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動的バランスと静的バランスは全く関係ない

こんにちは。理学療法士のこうやうです。

今回は

「バランス」について話していきたいと思います。

これに関しては過去の記事でも触れてはいますが

結構重要なものだと思っているので

私なりに書きたいと思っています。

よろしくお願いします。

それでは始めます。


静的バランスができてから動的バランス?

理学療法業界では

バランスは静的と動的で分けられております。

臨床でよくあるのは

”片脚立位ができてから杖歩行”

というものですよね。

いきなりではありますが

この流れはまったくもって意味がないと断言します。

なぜかといえば

タイトルの通り

静的バランスと動的バランスは全く別のものだからです。

まずそれぞれがどのようなものであるか

説明をしていきます。



静的バランスの特徴

静的バランスとはいったいなんなのでしょうか。

動作でいうと

片脚立位、立位保持、タンデム保持など

がありますよね。

これを力学的にとらえると

重心を支持基底面に入るように制御しています。

これが一つ目の特徴です。

時間的な観点からみると

長い時間保持できるほど静的バランス能力が高いと評価されるわけですから

必然的に時間を伴うものといえます。

また床反力は常に重心と方向が向き合っているため

回転トルクが起こらない状態です。

片脚立位を例にして図で表すと



静的バランス

赤・・・床反力  緑・・・重力


といった感じです。

まとめると

静的バランスの特徴
・重心を支持基底面に制御する行為
・時間を伴う
・床反力と重力が打ち消しあっている状態であり、回転トルクが発生しない

というような感じです。


動的バランスの特徴

では動的バランスの特徴はなんでしょうか。

これは力学的にとらえると

床反力の制御といえます。

例えると

足を一歩踏み出した瞬間に床反力が発生するわけですが

この床反力に対して

前方への推進力のベクトルと重力のベクトルを合わせた

合成ベクトルで制御するということです。

図で表すと

動的バランス

赤・・・床反力 緑・・・重力 黄・・・推進力 青・・・合成ベクトル


といったような感じです。

この床反力の制御は一瞬のうちに起こります。

1秒かかった時にはもう転びますね。

そして床反力と合成ベクトルは必ずしも向き合っているわけではないため

回転トルクが発生する場合がほとんどです。

まとめると

動的バランスの特徴
・床反力の制御をしている行為
・時間は一瞬
・回転トルクが発生する

といったような感じです。


静的バランスと動的バランスが関係ない理由

ここまで理由を説明してきたため

お察しになられてる方もいるとは思いますが

三つほど挙げます。


①時間的概念から一致しない

先ほども説明しましたが

静的バランスは長時間を前提とする
動的バランスは一瞬を前提とする

というようにまったくもって違います。

静的バランス能力が向上したところで

動的バランスに反映できるとは思えません。


②バランスを崩す機序が違う

静的バランスにてバランスを崩すのは

重心が支持基底面から外れる

ことですが

動的バランスにてバランスを崩すのは

回転トルクを処理できない

ことです。

そもそもの原因が全く違うんです。

このバランス評価をする理由も主に

転倒リスクの指標とするためですが

ここまで違うとバランス検査も考えてやらなければいけなそうです。


➂姿勢が違いすぎる

三つ目はこの能力を発揮しているときの姿勢が違いすぎる点です。

どういうことなのか

とある写真で説明していきます。

画像3

https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/otherballgame/basketball/2019/09/07/___split_20/ から抜粋

これはバスケをしている選手です。

ドリブル中のため、動的バランスですね。

そして明らかに支持基底面から外れてはいないでしょうか?

そうです。

動的バランスを発揮するときは

重心が支持基底面から外れた状態が圧倒的に多いんです。

ですからそもそもの発揮される条件が違いすぎます。


そもそもバランスでひとくくりにしてはいけない

このように静的バランスと動的バランスでは

まったくもって違う運動です。

よく動的バランスの要素の一つとして

静的バランスがある

とはいいますが

それはただの勘違いだといえます。

動的バランスのエクササイズを行い

先輩から

「負荷が高いからスタティックな動作から始めたほうがいい」

とのアドバイスをもらいますが

そんなものはくそくらえです。


まとめ

動的バランスと静的バランスという単語を作り出したやつは罪深い


本日はこれで以上です。

このように日々当たり前とされていることも

全く根拠がない場合がたくさんあります。

常識は常に疑っていきましょう。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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