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MtF のトランスセクシュアル。 自身のブログ 梢おばさまのトランス日記(http://blog.livedoor.jp/kozuesug/)からの転載を主体にします。 そちらもぜひご訪問ください。 自称は「おばさま」。

最近の記事

坂本龍一氏についての内緒話

例の神宮外苑再開発の話で、坂本龍一氏がヘンに神格化されているのにちょっと私なんかはモヤモヤした気持ちがあったりする… うんまあ、私まさにYMOとかそういう世代なんだけどもね。 それでも、あまり坂本龍一っていうほどに好きでもないのが面白い。でも優れたミュージシャンで大人気!はまさにその通りで、異議はない。 あの時代、私YMOよりも東京ロッカーズとかニューウェーブ勢にハマっていた。 そうすると、PASSレコードでフリクションがプロデューサーの坂本氏を「あんたは(判ってないから

    • 左派の「作風」とその歴史的没落(都知事選雑感)

      都民ではありませんが、都知事選には関心をもって観察していました。蓮舫氏の選挙戦を見ていて、「これは、ダメだ!」という予感をもっていたのですが、結果として惨敗。なんでそう予感したのか?というのがこの小論のテーマです。 選挙戦の目的は候補者にとって「自分が好きな人を増やす」機会なのでしょうか?それは明白に違うのです。これは、 自分が嫌いな人を、いかに自分に投票させるのか? が選挙戦で追及されるべき戦略的テーマなのですよ。この点で当選した小池百合子は間違っていないのです。小池

      • カリフィアと「ダースベイダーになりたい願い」

        trans という接頭辞と同様な意味合いを持つ英語に、cross があるのですが、ラテン語由来の trans に対して cross には「十字架」と「裏切り」という別個の意味を包含しています。「セックス・チャンジズ」は trans の物語であるのと同時に、カリフィア自身の「裏切り」とその心の痛みをあらわした作品...というようにも、読みたいと思うのです。 「裏切り」というのはもちろん、一番感動的な第6章のTSパートナーを扱った件ですが、「ブッチ・レズビアン」から「トランス男

        • ジョン・マネー「性の署名」

          さて問題の本。いろいろ悩んでた1990年代初めに読みましたから、その後の「批判はそれとして...」と好意的な印象を持ってましたが、いざ再読となるとやっぱり「困る...」というのがわりとショックです。 言うまでもありませんが、「ブレンダと呼ばれた少年」の一件、マネーが自分の理論の証明のために行った「性の再割り当て」が失敗に終わったこともあって、評判を下げたわけです。しかしね、この失敗は理論的には逆に「いったん固定した性自認は動かし得ない」という見方をすれば、実のところマネーが

        坂本龍一氏についての内緒話

          ジョン・コピラント「ブレンダと呼ばれた少年」

          さてこれは内容は知っていたけど、初読。いうまでもなく、マネーの「性の署名」で紹介された話がはなはだしく事実と食い違っていることを追求したルポです。 包茎手術の失敗で、生後8か月の男の赤ちゃんの男性器が黒焦げになったことの後始末として、マネーが主導してその子を女性として育ててみる、という一種の人体実験を行いました。マネーはそれを大々的に「成功」として自著で紹介したわけですが、実はその「女性」は14歳の時に違和感に耐えれなくなって男性に戻り、この本の執筆時点では男性器再建手術を

          ジョン・コピラント「ブレンダと呼ばれた少年」

          カリフィア「セックス・チェンジズ」

          この書評シリーズを始めたときに、カリフィアのこの本と、バトラーの「ジェンダー・トラブル」を取り上げるのを目標にしていました。ようやく「セックス・チェンジズ」を読了して書評出来るのがうれしいです... いやさすがに凄い本です。トランスジェンダーの歴史を包括的に紹介かつ論評した本として、議論の基礎になる「基本書」としての資格があります。このところとくに目立つ TS/GID派とTG/クィア派との対立もしっかり指摘しているだけでなく、当事者ナラティヴのはらむいろいろな問題点も直視

          カリフィア「セックス・チェンジズ」

          ケイト・ボーンスタイン「隠されたジェンダー」

          カリフィア「セックス・チェンジズ」での紹介に興味をそそられて読みました。訳者は筒井真樹子氏。一度お会いしたことがありますが.....まあ確かに「第三の性」陣営っぽい方ですね。ただし、この方が「訳者によるノート」で書いているように、ボーンスタインのかなり曖昧な立場と筒井氏の立場が必ずしも一致するものでもない、とは断っています。 というかね、カリフィアの紹介を読むと、「ハードに第三の性の立場を論じつくした、理論的著書」みたいに感じるのですが、そんなもんじゃ、ありません。軽いエッ

          ケイト・ボーンスタイン「隠されたジェンダー」

          ジュディス・バトラー「ジェンダー・トラブル」

          簡単に言うと、この本がややこしい理由は来歴にあります。80年代のデリダブームから、アメリカでフランスの「(ポスト)構造主義」がかなり「脱構築」されたかたちで受容されるようになって、フェミニズムの中で「ポスト構造主義」流の理論構成がなされるようになります。その流れに竿さして、バトラーが自分の理論を構築しよう、という状況をまず把握しておくべきでしょう。しかも、アメリカは独特の形でフロイト精神分析が受け入れられていて、そんな中にらラカン流やら導入されて行きます。なので、この本でも精

          ジュディス・バトラー「ジェンダー・トラブル」

          「男/女であること」を見る

          鶴田幸恵「性同一性障害のエスノグラフィ」を入手しました。で、序論とか最初の章をざっと読んだあたりです。以前紹介した「正当な当事者とは誰か」もこの本に入っていますね。方法論を述べた序論のあとの、具体的な話になる「性別判断における外見を「見る」仕方」の感想ですけども、確かにね~おばさまの経験と照らし合わせて、面白く感じていました。要するに「パス」の話なんですが、著者は純女さんなので、逆に言うと「自分が「女」と判断されるのは何でなんだろう?」という根源的な問いから始まっているが興味

          「男/女であること」を見る

          鶴田幸恵「性同一性障害のエスノグラフィ」

          半年くらい前に買って最初の第一部「外見以上のものを見る―「女/男であること」を見る」まで読んで、忙しくて放置して忘れてましたね。というわけで最初から通読。 いやね、要するに「人々の方法論」エスノメソドロジーというのは、現象学だから、「Why」をエポケーして「カッコに入れて」、「How」を見る、というあたりの面白さ、だと思うんですよ。そういう面白さがやはり第一部は強くありますね。以前も書きましたが、MtFのパスの問題を取り上げて、性別を判定する「手がかりによる判定」に先立つ「

          鶴田幸恵「性同一性障害のエスノグラフィ」

          みさねこさんへ

          メッセージのやり取りだと、思うところがきっちり書けないと思うので、note で書きます。誰に読まれても私は気にしないし。 年末からいろいろと考えてきましたが、私の結論は、 トランスを卒業する という方向で固まりました。それが私のとって、一番しっくりする結論です。ですので、今後はトランス関連の話題には一切かかわらないことにします。 というか、私の今の状況を自分で冷静に考えてみたときに、私が何らかの意味で「トランスジェンダーであるか?」というと、もはや違う、としか言いようが

          みさねこさんへ

          特例法制定当時の界隈(5)

          おわりに 「はじめに」でも少し触れましたが、先日映画「I Am Here ~私たちは ともに生きている~」を見たのですね。「トランスジェンダリズム宣言」から見ると、著者のうち三橋順子氏と畑野とまと氏が出演していましたね。まあ、あと古い方は、虎井まさ衛氏と山本蘭氏。でもね、畑野とまと氏で始まり、中盤のおいしいところで三橋順子氏。そして後半、御病気の山本蘭氏を、監督自身が車椅子を押して....というような構成の映画でした。 ごめんなさい、不快でした。あれほどGIDの問題について

          特例法制定当時の界隈(5)

          特例法制定当時の界隈(4)

          マネーの「性自認」さて問題の概念「性自認」。「gender identity」の訳語とされますが、別な訳語として「性同一性」があります。俗に「心の性」と呼ばれますが、大概の個所でこれは「簡単に言って」とか枕詞が付きますから、かなりの俗解と使う方は意識して使うケースが多いのですが..... まずはジョン・マネー「性の署名」での定義を見るのがいいんでしょうね。まあ、訳語は「性同一性」の方が私の論旨には都合はいい(苦笑)ですが、ここは譲りましょう。 性自認(Gender Ide

          特例法制定当時の界隈(4)

          特例法制定当時の界隈(3)

          「トランスジェンダリズム宣言」 では、問題の本「トランスジェンダリズム宣言」(社会批評社・2003年)をしっかり、やりましょうか。編著は米沢泉美氏で、メインのライターはいつき(土肥いつき)氏、筒井真樹子氏、三橋順子氏。加えて「コラム」で参加するのが、畑野とまと氏、森田MILK氏(G-フロント関西の代表)、阿部まりあ氏(京都の女装系イベント玖伊屋スタッフ)、佐藤文明氏(戸籍研究家)、中島豊爾氏(インタビュー:岡山病院。ガイドライン策定の委員長)の面々。 ですから、三橋順子氏、

          特例法制定当時の界隈(3)

          特例法制定当時の界隈(2)

          TS原理主義 確かに、特例法によってメリットを受ける人、受けない人が出ます。これは法律というものの、どうしようもない側面です。具体的な法律では、定義して線引きをしないと、何もできないのです。 ですから、特例法の内容があきらかになるにつれ、その恩恵を受けられない人々は、不満に思うのは仕方のないことです。やはり法律にできること、というのは、かなり限りがあることです。「差別をなくそう!」は理念としては正しくても、社会を委縮させてしまえば元も子もありません。どんな考えであっても、「

          特例法制定当時の界隈(2)

          特例法制定当時の界隈(1)

          はじめに 皆さまのご要望にお応えして、私が知っている限りで、特例法の成立や当時のコミュニティの状況などについて、思い出を書くことにします。実際、私の感覚では、今のトランスジェンダリズム活動家の「反特例法」っぷりを見るにつけ、特例法の上程とその成立に向けての時期(2002~2003年頃)に、「特例法反対」に流れた人々の姿が、完全に重なるのですね。 しかも、たとえば先年公開された映画「I Am Here ~私たちは ともに生きている~」を見るにつけ、「おや、この人たち、全然何も

          特例法制定当時の界隈(1)