図1

新規事業アイデア発想のために、未知の欲求を発見するインタビュー活用の3段階


そのインタビュー活用方法、間違っているかもしれません。

インタビュー結果からアイデア発想を行う際、想定ターゲットにインタビューを実施し課題を探すという方法が一般的です。ターゲットにどのような課題があるのかを探り、その課題を解決するためのアイデアを発想する。WHITEの定義上、これはインタビュー活用方法の第1段階にも満たないです。もし、インタビューで出ている課題を解決するだけで魅力的な新規事業が作れるなら、誰かがすでに実現しています。前回の記事でも触れましたが、インタビューで出てくることのほとんどが既知の事実です。魅力的な新規事業を考えるためには、インタビューから未知の欲求を導き出す必要があります。

未知を発見し、あたらしい価値創出につながるインタビュー活用の3段階

未知の欲求はどうすれば導き出せるのでしょうか。ポイントは、インタビュー結果をそのまま捉えるのではなく、価値ベースで解釈しなおして思考を抽象レイヤーに引き上げることにあります。

図1:新しい価値を生む抽象思考のイメージ

これは、インタビュー実施からあたらしい価値を生み出すアイデア発想までの思考構造を図式化したものです。一般的なインタビュー活用は、具象レイヤーでインタビューの中の課題点を捉えて、そのままその課題を解決するアイデアを発想します。未知を発見するためには、インタビュー結果を自ら解釈し、背景にある価値観や意味を捉えて、関連付け、構造化し、インタビュイー本人に共感しながら、本人も知らない内なる欲求を導きだすステップが必要です。具体的な例を交えてその方法をご説明します。


第1段階:価値の抽出/事実を集め解釈する

想定ターゲット複数人にインタビューを実施するところまではよくあるインタビュー手法と同じです。(インタビュー設計にも「未知を発見するための設計方法」があります。こちらにまとめておりますので気になる方はご覧ください。)

まず、インタビューをボイスレコーダーなどで記録し、その内容を全文書き起こしたインタビュー発話録を用意します。(全部自分で書き起こしをすると、めちゃくちゃ時間かかるので外注をおすすめします。)
インタビュー発話録から気になる行動や発言を抜き出し、「なぜ、この人は〇〇をしたのか(しているのか)」を考えます。WHITEがよく活用する手法は、KA法です。KA法の詳細説明については安藤先生の「UXデザインの教科書」に詳しく紹介されています。

<KA法とは>
インタビューで取得した発話録から、KAカードと呼ばれるカードに分割して記入し、それらをグルーピング、構造化することで、ユーザーの自身も気づいていない本質的な体験価値を導出する手法。
(「UXデザインの教科書」を参照しWHITEにて記載)

インタビューの発話録から、KAカードと呼ばれるカードに
・出来事(状況、動機、行動、結果)
・心の声(ユーザーになりきる)
・価値(動詞+価値)

を記入します。

インタビューの発話録からKAカードへの抽出は下記のように行います。

このカードをインタビューの発話録から複数作成するところで第1段階は終了です。

★実践時のポイント
・行動や発言をそのまま扱うのではなく、価値として捉え抽象化する。
・個人ワークで書き出す
★記入時のポイント
<出来事>
・状況・動機、行動、結果のいずれか2種類をいれる
・ペインを集めるのではない
<心の声>
・インタビュイーになりきってつくる
<価値>
・動詞+価値(〜する価値)
・未充足の価値も記入する
・抽象度をあげすぎない
*抽象度をあげすぎると、「幸せになる」「健康になる」などという言葉に集約されてしまい、この後の分析ができなくなります。「少しでも長く健康でいる」などというように形容詞的な言葉を入れることで抽象度をコントロールすることができますが、抽象度のコントロールは難しいので、実際にやってもらいながら感覚を掴んでもらう必要があります。
★KAカード作成数の目安
WHITEが実施する場合は、1人1.5時間のインタビュー発話録からだいたい50〜150くらいのカードを作成します。

ここで実施しているのは「なぜ、この人は〇〇をしたのか(しているのか)」を、非常に細かいメッシュで考えて、インタビュイーの背景にある価値観を可視化することです。また、複数のKAカードを作成しているうちにインタビュイーへの共感度が高まって来ます。

第2段階:上位概念の創出/抽象レベルで関連付ける

第1段階では、インタビューを通して知ったユーザーの行動や発言の背景にある価値をKAカードで集めることができました。
次は、抽出した価値に着目します。抽出した価値を、さらに抽象レベルで分類・ラベリングし、まとまりでの上位概念を創出します。
具体的に説明するために、高齢者の欲求を抽出するために普段の生活に関するインタビューを実施した時に作成した、KAカードとグルーピングの例をお見せします。

作成したKAカードの価値部分に着目し、KJ法の要領で似ている価値同士をグルーピングしていきます。
例えば、

このように、KAカードをある程度まとめたら、そのまとまりに対して上位の価値として抽象ラベルをつけていきます。先ほどの例にWHITEでは下記のようなラベルをつけました。

このように、第1段階で出てきているKAカードの価値部分を、KJでグルーピングしながら上位のラベルを付けていくことを繰り返します。

★実施時のポイント
・こちらもまずは、個人ワーク。そこからグループ3~5人で実施する。
 ※グループで実施してしまうと、ラベルが雑になりがちです。
   独創してから仮説を持った状態で、グループワークをすることで、声が大
   きい人の意見に流されることが無くなります。
・小さい分類からはじめて、徐々に大きい分類にする
・どれも分類されないものは無理に分類しない(捨てるのではない)
・ラベルを抽象化しすぎない(KAカード作成と同様)

異なる事象、行動でも背景にある価値が同じものがあります。それらをグルーピングすることで、雑多な価値の中からより重要な価値を把握することができます。このグルーピングができれば第2段階が終了です。
第2段階だけでも、通常のインタビューよりは欲求に近づけますが、まだまだ足りません。


第3段階:構造化してストーリーをつくる/潜在欲求抽出

第2段階まででインタビューで知り得た事実から、抽象レベルの重要な価値を把握することができました。ここまで実施すれば、各価値のグループの間に何かしらの関係性があることがわかります。その関係性を構造化してストーリーにすることで根本にある最も重要な価値(本人も気づいていない欲求)を把握します。

先ほどの高齢者の例を構造化したものを見てみましょう。

このように、第2段階でまとめた価値の間にある関係性を線で繋ぎ、構造化していきます。この時注意すべきが、最初から結論ありきで整理しないでください。我々が実施しているのは、あくまで未知の欲求を発見するための探索です。なのでボトムアップで構造を考えて下さい。そうしないと、発見のない予定調和な結論になります。

構造化する時の線ですが、決まったルールはありません。WHITEが実施するときは、主に下記ルールで構造化しています。(実際にやってみながら関係性のルールを考えてみてください。)


上記の線を活用しながら、抽出した価値を繋げ構造化していきます。

★実施時のポイント
・これも、個人ワーク。そこからグループで議論。(理由は同じ)
・結論ありきで構造化しない。未知を探索しボトムアップで構造化する。

次に、構造化したものから重要そうな価値を探索していきます。
重要そうな価値を発見するには下記のような深堀の視点で構造をさらに深く分析していきます。(視点は一例です)

深堀の視点で先ほどの高齢者インタビューで作成した構造の中で、重要そうな価値を見ていきましょう。たくさんの線が出ているものは緑、対立関係は両矢印など視覚的にわかりやすく記載していきます。(カラーリングなどにルールはありません。説明がしやすければなんでもいいです。)

重要そうな価値を把握しながら、構造を説明する時にキーワードとなりそうな言葉をさらにプロットしていきます。プロットしていくために、先ほどの深堀の視点でさらに深く分析していきます。高齢者の例では、下記のようにプロットしていきました。

ここまでの3STEPを経て、WHITEでは最も根本的な価値として、赤い部分がかなり重要ではないかという結論にいたり、高齢者には「少しでも長く、現在の生活を維持したい。」という潜在的欲求があるのではないかと定義しました。
この欲求定義は我々にとって、高齢者市場に対して新しいサービスを検討する場合における重要な発見でした。高齢者の生活に単純に新しい要素(サービス)を入れ込むだけでは、潜在的に「少しでも長く、現在の生活を維持したい。」という欲求にマッチしないため上手くいかない可能性が高いということです。背景にある「少しでも長く、現在の生活を維持したい。」という欲求を満たしつつ、どのようにして生活上に新しい要素(サービス)を組み込んでもらうか。という新しい問いの設計ができ、新しいサービスの検討を進めることができました。

まとめ

以上のように、インタビューを解釈し、構造化することで、どのような価値観(欲求)があるのかを探索できるようになります。新規事業・サービスアイデアを考える際に、対象が抱える既知の課題やペインだけを見ていてはたどり着けなかった新たな問いを立てることができるようになります。新たな問いが設計できれば、その問いの解決法を考えるだけで、これまでにないあらたな解決方法が高い確率で導き出せるようになります。(ただし、あくまでインタビュー結果を分析することで導き出した「仮説」だということを忘れてはいけません。絶対的な正解はないということです。)

この方法は、繰り返し実践していくことで精度が上がっていきます。実際の新規事業開発で繰り返し実践し、実績が出ているやり方ですので、ぜひ一度あなたの新規事業開発でも挑戦してみて下さい。

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