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山本山のおばあちゃん

#新生活をたのしく  っていうハッシュタグを見つけて故郷の滋賀県湖北から京都に引っ越してきた時のことをなんとなく思い返していたところ、一昨日の毎日新聞の記事が目に入りました。

 「山本山のおばあちゃん」って何のことかわかりますかね。山本山っていうのは地元にある山の名前。上から読んでも山本山、下から読んでも山本山の海苔の山本山ではありません。ちなみに山本山は下から読んだら「まやともまや」なんですがそういうことを指摘するのは野暮、というか粋じゃないですよね。すみません。はい。山本山は東京タワーよりも少し低い地元湖北の山なんです。おばあちゃんは毎年この山に渡来する雌のオオワシのこと。ロシアのオホーツク海沿岸から越冬のため、1羽だけでやってきます。今季も昨年11月に無事渡来していまして、これで24年連続なんだそうです。

 「山本山のおばあちゃん」なんていう愛称まで付いて親しまれているのにあまりピンと来ない理由がわかりました。昨年11月で24年連続ですから、昨年11月時点で41歳だった私は「山本山のおばあちゃん」が初めて渡来した時、17歳です。当時私は高校3年生。年が明けて受験に突入、無事立命館大学に合格し、3月下旬には京都での新生活を始めたわけですから「山本山のおばあちゃん」とは、ほぼすれ違いの純情だったわけです。たまに冬場に実家に帰ると確かに「山本山のおばあちゃん」を撮影しにきている人たちが山の麓にたくさんおられるのを見ますが、私は「ふーん」くらいなもので価値がわからないのは哀しいことだと思います。

 金閣寺の少し北の「ハイツ金閣」というアパートに住むことになったのはいろいろ候補があるなかで一番名前が面白かったからです。実際「どこ住んでるの」と聞かれて「ハイツ金閣」と言うとそれなりにウケて人見知りの私もわりとすぐに大学生活に馴染めた気がします。高校時代は家から学校まで自転車で40分かけて通っていたので金閣寺の北から四条河原町とか京都駅のあたりへ自転車で行くのは全然しんどくなかったですが今ではちょっと考えられません。

 新生活初日はまずプレーステーションを買いに行きました。親から離れてまず最初にしたのがプレステ購入とは今思えば恥ずかしいですがとにかく誰に咎められることなくゲームができる喜びをすぐにでも感じたかった。たぶんビッグサイズのポテトチップスも買って帰ったと思う。あれを一人で食い切ることもちょっとした夢でした。驚いたのはロッテのチョコパイの高さです。うちの母親がよく買ってきてくれていたのですが、こんなに高価なお菓子をあの人は僕たち子供のために買ってきてくれていたのかと涙が出てきましたね。些細なことかもしれませんがそんな些細なことさえ知らなかった。思い返せば恥だらけですが24年も前の自分を誇らしげに語るより、恥ずかしく思える人生は悪くないとも思うのです。

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