです💐
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