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【連載】第4次本州紀行~苫小牧→仙台→上野→大洗→苫小牧~ 第4話「冷淡」 ※ホテル禁止

(2)仙台駅~上野駅「冷淡」

こまち号に乗車し、上野を目指す。
車窓は期待できないが、一応窓の外を眺めて終点まで過ごすことにした。と、いうものの、ここで睡魔に襲われ、夢現を反復横とびすることになってしまったが…。
桜が綺麗に咲いている。北海道ではまだ咲いていないので、一足早く桜を見させていただこう。春は南から訪れる。北の大地の春は、いつもひと足遅い。だが、JR北海道の社歌にもある通り、
「春待つ心を 大切にして 
生きてる命の暖かさ」
の精神で行こう。といいつつ、私は「花より団子」派なのでそこまで桜に興味関心が高いわけではないが…。それでも季節の花は豊かな詩心を育てる。ご立派な高速道路と新幹線を崇拝し、道端の草花に目もくれないような生き方では、いくら文明を発達させても貧しくなるばかりだろう。本来なら今こそ詩心を育てる必要があると思うのだが、どうやら日本人はスピードのほうが大事らしい。

まあ今回、私も不本意とはいえ、この「詩心破壊装置」に乗せて頂いているので、偉そうなことはいえないが、次回はスケジュールミスに注意し、この不自然な乗り物からは退却しよう。どうも私の性に合わない。
福島、郡山、宇都宮。沿線の大きな都市に一瞥もくれず、新幹線は走り抜けていく。ただでさえつまらない新幹線の車窓を、敷き詰められたパネルがさらに醜悪なものにする。人は利権から逃れられないのだろう。この様子では人類の終末もそう遠くはない。

辛気くさい話はこのへんにして、大宮到着。自治体人口としては札幌市より少ないが、人口密度が高いため、札幌よりも都会に感じる。北陸・上越新幹線停車駅でもあるため、降車客は多い。逆に乗車客は殆ど確認できなかった。
大宮から先は高層ビルのオンパレードだ。札幌郊外出身の私は、ここでカルチャーショックを受ける。
特に、人口密度の高さを象徴するマンションと鉄路の近さには驚きだ。
露骨に洗濯物が見える。もう少し何とかならないのか。札幌ですら、ここまで露骨には見えなかったはず。おそらく、土地の狭さと人口密度が関係しているのだろう。
東京一極集中の闇を垣間見た気がする。人が多すぎだろう。いくらなんでも。就職を機に関東に移住する人は多いようだが、とてもじゃないがここに住む自信はない。仙台で人混みアレルギーが発症する私に大宮は無理だ。況んや東京をや。
大宮から先はスピードが出せない区間なので、在来線のような速度で進んでいく。
しばらくして上野駅到着。降車客は思ったより少ない。殆ど東京に向かうようだ。
地下ホームなので、階段を登って在来線ホームへ向かう。
果たして無事にたどり着けるのか…。

かつて賑わった北の玄関口も今は昔。その力を失ったようだ。改札前は活気があるようだが、ホームは暗い。「生きている」感じがしない。
まあいい。改札を通り、水戸行きのきっぷを買おう。
ところが、きっぷを改札機に入れて取り忘れてしまったようで、乗車券がないときっぷが買えないとのこと。
改札口に向かって事情を説明し、出札券?をもらってから再び窓口へ。
しかし今度は、
「改札を出るって言ってしまいましたか?それだときっぷを作り変えられません」
とのこと。
…。たらい回しが面倒になってきた。
改札で事情を説明すると、とりあえず一回改札を出てきっぷを買い直してください、とのこと。
そのほうが良さそうだ。

なぜこんなことになるのか説明すると、常磐線の分岐は日暮里駅なので、上野まで来てしまうと重複してしまうからだ。
新幹線慣れしていない私ならではのトラブルであった。きっぷを入れたら回収されると勘違いしていたのだ。
水戸駅までのきっぷを買おうとしたが、近距離きっぷ表にはなく、長距離きっぷが買える端末は混雑している。仕方がないので土浦駅までのきっぷを買うことにした。とにかく早くここを出たい。人も多いし。

今回で4回目となるJR東日本の利用だが、冷たい駅員が多い気がする。北海道にも無愛想な人はいるし、一概に比較できないが、冷たい。
きっぷを取り忘れたのはたしかに私だが、裏を返せばそれに気づく駅員もいなかったということ。つまり、目が行き届いていないのだ。
第1回の本州紀行において秋田駅に到着したとき、私の前にいたおばあさんが改札機へきっぷを入れるのに手間取っていたため、手助けし、おばあさんは改札を抜けたのだが、きっぷを取り忘れてしまい、後ろの私が改札を通れなくなったことがあった。その時はすぐ駅員が来てくれて、
「前にいた方がきっぷを忘れてしまったようです」
と話すとすぐに改札を通れるようにしてくれた。
つまり、同じ会社の駅でも、きちんと目が行き届いているか、そうでないかという違いがあったのだ。
上野は治安が良くないとも聞く。実際どうか知らないが、これだけ多くの人が利用していれば頭のおかしい輩もたくさん来るだろうし、その応対に疲れて心が荒んでしまっているのだろう。優しさ、朗らかさがない。ただ威圧感を感じるばかりだった。とても私が住める土地じゃないな、と感じた。

テレビや雑誌では「住みたい街ランキング」なるものを発表しているようだが、どうも関東の街が多い気がする。別にそれは構わないが、住みたい街とは何だろうか。交通の利便性ばかりが取り沙汰されている気がしてならない。
私としては、いくら交通や買い物の便が良かろうが、人が冷たい土地には住みたいと思わない。「北の玄関口」と呼ばれたその駅に、「北から来た私」は歓迎されていないように感じられた。
もう二度と、この駅に降り立つことはないだろう。
時間があればブックオフに行こうかと思っていたが、早く立ち去ろう。私は「お呼びでない」のだ。

設備は立派でも、氷のように冷たい駅を去るべく常磐線のホームを探すが、全然わからない。駅員に訪ねようか?
しかしまた無愛想な対応をされるのも癪なので、案内表示に従って何とか自力で辿り着く。どこに何があるか全くわからない。

土浦行列車がやってきた。乗客は多いわ、周りはビルばかりだわ、とにかくつまらない。一応、都心から離れると河川は見えるが、人が多すぎて風情を感じようにも感じられない。私は自宅や無人駅など、静かな空間における単なる孤独には耐えられるが、無機質な都会の中に放り込まれた上での孤独は、なかなか辛いものがある。
上野には博物館や美術館があるが、もはや観光はもちろん、仕事でも来たくない。そう感じさせる雰囲気が蔓延していた。駅名も旅情を掻き立てるようなものがない。早く港に行きたい…。心が消耗していく…。

私の今回の旅は、失敗だったのだろうか?
いや、結論を出すのはまだ早い。
「最後までやってみなければわからない」のだ。
諦めず、まずは土浦を目指そう。
土浦には土浦の風が吹く。
素敵な出会いがあるかもしれない。
さあ、行こう。希望抱いて。
(続く)

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