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【書籍紹介】『里山産業論』(角川新書) 金丸弘美 著

金丸弘美『里山産業論』(角川新書)を読みました。里山の食を活かした地域振興の本です。

著者はまず、まえがきで農業の集約化・大規模化・企業化を批判します。日本には中山間地域が73%あり、そうした方法は適さないからだそうです。
むしろ、多様で特徴のある商品開発で差別化を図る、加工や食べる場所まで担い、地元雇用を増やす、周辺環境に配慮することで名所旧跡なしに人を呼ぶチャンスを作ることを提唱。
地域住民に対しては、

・自分たちの置かれた状況を知るために、海外を含めた外部に赴く。そして地元の持ち味を外部視点で見直す
・安心、安全、環境に良いものを残す
・付加価値の高い商品を作る
ことなどを提案しています。具体例として、イタリアのスローフード、フランスの「味覚の講座」、グリーンツーリズムをヒントとして紹介しています。

さらに、地方創生の失敗事例と原因も分析。たとえば、駅前の売場に動線がなく、あるもの何でも並べている事例に対しては、マーケティングをしっかりやって置く商品にこだわるべきだ、と主張。
また、せっかく良い地場特産品があっても、食べ方の提案がない事例も紹介。どこにでもあるような加工品を作るだけでは見向きされないので、食べ方や食べる場所を提案・提供しましょう、と助言します。
加工品の作り方についても、調味料の厳選や人材教育など、充分な投資が必要なことも述べています。

観光産業については、
1.歩ける場所
2.仲間とご飯を食べられる場所
3.憩いの場
4.休息の場
5.体験の場
6.綺麗なトイレ
7.長期滞在できる宿泊施設
8.整った景観
が重要だと主張。

クルマ社会の日本ではかなり蔑ろにされているポイントばかりですね。基本ですが、大事なポイントだと思います。

筆者は地方創生が成功するための条件を3つ挙げます。

1.「通年」で人を惹き付けるものがある
2.特徴的な町並みや憩いの広場、宿がある
3.四季折々で異なる食と自然風景がある

以上3点をトータルに打ち出し、集客することが大切だと熱弁を振るいます。
これを代理店などに委任してしまうと、低コスト高収益を目指しがちになり、手間暇かけないため地元の本当の良さが発揮されない、と断言。
必要なことは、現地に何度も足を運び、その地域の特徴をきちんと調査することだ、と言います。
これを怠ると一時期人を呼べても、通年・長期で人は呼べないと主張。
大変ですが、その通りですね。


『里山産業論』の紹介でした。地元振興に役立つ情報がたくさん載っているので、興味を持った方は読んでみてください。
今回の紹介は以上です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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