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岡山の霊能力者【稲川淳二オマージュ】

とある岡山に、心霊治療を行うという霊能力者がいると聞いて、取材に行ったんです
撮影は翌日予定でしたが、ディレクターと一緒に先に挨拶をしておこうと、そちらに向かいました。中年くらいの女性が出迎えてくれたんですが、驚いたのは、たくさんの人がその場に集まっていたことです。全国から集まった人たちが、医者に見放された病気を治してもらおうと来ているんです。まるで宗教のような光景でした。

彼女の治療方法を観察していると、手をかざしたり撫でたりするだけで治るというんです。正直、私は信じられませんでした。そんな簡単に治るわけがないと。すると彼女が七輪をスタッフに用意させ、大きな鯛を焼き始めました。集まった人たちの前で手をかざしながら鯛が焼けるのを待つその姿に、妙な感じがしました。

その時、彼女が言いました。「稲川さん、普通、魚を焼くといい匂いがすると思いませんか?かいでごらんなさい、臭いから」。確かに、嫌な臭いがしました。鯛なのに、そんなはずはないんです。でも、本当に嫌な臭いがするんです。私は何か細工でもしているのかと疑いました。

鯛が焼けると、彼女は「稲川さん、ちょっと見てください」と言い、魚を割きました。「この人の悪いところが魚に出てくるんです。悪い箇所だけは絶対に焼けませんからね」。内蔵を開くと、一箇所だけ焼けていない部分がありました。他の部分は焼けているのに、まるで魔法のようでした。

その日はそのままホテルに戻り、ディレクターと一緒に倉敷辺りで飲みに出かけました。良い気分になってホテルに帰り、それぞれの部屋に入った瞬間、私の部屋が線香臭くて驚きました。すぐにディレクターを呼んで部屋に来てもらいました。

「何、この臭い…お線香ですよね?」ディレクターも不思議がりました。フロントに確認しましたが、誰も来ていないし、自分たちも何もしていないと言います。この臭いの原因はわからないまま、その夜はそのまま眠りました。

翌朝、スタッフと合流し、再び霊能力者のもとへ向かいました。到着すると、彼女が開口一番に言いました。「稲川さん、ホテルの方へいらっしゃいませんでしたか?」。私は驚きました。

「えぇ、なんでですか?訪ねてきたんですか?電話ですか?」「いいえ、電話はしていません。私の気が行ったんです。稲川さん、お部屋の中、線香の臭いがしませんでしたか?」「しました、かなりきつかったですよ」「あー、私が行くとそんな臭いがするんですよ。もっとも、私の気が行ったんですけどね」。

その時、信じられないことが本当に起こるんだと実感しました。ホテルに確認しても、誰も私の部屋には訪ねていない。彼女の気だけが訪ねてきたんです……。

(了)


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