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読書の記録 中村桂子『科学はこのままでいいのかな』

10代の身近なQuestionに答え、探求(Quest)することの大切さを伝える「ちくまQブックス」シリーズ第2弾8作め。

JT生命誌研究館名誉館長で理学博士の中村桂子さんは、難しい科学の話をとてもわかりやすく説明してくれ、面白い文章を書く方なので前から好きなんです。

自然の中に人間があるはずなのに、どうして人間は自分たちは特別だという見方をしてしまうんでしょう。例えば「地球に優しく」という言葉一つとってみても、他の生きものたちを外から見ている感じがしますよね。なんというか、「うちの会社はこのままではダメだ」と社員が言っているのに近いものがあります。人間もバクテリアもみんな同じ「生きもの」です。科学は私たちが生きものたちと共にあることを明らかにしたのだから「上から目線」ではなく「中から目線」が重要だと中村さんは書いています。

「効率がよい」「手がかからない」「思い通りになる」というのが便利な道具の条件ですが、人間がそうではないことは子育ての効率の悪さ、手がかかり決して思い通りにならないことでも明らかです。それなのに近頃は、人間にさえ、効率がよく手がかからず、思い通りになることが求められてはいませんかね。例えば、仕事でそういうこと、求められたりしませんかね。そんな仕事なら機械に任せておけばよい。人間は生きものなのにね。中村さんは「生きものは複雑で、しかも矛盾だらけ」と書きます。もちろん人間は「生きもの」ですから、もちろん、複雑で矛盾だらけです。それなのに、単純で矛盾のないように生きることが是とされる風潮があり、息苦しさを感じていたところ、中村さんの文章に巡り合えてよかった。

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