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首里城、また必ず立ち上がる その日まで

「よいしょ、よいしょ」
こざるちゃんが、加湿器に水を入れます。
ここ数日で、寒くなってきたのと同時に急に湿度が下がってきました。

「乾燥しているから、喉も乾くねー。」
「洗濯物も、少し室内に干してもいいかもね。」
「そうだね、そうしよう。」

いつもより のんびりした空気が漂う土曜日の朝です。
こざる達は いつものように賑やかに お喋りしながら、
朝ごはんの仕度をしています。

ラジオからは、首里城の火災のニュースが流れてきます。

「燃えてなくなっちゃったんだよね。」
こざるちゃんが悲しそうに言います。

あの朝、こざる達は起きて、いつものようにテレビをつけると
火事の首里城が画面に映っていました。
こざる達は、最初、訳が分からず、ただただ画面をずっと見つめていました。

「りこちゃんも、ぼく達も、沖縄に行ったことがないんだ。」
「でも、いつか行きたいねー、行こうねーって言ってたんだ。」
皆、うんうん頷きます。

行ったことがありませんが、こざる達の友人が那覇に住んでいます。

「沖縄で生まれ育ったわけじゃなくて、何度も沖縄に旅行に行っているうちに
大好きな沖縄で暮したいって移住したんだよ。」
「火事のニュースを見て、心配で、すぐに連絡したんだ。」
「無事だったけれど、夜の間ずっと避難していたって言っていて、
そしてとてもショックを受けていたんだ。」

いつもそこにあって、心の拠り所にしていた首里城が燃えてしまったのです。
とてつもなく深い喪失感….こざる達は かける言葉が見つかりませんでした。

「でもね、首里城は今までもこうして失われて、また再建してきたから、
今度も絶対に再建するって、そう言ってたんだよね。」

転んでも何度でも立ち上がるから大丈夫、そう友人は言いました。

「ぼく達も応援だね!」
「うん!」

ラジオからユーミンの歌が聴こえてきます。

「少しだけ真面目にきいて たった今 帰って来たわ
どこまでも廃墟のような街並を歩いていたの
行く先も日付もいらず 何故かしら淋しくもない
懐かしい名前を呼べば いく重にもこだまが返える」

松任谷由実の『不思議な体験』です。

こざる達も一緒に歌います。

「飛行機じゃなくて 流星じゃなくて
眩むような白い光 空低くとび交っていた」

朝ごはんが出来たようです。

「りこちゃん、呼んでくるね。」
こざるちゃんが、歌いながら りこちゃんの部屋へ向かいます。

「ああ 遠くであなたが 見つめてる
いつでも心を送ってる 私もあなたを求めてる
今 奇跡を信じてる」

「りこちゃーん、朝ごはん 出来たよー。
今日は玉ねぎのお味噌汁と、白いつやつやごはん、それから鯖味噌も作ったよ!
皆で一緒に食べよう!」

こざるカフェは、今日も ゆっくり始まって
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
新米の美味しい季節ですね。
よい毎日でありますように (^_^)

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