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読書の記録 池井戸潤『オレたち花のバブル組』

 『オレたちバブル入行組』に続く半沢直樹シリーズ第2弾。テレビドラマ「半沢直樹」の後半部分の原作です。伊勢島ホテル再建を目指す半沢の奮闘を描いています。ドラマを見ているので内容は全部把握しているといってもいいのですが、小説は小説で読むとやっぱり面白い。東京への新幹線旅のお供には、このくらい、とっつきやすいやつがいいだろうと思って持っていったんですが、結果、ホテルでもずっと読んでしまい、帰りの新幹線に乗り込む前に読破してしまった。シンプルに面白い。

 大和田と半沢の過去の因縁はドラマオリジナルですし、伊勢島ホテルの羽根専務がドラマでは女性ですが小説では男性ですし、ドラマでは大和田と半沢は確かどちらも旧産業中央銀行出身ですよね。小説では大和田は旧東京第一銀行出身です。いろいろ違いはあるんですが、見事なまでに設定の変化が「吉」と出ているのが、ドラマ版の素晴らしいところだと思います。小説もめちゃくちゃ面白いですが、ドラマ化にあたり、最大限、劇的なドラマになるように設定を変えてあります。

 半沢直樹は銀行という組織でもはや「当たり前」とされている悪習に対して、毅然とした態度で「No」を突きつけるのがかっこいいんですよね。腐臭漂う組織相手にそれをやり続けるのは大変なことです。組織の側は、現実社会では、そのような人物を放っておきませんし、弱い立場の人間は滑稽なくらい責任を押し付けられて笑っちまうくらい容易くちょん切られてしまいます。弱者の意見など採用されることなく、強者の理屈でしか組織は動いていきませんし、仮に半沢直樹のように組織にとって「痛いところ」を突いたとしても、とんでもない勢いで逆ギレされ、こちらはこちらで半沢直樹のように開き直って意見し続けることもできません。組織は立場が優位であることを利用して、弱者の口を塞いでいきます。

 ほんまにしょーもない。

 そのほんまにしょーもない組織の理屈に真正面から立ち向かう半沢直樹がやっぱりオレたちにとってはカッコいいわけなんだな。組織の偉い人には、あの半沢直樹にしびれてしまう感性が無いのでしょうか。あってほしいけど多分無いんだろうな。

 今、必要なのは「あんなやつ、現実世界にいたら即クビだろう」なんていう、1ミリも面白くない腐った正論ではなく、せめて、あの半沢直樹の心を打つ言葉たちを聞き、自らの姿勢を省みることではないかしら。なんてことができる組織なら腐らないんですよね。いやはや、なかなか難しい。

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