見出し画像

1920年代ミュージカル映画を一通り見てみた件

実は最近、下記記事で作成したミュージカル映画一覧表をもとに、ミュージカル映画を古い順にバシバシ見ていっています。そうです。ミュージカル映画マラソンをひとり黙々と敢行しているのです。

そして、今日やっと1920年代のものを見終えることができました。そこで、今回は1920年代のミュージカル映画について書きたいと思います。

1920年代ミュージカル映画とは

私のリストに含まれる1920年代の作品は19本。うちYouTubeに動画がアップロードされてるなどで家にいながら視聴可能なものは11本ありました。以下、特筆すべき作品について話します。

①『農園シーンでの歌』1926年

まずは、最古のミュージカル映画とされる1926年の『農園シーンでの歌』から。19世紀半ばにアメリカで大流行したミンストレルショーという大衆芸能。そんな昔の大衆芸能を彷彿とさせるような黒塗りの顔で黒人を演じ、ブロードウェイですでに大スターとなっていたアル・ジョルスンという歌手が3曲歌うのを記録した作品が最初のミュージカル映画でした。

一切の映像演出なしに固定カメラでただ歌唱シーンをとらえただけこの短編作品は、まだまだミュージカル映画と呼ぶには不十分に思えます。まるで、後のサウンディーズ*のようです。

②『ジャズ・シンガー』1927年

名作『雨に唄えば』でも取り上げられた押しも押される歴史的一作。U-NEXTで見放題で見ることができます。一般的にはこの作品の大流行で、トーキー映画が普及したとされているこの作品、こちらも主演はアル・ジョルスン。アル・ジョルスンは20年代他にも『シンギング・フール』という作品に出演し、こちらは『白雪姫』に抜かれるまで配給収入ナンバーワンとなるほどの記録的大ヒットとなりました。

「お楽しみはこれからだ」という名台詞はあまりにも有名です(わりと序盤でこのシーンは出てきます)。

が、歌唱シーン以外はまだまだサイレントでした。

③『ブロードウェイ・メロディー』1929年

ミュージカル映画の代名詞とも言える映画会社MGMの最初のヒット作はこちら。Amazon primeやU-NEXTで見ることができます。歌唱シーンやダンスシーンこそやや拙い部分がありますし、ドタバタの三角関係は決して見ていて面白いものではありませんが、一応第二回アカデミー作品賞受賞作でもあります。

というのもこの作品はショービジネスの裏側のドタバタを描くバックステージ・ミュージカルの先駆的作品でもあるのです。また、歌自体が物語で意味を持つようになったのもこの作品が初めてであり、ミュージカルナンバーが事前に録音されたのもこの作品が初めてだとされています。そういう意味で歴史的に重要な作品なのです。

④『ミッキーのフォーリーズ』1929年

アニメキャラが初めて歌を歌ったのがこの作品。このなかで歌われた世界初のアニメソングとされる「ミニーのユー!フー!」は、ミッキーマウスマーチが登場するまでディズニーのテーマソングとして愛されました。

⑤『ラヴ・パレード』1929年

同じく1929年、『ラヴ・パレード』という大傑作が誕生します。監督は洗練されたコメディ作品で著名なエルンスト・ルビッチ。これまでのミュージカル映画は、登場人物が歌手であることが多く、あくまでミュージカルシーンというのは歌手が歌を歌うだけであることが多かったのです。

が、この作品では、登場人物はあくまで貴族。そのため歌はセリフの延長線上として歌われます。そうです。いわゆる今私たちがイメージするような歌でストーリーや心情を語るミュージカル映画はこの作品から始まったのです。

上の記事でも書いたような、ミュージカルナンバーの導入の際に、①イントロのような音楽が流れ、②セリフがリズミカルに徐々になっていき、③最後に歌になるという流れもこの作品からといえるでしょう。

また、この作品の主演、モーリス・シュヴァリエジャネット・マクドナルドは、ミュージカル映画史上最初の人気コンビとして今後数々のヒット作を手掛けることになります。

エルンスト・ルビッチ監督作品ということだけあって、今見ても色あせないお洒落なラブコメ作品でもあり、そういう意味でも『ラヴ・パレード』こそが今も鑑賞に堪えるミュージカル映画のなかでもっとも古い作品だと言えるでしょう。

⑥『喝采』1929年

決して有名な作品とはいいがたいこの作品。Amazon Primeで見れる作品ではあるのですが、こちらは映像演出が素晴らしい作品となっています。

一般的にミュージカル映画といえば固定カメラが基本で、なかなか凝った映像演出はお目にかかれないもの。しかし、この作品ではフィルムノワールのような影を用いた演出や、ヒッチコックの作品かと思うような見事な長回しシーンがあったり、エイゼンシュタインの映画かと思うほどモンタージュが多用されたりと後にも先にもお目にかかれない凝った映像演出が楽しめます。

ストーリーもミュージカル映画では珍しく非常に悲劇的。スタジオ撮影が当たり前とされるなかで、ロケでの撮影シーンが組み込まれていたりとなかなか実験的な作品となっています。

⑦『ハレルヤ』1929年

オールキャスト黒人で製作された初の黒人ミュージカル映画といえばこちら。こちらもAmazon Primeでレンタル作品ではありますが見ることができます。

この作品、とにかく曲数が多く20回以上の歌唱シーンがあります。これは他の作品と比べて2倍ほど。音楽もブルースや黒人霊歌などが楽しめますし、何よりダンスシーンのクオリティはなかなかなものがあります。内容もショウボートを彷彿とされるような骨太なものとなっていて、1929年すでにこのような作品があったのかと驚かされます。

今回紹介した作品以外にも、ミュージカル映画の世界では避けて通ることができないショービジネス界の大物フローレンツ・ジーグフェルド自らが総指揮を執った『アメリカ娘に栄光あれ』1929年なども、豪華なレヴューシーンをカラーで楽しめるなどなかなか出色の出来となってました。

1920年代ミュージカル映画集計結果

せっかく表で管理してるので、いくつかグラフに集計してみたいと思います。

主人公の職業

まずは、主人公の職業。バックステージ・ミュージカルがメジャーな1920年代は、歌手・ダンサーが半数以上を占める結果となりました。これが1930年代、40年代となるとどうなっていくかが楽しみです。

制作・配給会社

ミュージカル映画の制作・配給会社といえば真っ先に思い浮かぶのはMGMですが、1920年代についてはアル・ジョルスン主演映画を数多くヒットさせたワーナー・ブラザーズとさまざまな作品を手掛けたパラマウントが一番作品数が多いという結果になりました。

実際、他の年代と比較してみると、MGM(緑)が他を圧倒するのは1940年代以降ということがわかります。(青は20世紀FOX、ピンクはパラマウント、薄緑がワーナーです)

ストーリー分類

ストーリー分類でも、やはりバックステージ・ミュージカルが最も多く4割近く、次に多いのがボーイ・ミーツ・ガールものとしている恋愛ものでした。こちらも時代に応じどのように変化していくのか楽しみです。

さいごに

こんな感じで暇を見つけてはミュージカル映画を見ていきたいと思います。1920年代は作品数もそこまで多くなかったですが、1930年代は200作近くある模様なのでかなり先になると思いますが、楽しみにしていてください。

*サウンディーズとは、1940年代に流行したミュージカル映画版のジュークボックスのようなもの。コインを入れると3分ほどのミュージカル映画を見ることが出来る。

この記事が参加している募集

おすすめミュージカル

おすすめミュージカル

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?