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内定企業のメリット・デメリットを整理してわかるのは、事実ではなく感情

転職サポートをしていて、複数社の内定獲得に至ったとき。
私は、各社についてのいくつかの情報を項目別に整理して表にまとめることをよくしています。

例えばこんな感じです。

【年収】
A社○(700万)
B社△(600万)
【働き方】
A社△(原則週5出社)
B社○(週2在宅可でフレックスあり)
【仕事内容】
A社△(これまでと全く同じ)
B社○(経験活かせるしチャレンジ要素もある)
【労働時間】
A社○(残業ほぼなし)
B社△(残業月40時間)

この例だと、A社は待遇は良いけどつまらないのかも。B社は待遇はやや劣るけど発展的な魅力があるかも。というイメージでしょうか。
なお、項目は必ずしもこの限りではなく、転職者当人が転職において重視している項目を扱うようにしています。

これらの情報を表でまとめると「頭の整理ができた」などの感想もよくもらえます。
そんな経験から、有用なことだと自信を持って言えるのですが、ただ一つ、私には疑問がありました。

というのも、項目の情報を並べてみると、明らかにX社の方が魅力的に見えるのに、実際に入社を決めたのは魅力的ではなさそうなY社だったということが、本当によくあるのです。

もちろん勝手に私の価値観でX社が魅力的と言っているのではなく、その転職希望者の価値観になりきって考えてみてX社が魅力的に見えるのに、なぜかY社が選ばれるということです。

さらには、新たに大事にしたい項目が出てきたとも考えにくいです。内定にいたるまで、転職において大事にしていることはさんざん話してきているので。

ちなみに、なぜY社に?と聞くと、「総合的に考えて」と答えるのです。本人もうまく言葉にできない様子です。

そういう人は入社を決めるにあたって、大事にしたいと言っていた項目以外に、いったい何が主要なファクターになっているのか、いつも疑問に思っていました。

そんな折にいまこちらの本を読み進めていて、下記の一節に出会いました。

プロコン・リスト(メリット、デメリットの一覧表)法の致命的欠陥は、具体的で測定可能な基準にとらわれ、感情面の考慮事項がないがしろにされがちなことだ。
(中略)
わたしたちの幸せの大部分は、こうした考慮事項(職場の雰囲気や将来の同僚たちとの相性など)によって決まるのかもしれないのだ。
p.199より 括弧内は引用者が追記

なるほど私がしていたのは、メリット・デメリットをまとめることであって、感情面については表の中にあまり組み込まれていなかったということなのかもしれません。

・表にある事実ベースの情報を見る限り、理屈で言えば魅力的なのはX社だ。
・ただ理屈は置いておいて、いま胸に湧いてくる感情はX社に傾いているだろうか。
・感情が追いつかないのは何故なのか、何に引っかかっているのだろうか。
・それは決断を下すのが怖いだけなのか
・理屈をひっくり返してでも感情面を優先したいのだろうか。

もしかしたら、こんなふうに思いを巡らせているのかもしれません。

私は、私の提示する表を使った後で聞く「頭の整理ができた」という感想を、「理屈の整理ができた」という意味で解釈をしていました。

でも、どうやら違ったみたいです。きっと「感情の整理ができた」という意味だったのでしょう。

そう、メリット・デメリットの整理には、確かに理屈ばかりが並びがちです。そして、理屈だけに沿って、「どこに転職するか」という重要な決断が下されることはほぼありません。

ただ並んだ理屈にも有益な効果があります。

これまでの転職者の様子を見る限り、理屈を並べてみることで、感情と向き合い、気持ちと折り合いをつけることに集中できるようになる効果があるようです。

その結果、ときには理屈を超越して、感情に重きを置いた決断がされることもあるんでしょうね。

これからは、「感情の整理をするために、メリット・デメリット(=理屈や事実)をまとめましょう」と転職者に案内ができそうです。

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