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六甲山中の幻影―メリーさんの館の謎【稲川淳二オマージュ】

大阪でラジオ番組をやっている城田さんが話してくれた恐怖体験についてお話しします。舞台は兵庫県の六甲山中、あるいはその近辺。そこには「メリーさんの館」という名前の不気味な洋館が存在すると言われています。この話はかなり古くから伝わっているもので、その館を実際に見た者と見ない者がいるというのです。

城田さんは友人と一緒に「メリーさんの館」を探しに出かけました。彼らは車で山中を走り回り、夕方になってもその建物を見つけることができませんでした。「もうそろそろ帰ろうか」「いや、もうちょっと探してみよう」と会話しながら車を走らせていると、友人が「おい、あれちゃうか?」と指をさしました。高い木々の間に、西洋館風の屋根が見えたのです。

「行ってみるか?」と、二人はその方向へ向かいました。探しても見つからなかった洋館がそこにあるとは信じられない気持ちでしたが、腐りかけた鉄の門が開かれているのを見て、恐怖心を抱きながらも中に入っていくことにしました。

中に入ると、地面は何年も積み重なった落ち葉で埋め尽くされていて、歩くたびに落ち葉が舞い上がります。しばらく進むと、腐りかけた看板が見つかり、横文字が書かれていました。「これは外人さんの家に違いない。ここがメリーさんの館だ」と二人は確信し、玄関の扉に手をかけました。ドアは簡単に開き、中には広い空間が広がっていました。正面には階段があり、一階の右手の部屋を覗いてみることにしました。

部屋の中は埃だらけで、誰もいませんでした。嫌な感じがしながらも、次の部屋を見に行きましたが、やはり同じく不気味な雰囲気でした。階段を見上げ、二階に行くことにしました。階段は今にも崩れそうで、ギシギシと音を立てました。

二階の右側の部屋の扉を開けると、眩しい程の光が差し込んでいました。その部屋は異常に明るく、長く居るべきではないと感じた城田さんは、ドアを閉めました。しかし、ここまで来たのに帰るのは悔しいと思い、もう一度階段を上がり、中央の部屋のドアノブに手をかけました。自分の中で「開けるな」という警告がありましたが、好奇心に負けて少しだけドアを開けました。

ドアが開いた瞬間、建物の中には自分一人しかいないはずなのに、「ザワザワザワ」という声が聞こえました。怖くなり、ドアを見たまま後ろ向きに階段に戻ろうとしましたが、戻った瞬間、後ろに気配を感じました。後ろに誰かがいる、確実に誰かがいるという確信がありました。

階段を降りるしか帰る手段はありませんが、後ろに確かに誰かがいるという恐怖に襲われました。意を決して振り向くと、そこにはヨーロッパ人の子供たちが一面にいて、全員が真っ白な目でこちらを見ていたのです。「悲鳴をあげた瞬間、何かに飛ばされて、次に気がついたのは病院のベッドの上でした」と城田さんは話してくれました。

友人は「お前、俺がぐるっと庭を周ったら、庭に倒れてたぜ」と言いましたが、自分は確かに建物の中にいたはずなのです。悔しい思いを抱え、後日他の友人三人と再びその場所を訪れましたが、建物はどれだけ探しても見つかりませんでした。

この「メリーさんの館」の話は、もう何十年も前から語り継がれており、かつて第一次大戦の頃にドイツ人の子供が収容されていた施設だったという史実があるのです。しかし、その場所を知る者は誰もいません。たまにそこへ行ける人間がいるというだけです。


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