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【朝霧高原で出版社やってます】流行りのローカルではないローカルで本を売る

先週末、上京して地下鉄の駅で無料配布している『メトロミニッツ』を手にしたら、リニューアルして『メトロミニッツローカリズム』なんていう名前になっていた。リニューアルは2年前らしいが、都会では「ローカル」が日々こんなふうに物語化されている。びっくりしたのは編集長による巻頭コラム。10人中10人を振り向かせる時代は終わった、どうしたら1人に「すごく」気に入ってもらえるか、と。でも、大量部数を刷って大人数が乗り降りする地下鉄駅で配布する形は変ってない。そして、その物語は全て「商品」につながる。
「ローカル」はいっときの流行りだ。その「ローカル」の側でも、片足が東京の人たちが「リトル東京」を各地につくり、東京のメディアに登場させる。結局、中心はまだまだ東京だってわかるし、「多様性」があるのは確かに都会だから、東京への人口流出も止まらない(「人口の東京一極集中が再加速」1/30付日経)。

そんなことを思いながらその日に向かった先は、小さな小さな出版物の小さな小さな朗読即売会。その著者から、お金はもらわないと活動できないけれど、でもこの小さな出版物は「商品」にしたくない、という強い想いが伝わってきた。この春、その著者の本を出す。どんな売り方がふさわしいのか。ISBNをつけて全国の書店で扱ってもらって、という売り方では、たぶんない。

今や全国各地で個人が始めた小さな書店、出版社がどんどん増えている。新刊書店は、BOOKSHOPLOVERS(&版元ドットコム集計)によれば、2021年が合計75店、2022年が9月までで36店だそう。版元ドットコムからも新規入会版元の紹介が毎週のようにメールが届く。文学フリマのような作り手が自ら売る即売会も人気だ。その小さな朗読即売会をやった場所も個人経営のお店。自分も朗読に参加したいからその日はお店の業務はできませんという素敵な店主だった。そう思うと、それぞれがそれぞれに合った売り方(伝え方)をしていける時代であるのもまた面白い。


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