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短編小説『本末転倒株』

最近ニュースなどで「インド由来のデルタ株」と耳にするが、特定の国や地域が要らぬ偏見に晒されないようギリシャ文字を使うということだったはずである。「デルタ株」だけではわかりにくかろう、という配慮なのかもしれないが、本末転倒甚だしい。「デルタ株」と呼ぶと決めたのであれば、貫かないといけない。「インド株と呼ぶのはいかがなものか」「それではデルタ株と呼ぶことにしましょう」「デルタ株ではどこ由来かわからん」「それではインド由来のデルタ株と呼ぶことにしましょう」で話は振り出しに戻ったにも拘らず、一周回ったおかげで余計なものがくっついてしまった。各方面に都合の良い顔をするからこうして本質がぶれる結果となる。「インド由来のデルタ株では結局、何も隠れていないではないか」「それでは印由来のデルタ株と呼ぶことにしましょう」「それならインド印のデルタ株のほうがわかりやすい」「いや、だから、わかりやすいのがダメなんだよ」「何!?わかりやすいメッセージでなければ国民には届きませんぞ」「それでいいのです。国民には大事なことは届かないくらいがちょうどいいのです」「横文字を使うほうが焦点がぼやける割にイメージを刷り込めるからいいと思いますわ」「百合子さんはさすがに言うことが違うね!」「お褒めいただき、光栄ですわ」「この際、百合子さんに名前を付けてもらいましょう」「ウインド・オブ・ガンダーラでどうかしら」「おー、それなら国民をテキトーに誤魔化せそうですな」「まったく百合子さんにはかなわないなー」

いま、日本の東京を中心に百合子株が急上昇しているらしい。

#令和3年8月12日  #コラム #エッセイ
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