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バレンタインのバウムクーヘン

「今日のおやつはバウムクーヘンだよ。」
「もうすぐバレンタインデーだもんね。」
皆、うんうん頷きます。

「バレンタインといえば普通はチョコレートなんだけど...」
「昔、りこちゃんが若い頃、働いていた職場の上司のおじさん、バウムクーヘンが大好きで、
毎年、バレンタインに職場の人たちにバウムクーヘンをプレゼントしてくれていたんだよ。」
「バレンタインデーが、ちょうど彼の誕生日だったんだよね。」
「だから よく バレンタインデーなんかよりも、俺の方が先だ!って言ってたって、りこちゃんが話していたよね。」
皆、笑いながら、うんうん頷きます。

以前、男の人は、甘いものをあまり食べなかったと思います。
いや、本当は好きでも、男子たるもの 甘いケーキなどは食さず…というのが通例だったと思います。

「でも その上司は隠すことなく堂々と甘いお菓子を好んで、特にバウムクーヘンが大好きだったんだよ。」

今はスイーツ男子は珍しくもありませんが、
当時は、恥ずかしい?ことだったのかもしれません。

「りこちゃんよりも、ずっと年上だから、戦争にも行ったんだよ。」
「うん、負傷して、どっちかの腕が途中までしか上がらないって言ってたね。」

戦後、食べるものも充分にない時に、たまたま貰って食べたパウンドケーキのようなものが、
とてもとても美味しくて、それから欧米の甘いものにはまっていったのだそうです。

「それで、バウムクーヘンに出会って、昔は今みたいに種類もなかったけれど、
こんなに美味しいものはないって大好きになったんだよね。」
「りこちゃんが、本当に嬉しそうに食べるって言ってたよ。」

りこちゃんが退職した後も、この職場の人たちは皆、仲が良くて、
よく皆で集まっていました。

「それで、りこちゃん、よくお土産にバウムクーヘンをもらって帰って来たんだ。」

今はもう鬼籍に入っていますが、毎日 大好きなバウムクーヘンを食べていると思います。

「りこちゃんに、そろそろ おやつ食べようよーって言ってくる!」

こざるちゃんが鼻歌を歌いながら、りこちゃんの部屋へ向かいます。

「りこちゃーん、おやつ、一緒に食べよう! 今日はバウムクーヘンだよ ! 」

こざるカフェは、今日も ゆっくりゆっくり
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
バレンタインデーは、自分用にチョコレートを買う日というのが主流のようですね。
よい毎日でありますように (^_^)

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