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【連載】第6次本州紀行~苫小牧→名古屋→大阪→敦賀→苫小牧~第9話「夜光」 ※ホテル禁止

(5)大阪駅~敦賀港「夜光」

今何かと話題のサンダーバードに乗車。かつては富山まで走っていた関西・北陸の長距離特急も、今や敦賀止まりとなり、すっかりその風格がなくなってしまった。今回の電車の停車駅は新大阪・京都のみである。客はそこそこ多く、車内は狭い。乗り心地もあまり良くはなかった。所詮自由席が指定席になっても座席のグレードが上がるわけではないのだ。車内販売もなく、特別感は一切ない。急行と同じだ。「速ければそれでいい」という速度至上主義。こんな体たらくではこの国の未来などないであろう。

ここで首と頭が痛み始める。重い荷物を背負って歩いてきたこと、人混みによる疲労、両方祟ったのだろう。苦痛の時間が始まった。幸い隣に人が乗ってこなかったので、スペースにゆとりはあったが…。辛い。
本来は在来線でゆっくり行っても良いのだが、なにぶん大阪の鉄道事情がわからないから、特急を使った次第だ。
確かに、ホームの構造や発車時刻は事前に予習できる。しかし、乗り継ぎにどれくらい時間がかかるか、乗り心地はどうか、人混みによる疲労度はどうなるか、というのは実際に行ってみないとわからない。
今回、ホームの確認はすぐ終わったが、人混み疲れは想像以上だったし、特急の設備などわかるはずもないから、使って確かめるしか方法がなかったのだ。

だが、辛い時間も永遠に続くわけではない。19:31、敦賀駅到着。乗換の不便さで不評な駅だが、私はここで降りるのでその苦行は味わうことなく外へ出られる。
とはいえ、一応在来線乗り場も確認しておこう。新幹線を使う予定は今後もないが、在来線は使う可能性がある。動くエスカレーターも整備されていてハイテクだが、新幹線駅共通の無機質さ、ケバケバしさは拭えない。札幌も新幹線が開通したらこうなってしまうのだろう。札幌を味わいたい方は新幹線が開通するまでに訪れることをおすすめしたい。おそらく、開通によってケバケバしくなることは間違いないであろうから。
まあそれは本題ではないから置いといて、駅の外に出る。この駅は東西自由連絡通路がないらしいので、出口には注意しなければならない。東北新幹線の一ノ関駅と同じである。地元民の利便性を考えないデザインにがっかりしながら、外へ出る。

驚いた。何もない。もっとも、市街地は逆にあるし、暗いからそう見えるだけで、実際には色々あるのだろうが、何もないように見える。
ただ、虫の鳴き声と涼しい風は良い。大阪の喧騒から一気に静かになり、とりあえず落ち着けそうだ。
ナビを起動し、フェリーターミナルへ向かう。
実は今回の旅、当初は東海道線か中央線で大宮に向かい、宿泊して北上し、東北から帰る予定だった。
しかし、名古屋から敦賀に行けば日帰りできることを発見し、このルートに変更したのだ。敦賀→苫小牧は毎日運行されているから、旅程に組み込みやすかった、というのもあるが。

中心市街地を歩いていくが、店は殆ど閉まっており、開いているのはコンビニくらいである。港が前方に見えてきたが、これは古い港らしい。新港は別の場所、アンダーパスをくぐった先にあるようだ。ここでもナビの経路がよくわからず、多少ロスが生じた。
パスをくぐると、そこは巨大セメント工場エリアだった。『サルゲッチュ ミリオンモンキーズ』のコンビナートステージを彷彿とさせる場所である。当然、こんな時間にこんな所を歩く人は私以外におらず、孤独の旅、ここに極まれり。

ここまで来るとコンビニすらない。あの青森フェリーターミナルさえ、近くにファミリーマートがあったというのに、ここは工場があるばかりだ。今まで訪れたフェリーターミナルの中では最も旅情に欠ける場所だといえる。
だが、逆に深夜の工場地帯を歩く、というのもホラゲ的不気味さを体感でき、味がある、とも言える。要は考え方ひとつで変わるのだ。
ターミナルにはそこそこの人がいるが、殆どクルマ利用者だろう。まあ結末は苫小牧到着後、明らかになるが。

敦賀フェリーターミナル

大阪の喧騒を早く抜け出したい一心だったので、晩ごはんは食べておらず、空腹に悩まされていた。土産物屋で越前そばを買い、自動販売機でアイスを買う。広い待合室で出航時刻まで待つ。船出は23:55である。
出航案内が流れ、クルマ客が先に乗り込む。だが、徒歩組も結構残っている。私以外にも徒歩客が結構いるのかもしれない。

新日本海フェリー


船はなかなかの設備だった。ルームランナーもあるし、カップ麺の専用コーナーもある。寝台のクオリティも悪くない。20時間ほどの旅になるが、すでに40時間の船上「生活」を経験したばかりの私にとってはぬるま湯に浸かっているような気分だ。二晩越さなければならなかったあちらと違い、こちらは一晩越せば終着である。勝ったな。風呂入ってくる。
…と思って浴室に行くと、そこそこ人が入っている。人間考えることは同じ。さっさと湯浴みをしたいのだろう。
当然そんなことはわかっている。わかっている。一応確認しただけだ。
後で人が減ってからもう一度来ることにしよう。人が多いと忙しなくなってわろし。
カップ焼きそばを食べ、その後入浴し、歯磨きをしてから寝台へ。押し寄せる眠気に身を任せ、旅の思い出を振り返りながら眠る。
夜なので何も見えないが、明日の朝には美しい日本海が目の前に広がっていることだろう。
(続く)

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