股関節屈曲の謎の常識
こんにちは。理学療法士のこうやうです。
今回は股関節屈曲動作に触れていきたいと思います。
よく臨床で股関節屈曲のROMを
やった際にいわれるのが
「骨盤後傾の代償はどうだった?」
というものです。
これは臨床に出ている方なら
誰もが聞かれたことがあったり聞いたりしてると思います。
この”常識”に対する私なりの疑問をぶつけていきます。
骨盤後傾の代償とは
これは主に骨盤と腰椎の運動の障害といわれています。
臥位あるいは立位での股関節運動には、骨盤・腰椎の運動が伴います。
骨盤大腿リズム、あるいは腰椎骨盤リズムとして、
股関節と骨盤・腰椎が協調していますが、
骨盤・腰椎の運動が過剰になったり制限されたりすると
股関節や仙腸関節、腰椎の障害に繋がります。
この例の一つとして挙げられるのが 骨盤後傾の代償というわけですね。
この骨盤後傾が過剰になると、
椎間板内圧の上昇など腰椎の過剰屈曲による問題が生じやすくなります1)
臨床では股関節屈曲をした際に
対側下肢が浮くかどうかで評価する場合
が多いですね。
股関節屈曲時の骨盤の動きの正常範囲は
まず骨盤はどれほど動くのでしょうか。
吉尾らの研究によると、骨盤の後傾を含まない
純粋な股関節屈曲角度は93°であり
残りの30°~40°は骨盤運動にて行っていることが示されました2)。
またBohannonらの研究3)によれば股関節屈曲(124.3°)で
骨盤後傾は34.2°まで動いたという報告もあります。
こうみると実は股関節屈曲って1/4ぐらいの角度は
骨盤後傾で行っているわけです。
しかも骨盤は健常者では股関節屈曲8~10度で骨盤が始動すると
言われており、骨盤の動き無くして股関節屈曲はできないんです。
骨盤後傾の代償は何が問題なのか
骨盤後傾の代償の基準として
「股関節屈曲時に対側下肢が浮いてくる」
というのがありますが
果たしてこのような目先の基準で代償しているかわかるでしょうか。
私は絶対にわからないと思います。
なぜかというと骨盤は見た目よりも大きな動きをしているためです。
では対側下肢が浮いてくるのは何が原因なのでしょうか。
私は
①対側下肢の股関節屈曲拘縮
②骨盤回旋運動不足
だと思っています。
①対側下肢の股関節屈曲拘縮
私のイメージではありますが股関節屈曲拘縮のある方は
股関節屈曲すると間違いなく、対側下肢があがってきます。
これはなぜかというと、
片側股関節屈曲による骨盤後傾運動をすると
健常者は股関節前面の筋群や組織に柔軟性があるため
重力に従い、対側の大腿骨にほぼ動きがありませんが
屈曲拘縮のある方は股関節屈筋群が緊張しているため
大腿骨を挙上してしまうからです。
ですから骨盤に問題があるのではなく、
対側下肢の問題ととらえるほうが前者に比べ明確だと思います。
腸腰筋のストレッチでも同じような状態のエクササイズがありますからね。
②骨盤回旋運動不足
小川らの研究4)によると、大腿挙上運動直前から
大腿挙上側の骨盤回旋運動が行われ
股関節屈曲時の骨盤回旋運動の重要性が示唆されています。
骨盤回旋運動ができるのであれば対側下肢が挙がってくるはずはありませんから
骨盤回旋運動の制限が考えられます。
ではその制限因子とは何でしょうか。
それは前者と同じく股関節周囲筋群の柔軟性低下だと思います。
大腿骨が動かないと骨盤も動いてくれませんからね。
おそらく股関節屈曲で骨盤の回旋ができない方は
歩行でも骨盤の回旋運動ができていないと思います。
歩行時の骨盤回旋運動は身体重心の動揺を軽減するのに役立っている5)
ため、歩容の修正をする必要があると考えます。
まとめ
①骨盤後傾の代償は骨盤後傾が問題ではない
②股関節屈曲で骨盤後傾は必須
③股関節周囲筋群の柔軟性低下が疑われる
④骨盤の回旋運動ができていない
今回はこれで以上となります。
日々臨床で当たり前とされていることも疑ってかかるのは
重要だなと実感しております。
ですからどんな情報でもちゃんと吟味して情報共有するべきです。
たとえセミナーのお金を払っていたり信頼している先輩のいうことだったり
しても間違いは間違いですから気を付けていかなければならないですね。
私が発信している情報含めて。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
参考・引用文献
1)市橋 則明 : 身体運動学 関節の制御機構と筋機能 株式会社 メジカルビュー社 2017
2)吉尾 雅春 他 : 新鮮凍結遺体による股関節屈曲角度 理学療法学 2004
3)Bohannon RW .Gajdosik RL ,et at .: Relutionship of pelvic and thigh motiolls during unilateral and bitateralhipflex−ion,Phys Ther
65 (10): 1501 −1504,1985.
4)小川 智美 他 : 大 腿挙上運動における股関節屈曲と骨盤後傾運動 のリズム 理学療法学 第29巻 第4号 :U9 〜122頁 2002
5)Neumann KG:観察による歩行分析.医学書院,東京,2005, pp35-36.
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