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【小説感想】『ヴァイオレットエヴァ―ガーデン』

ネタバレします。

所要時間 8分

主に小説verについて書きます。アニメと映画も視聴済みですが、内容覚えてません...

世界観重視  9
内面描写重視 9
メッセージ性 8
考察要素   5  合計 31


1 愛の物語


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©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会


何を今更って感じですね。

話逸れますが、毎年寒い季節になると、何故かこの作品を読みたくなるんです。なんでかな?心が温まるからかな...

読書が面白い理由の一つは、読み直す時に違う視点で考える余裕ができて、新しい発見があることだと思います。

で、読み直してる時に気が付いたのが、この作品はある一つの感情を多面的に描いている、ということ。つまり愛という感情を。

以下、ヴァイオレットエヴァ―ガーデンの各章(抜粋)と、それに対応する愛

小説家と自動手記人形・・・家族愛(オスカーの話ですね)

少女と自動手記人形・・・親子愛(娘に誕生日毎に手紙が届く場面で毎回泣く... 映画で最初にこの話を持ってきたのは本当に名采配。そしてしっかり泣きました)

青年と自動手記人形・・・恋愛/家族愛(戦死したエイダンの話)

囚人と自動手記人形・・・自己愛

少佐と自動殺人人形・・・無償の愛→恋愛(ギルベルトとヴァイオレットの出会い)

ギルベルト・ブーゲンビリアとクラウディア・ホッジンズ・・・友愛

郵便屋と自動手記人形・・・最愛(外伝の最終章)

まぁ、当たり前ですよね。だってこれはヴァイオレット(長いので以下ヴィー)がいろんな愛を学ぶ物語なので。


2継承

この作品のメイン要素はやはり手紙ですね。

先ほど愛の物語と言いましたが、その一具体例は、手紙によって誰かに愛を伝えること。私はこれを(遺志の)継承と呼んでいます。

遠く離れた人の思いを、その人の大切な人に伝える。嗚呼、素晴らしき哉。

この継承という現象はいろんな作品で起こりますね。その中で、是非見てもらいたい私的ベスト3は ベルセルクと進撃の巨人、Fate/Grand Order です! そのうち書きます。


3二人の葛藤

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©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会


まずはギルベルトから。戦場で道具として使われていたヴィーを保護し、育てる内に彼女を好きになる。

と同時に成長する彼女を見て、女性らしいことを教えられなかった、また、もっと良い暮らしを与えられなかった自分に怒ります。

私が最もキツイなぁと思ったのは、いざギルベルトが愛を告白しても、ヴィーは愛が何か分からない…

だって、ギルベルトが一度もそれを教えたことがないから。(ギルベルトがあまり恋愛をした事がないのも理由かも)

つまり自分の教えられなかった部分がそのまま自分にクリティカルヒットする。 え?何これは?どんな罰ゲームですか?キツすぎるやろ...

その後ヴィーはギルベルトを助けようとして腕を失うのですが、ギルベルトにはこれが結構効いたらしく、自分がそばにいると彼女は道具であろうとする。そしてそれは彼女を傷つけることに繋がる。と考えるようになり、戦死を偽って、関わりを避けます。

続いてヴィー。

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©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会


ずっと兵士として幼年期を過ごし、その後ドールとして働く訳ですが、いろんな手紙から、いろんな人の思いを知って彼女は二重の苦しみを味わいます。

一つ目は、もう少佐のそばに居られないという苦しみ。

彼女は、自身は道具として使役されるべきだと思っていて、ギルベルトは道具然とした彼女を必要としている、と思い込んでいる。

しかし、手紙を通して多くの感情を学ぶことで、自分も感情を持つようになり、もう道具ではいられない→もうそばにおいてもらえない と考えて苦悩します。

二つ目は、自分の罪を知るという苦しみ。

つまり、誰かに伝えたい思いがあった多くの人を、自分は無慈悲に殺してきた罪。

そうした罪を背負っていることを、ヴィーは代筆業を通して知るわけです。

初期の無機質なヴィーは、戦場で多くの人を殺した事が、どういう事かまだ分からなかった。

ここはクラウディアの言葉が好きなので引用します。

「君は自分がしてきたことで、どんどん体に火がついて、燃え上がっていることをまだ知らない」


で、いろいろあって、外伝の最後で、二人は結ばれます。

私はどっちかというとバッドエンドが好きなのですが、この二人には心から末永くお幸せにと言いたい。

あれだけつらい思いをしたのだから、幸せになってしかるべき。と私の心の中の菩薩が言ってます。


4その他

・兄妹説?

外伝で、ベネディクトブルーの過去が明かされ、ヴィーとの共通点が多く見つかりました。

例えば、幼年期の記憶が曖昧な点。髪がブロンドな点。戦闘技術が高い点。そして二人とも他の大陸から来た点。

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©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会


私が思うに、他大陸に、幼い子供を洗脳して、殺戮兵器に仕立て上げる組織があって、ベネディクトとヴィーは昔そこにいた。

でもベネディクトは何かのきっかけで我にかえり、妹を連れて逃げようとしたが、共に行くことは出来なかった。

私はなんとなく、あの二人が兄妹だったらいいなと思います。でも作中ヴィーが妹だと断定できる根拠がないので、もしくは親族かもしれませんね。

この二人の関係性は外伝以外では描かれていないので、読者の想像に任せる感じなのでしょう。

・はじめと終わり

読んでて、気づいたのがこの作品、はじめと終わりが美しい!ということ。

各章の最初に、その章の主人公の苦悩だったり思いが書いてあるので、グッと惹きつけられますね。でもはじめなのでよく分からない。

で最後にもう一度書くことで伏線が回収されて、完全に理解できる。二度美味しいですねぇ。

ちなみに私の好きなエピソードは「少女と自動手記人形」「学者と自動手記人形」です。

後者は天文台で働くリオンの話ですね。

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©暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会


『HNKにようこそ!』でも書いたのですが、幼い子供は、自力で生活できない。だから親に関心してもらうことで、大切に育ててもらおうとする。

https://note.com/kousatu2000/n/nd95010b0ca8e

しかし、リオンは幼い頃に母親に捨てられた。相当なショックだったと思います。で、それ以降女性嫌いになった。

あと、終わり方が好きですね。偶然出会って、二人で夜空の星を見て過ごす。ロマンチックや…

・メッセージ性

メッセージ性というよりは、小説のあとがきを見て思ったことです。

要約すると、「残酷な世界で時たま起こる素晴らしい瞬間を美しいと思う。」「つらい思いをした分だけ優しくなれる。」です。

世界一有名な復讐鬼が出てくる小説でも言ってますね。

???:「きわめて大きな不幸を経験した者のみが、きわめて大きな幸福を感じることができる!クハハハハハ!」

私もこんな人間になりたい!(切望)

この、つらい世界でたまに起こる美しい瞬間を堪能するなら、小説版が一番おススメです!

・曲

私の好きなBGMをただ勧めるだけのコーナーです。

 ・『Across the Violet Sky』・・・いろんなエピソードの感動シーンを思い出して感極まります。最初に思い出すのは、オスカーの為にヴィーが湖畔を駆けるシーンですね。

 ・『Never Coming Back 』・・・寝る前に聞くとぐっすり眠れます。

 ・『Violet Snow』・・・Full版もありますが、私はCMで流れてる方が好きです。リンクです。

https://www.youtube.com/watch?v=0CJeDetA45Q

 いや~何回見ても鳥肌立ちますね。ダークファンタジーしか見なかった高2の私は、これで、初めて他ジャンルの作品を見たいと思いました。ほんと作画が綺麗で好き。勿論歌も好きです。


まとめ

まとめと言っても大したこと書きません。システムとか要素を分析して終わりです。

・こじれた関係性

(遺志の)継承・・・思いの引継ぎ

身から出た錆・・・自分の不届きによって、辛い思いをする。


最後までお読みいただきありがとうございました!

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